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Report アジアフォーカス・福岡国際映画祭2018 ~作り手を支えて映画を生み出す:チャン・リュル監督が福岡で撮った『福岡』メイキング上映

Text by 井上康子
写真提供:映画祭事務局
2018/10/7掲載



 「アジアフォーカス・福岡国際映画祭2018(以下、アジアフォーカス)」が、9月14日から10日間、福岡市内会場で開催され、23ヶ国・地域の40を超える作品が上映された。韓国からはチャン・リュル監督が来福し、福岡で支援を受けて、福岡で撮った、その名も『福岡』のメイキングが上映された。映画祭でなくては見ることができない斬新な試みのある作品を中心に、娯楽性が高い作品も選ばれ、近年、国際的に注目を集めるフィリピン映画の特集上映も行われた。また、行定勲監督が熊本地震復興支援のために作った『いっちょんすかん』が特別上映された。


フィリピン映画特集:アート系作品から社会派作品までを見せる


 社会の暗部を暴力的に熱く描き、新たな黄金期を迎えているフィリピン映画の新風といえるのがオープニングを飾った『なあばす・とらんすれいしょん』。内向的な少女の心の動きを極めてアート的に描いた作品。シェリーン・セノ監督は幼児期を日本で過ごしたそうで、作品には日本の影響をいろいろ発見できる。『バガヘ』は、国外の出稼ぎ先で暴行を受けた女性が、帰国後に社会組織の中で利用される姿をリアルなドキュメンタリーのように見せた。『嘆きの河の女たち』は、敵対する一族との抗争で息子を失った女性が抗争を終結させようと立ち上がる。実際に抗争で家族を亡くし、演技未経験で主人公を演じたライラ・ウラオの強い意志を感じさせる瞳が印象に残った。福岡市フィルムアーカイヴに唯一保管されていたフィルムをデジタル修復して上映された『水の中のほくろ』は神秘の力が宿る島を舞台に男女の愛憎を重厚に描いた見応えがある作品だった。


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『大楽師』

好きなことに夢中になれる若者:人気投票1位『大楽師』、2位『光(ひかり)』


 「アジアの新作・話題作」を対象にした、観客による人気投票で1位の「福岡観客賞」に選ばれたのはチャウ・シンチー監督『少林サッカー』などの脚本を手掛けてきた香港のフォン・チーチアン監督『大楽師』。2013年に「福岡観客賞」に選ばれた『狂舞派』主演女優チェリー・ガンが、誘拐され縛り付けられていても、頭に曲が浮かぶと夢中になる主人公をキュートに演じている。クラシックが流れると襲い掛かってきたヤクザが優雅に踊り始めるのは楽しめた。マレーシア『光(ひかり)』は、クイック・シオチュアン監督が自閉症の兄をモデルに、グラスの奏でる理想の音色を求める自閉症の青年を見せた。娯楽性の高い作品としては、これらの他にベトナム『仕立て屋 サイゴンを生きる』があった。ベトナムでは主人公の老婆が若返るという韓国映画『怪しい彼女』をリメークした『ベトナムの怪しい彼女』(大阪アジアン映画祭2016で上映)が作られているが、本作は1960年代に生きるアオザイ店の跡取り娘が現代にタイムスリップするという趣向で、これらの作品同様に過去への回帰を示していた。回帰はベトナムの人々の心にマッチしたものであったのだろう。グエン・ケイ監督によると公開後はアオザイを着用する若者が増えたそうだ。


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『バスは夜を走る』

不安定な社会を生きる:『バスは夜を走る』『ぶれない男』


 インドネシア『バスは夜を走る』は、地域の紛争により、長距離夜行バスが、国軍、独立軍、さらには紛争を長引かせることを目的にした集団に襲われる。状況は混沌とし、紛争を解決する糸口も、安全に到着する方法も何もない。極限状況の中でバスに乗り合わせた人々が人間としての尊厳を示す。エミル・ヘラディ監督はいずれの人物も魅力的に描いており、深い共感を持って見た。『ぶれない男』は、警察や行政とも結びついている地域の権力者に屈服すまいと、もがく男を主人公にし、2017年カンヌ国際映画祭ある視点部門最優秀作品賞を獲得している。監督はイラン当局から反体制的とみなされ厳しい状況で映画を作り続けているモハマド・ラスロフ。台湾『小美(シャオメイ)』、麻薬中毒で行方不明になった女性について、周辺の人物が各々の視点で証言していくが、彼女の姿が浮かび上がることはない。インド『腕輪を売る男』、保守的な村で生活する人々の秘めた欲望の行方を独自の視点で描く。中国『冥王星の時』、暗闇の中で救いを求めるように秘境を訪れた主人公が、そこで過ごした時間の意味を観客に問いかけていた。


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『別れの花』

生と死について、観客の多様な解釈を求めるタイ映画


 『別れの花』は、アジアフォーカス2015で『蒼ざめた時刻(とき)』が上映されたアヌチャー・ブンヤワッタナ監督の長編第2作で、2017年釜山国際映画祭キム・ジソク賞を受賞している。男性同士の元恋人が、一人は病死し、一人は出家する。森に入った僧が修行を積み、死と再生に立ち会う姿を静謐で美しい映像で描いていた。水のシーンが多いのは「観客が多様な解釈ができるから」。アジアフォーカス2017で『マリー・イズ・ハッピー』と『噂の男』が上映されたナワポン・タムロンラタナリット監督の新作『ダイ・トゥモロー』は、思いがけない死や生についての6つの物語を、実際の事件、フィクション、インタビューを組み合わせて見せていく。『噂の男』のように、様々な視点での語りに監督は説明を加えない。死や生について想像を巡らすことができるように観客を誘ってくれる。


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『福岡』トークの模様

チャン・リュル監督が福岡でインスピレーションを受け、福岡で支援を受けた『福岡』メイキングが上映


 上映後は、アジアフォーカスのスタッフで『福岡』のプロデューサーを務めた西谷郁氏が司会を担当し、福岡フィルムコミッション(以下FC)のスタッフも参加する中で、監督を中心にトークが進められた。2018年3月末から4月初めに、韓国から13名、日本から6名のスタッフが参加し、福岡市の中でも人通りが多いエリアで撮影したこと、その町で撮影することは決まっていても実際どこを撮影するかはその場で監督が決定し、スタッフが奔走して地域の人々の協力を得たことが紹介された。「監督は現場で瞑想のような状態に入るときがあり、スタッフ一同は待って指示を仰ぐ」との逸話に監督は「考えなければならない事が多いので。でも、考えているふりをしていることもあります(笑)」と軽妙に返していた。

 開期中に開かれたシンポジウム「これからの小規模国際映画祭」ではアジアフォーカス梁木靖弘ディレクターが「ゲストは比較的ゆっくり時間を使えて福岡でインスピレーションを得、映画祭がサポートを行うというモデルケースになったのが『福岡』」と述べていた。ゲストとスタッフの交流が密なのも小規模映画祭ならではのこと。監督と長年交流してきたアジアフォーカスとFCのスタッフは、『福岡』撮影時、エキストラ出演、炊き出しのほか、自宅をロケ場所に提供したこともあったそうだ。映画祭の温かみもしっかり見せてもらった。


アジアフォーカス・福岡国際映画祭2018
 期間:2018年9月14日(金)~9月23日(日)
 会場:キャナルシティ博多(ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13)
 公式サイト http://www.focus-on-asia.com/

Writer's Note
 井上康子。『ダイ・トゥモロー』の最初の物語では、「卒業式前日の女子大生がビールを買いに出て事故死」との告知後、女子大生たちがにぎやかに卒業後の夢を語りあう映像に移行。「夢いっぱいで良いなあ」と感じたはずのものが一言の告知で「果たせなかった夢がこんなにあって何と切ない」という認識に一変。ナワポン・タムロンラタナリット監督に魔法をかけられたような気分になった。


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