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Report 新千歳空港国際アニメーション映画祭2016 ~空港が世界中のアニメで埋め尽くされた4日間

Text by hebaragi
2016/12/13掲載



 11月3日から6日まで、北海道の空の玄関・新千歳空港内の映画館「ソラシネマちとせ」をメイン会場に「新千歳空港国際アニメーション映画祭2016」が開催された。今回は、コンペティション部門に世界66の国と地域から1,232作品の応募があり、日本の作品も228作品を数えた。期間中に上映された作品は、招待作品部門、ショーケース部門などを含め約230本にのぼる。空港での映画祭という他に類を見ない試みは新千歳空港から未来に響く表現を発掘・発信すること、そしてアニメーションという文化を通じて新たな国際交流の場を創出することを目的としている。

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メイン会場のソラシネマちとせ

 本映画祭のメインとなるコンペには、インターナショナルコンペティション、日本コンペティション、ミュージックアニメーションコンペティションの3部門がある。今回のインターナショナルコンペティションのグランプリには、スカンジナビアの海岸を舞台とする伝説をもとにしたロシア作品『アマング・ザ・ブラック・ウェーブス』(アンナ・ブダノヴァ監督)、日本グランプリは北海道出身の榊原澄人監督の『SOLITARIUM』、ベストミュージックアニメーションは『Olga Bell “ATA”』(橋本麦監督)が受賞した。

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『この世界の片隅に』片渕須直監督の舞台挨拶

 オープニング作品『この世界の片隅に』は、『マイマイ新子と千年の魔法』などで知られる片渕須直監督を迎えて上映された。本作は、戦時中の広島と呉を舞台にしたひとりの女性の生き方を描いた作品だ。直接的な戦場のシーンこそないものの、ささやかな市井の市民の生活を破壊する戦争の本質が淡々と描かれ、しっかりとしたメッセージが伝わってきた。主演の「すずさん」をはじめ、登場人物たちの心理描写が丁寧で、かつ、すずさんをとりまく夫や親戚たちのキャラクターも魅力的。一方、真摯なメッセージの中にもさりげないユーモアを含めた脚本も秀逸だった。さらに、きっちりと時代考証がなされた街や自然の風景も素晴らしく、たとえば、原爆投下から3日後に広島市内の路面電車が運行を再開したこともきちんと描かれていた。平和であること、普通に生活できることの幸福に思いをいたす作品といえよう。そして、エンドロールの最後に制作支援のためのクラウドファンディングに協力した3,000人を超える人々の名前が紹介されていたことも印象に残った。戦後70年を過ぎたが、戦争と平和を考えるうえで、たくさんの人に見てほしい作品だ。

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『わたしのシカな友達』

 韓国関連では、インターナショナルコンペティション出品作を対象とした新人賞に、飼い主に捨てられた動物たちのグループセラピーにやってきた野生の鹿の物語をユーモラスに描いたコ・スンア監督作品『わたしのシカな友達』が選ばれた。本作は切実さと楽しさを巧みに描いており、授賞式で監督は「ありがとうございます」と日本語、英語、韓国語で挨拶し、受賞の喜びを会場の観客に伝えた。

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『エンプティ/The Empty』

 また、インターナショナルコンペティション審査員特別賞(チェン・シー)には、韓国のチョン・ダヒ監督作品『エンプティ/The Empty』が選ばれた。本作はある女性の部屋が舞台のワン・シチュエーション・ストーリー。女性にまつわる記憶をもとに、男がちょっとしたゲームをしながら、その部屋で時を過ごす。愛する人が消えた部屋とその思い出を2Dアニメーションで繊細かつ洗練された映像で描いた本作は、8月に開催された第16回広島国際アニメーションフェスティバルのコンペティションでもグランプリに輝いている。本映画祭の授賞式で「この映画祭に招待していただいたことに感謝します。プログラムをとても楽しみました」と喜びを語った監督は、目下、世界的に注目を集めるクリエイター。2014年の『Man On The Chair(椅子の上の男)』が、カンヌ国際映画祭「監督週間」に招待されたほか、アヌシー、広島、ザグレブなどの国際アニメーション映画祭で賞を総なめにしている。

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ゲストのサイン

 新千歳空港国際アニメーション映画祭には、その他にも地元の小学生が審査員となるキッズ賞をはじめとする多数のアワードが設定されており、国内外問わず新たな才能にスポットを当てる試みは今回も観客を魅了した。また、ユニークな「爆音上映」なども多くの観客を楽しませたほか、子ども向けのワークショップも開催された。今後も幅広い年齢層が楽しめる、空港というロケーションを生かした特色ある映画祭として回を重ねていくことを期待したい。


新千歳空港国際アニメーション映画祭2016
 期間:2016年11月3日(木・祝)~11月6日(日)
 会場:新千歳空港内「ソラシネマちとせ」
 公式サイト http://airport-anifes.jp/

Writer's Note
 hebaragi。映画祭の会場に入ったときの、わくわくするような感じが好きだ。北海道内で毎年開催される映画祭は6つを数える。新千歳空港国際アニメーション映画祭はまだ3回目の開催だが、今回は約3万1千人の観客が訪れ、映画ファンのみならず北海道民に確実に定着してきた印象を強くした。


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Report 『弁護人』ソン・ガンホ来日記者会見&舞台挨拶 ~一流の俳優、高貴の人

Text by Kachi
2016/12/7掲載



 誰もがこの日を待ちわびていた。それが決して誇張ではないほどに、11月11日の日本外国人特派員協会の会見場はマスコミ関係者でひしめき合い、熱気が漂っていた。翌日の『弁護人』劇場公開を控え、主演を務めたソン・ガンホが来日記者会見を行なった。『グエムル -漢江の怪物-』以来、実に約10年ぶりだ。

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 『弁護人』は、2009年にこの世を去った、故・盧武鉉元大統領の弁護士時代にスポットを当て、1980年代の民主化勢力を弾圧した軍事独裁政権に、裁判を通して立ち向かった姿を描いている。食べることにも事欠いた貧しい青年時代から、金融弁護士として釜山法曹界で頭角を現し始めるあたりまでは、ソン・ガンホの真骨頂である「憎めない俗人」というキャラクターに魅せられるが、後半の法廷劇では、信念を持って闘い抜く弁護士として、骨太な演技力で物語を力強く牽引していく。韓国での劇場公開から2年以上経過しての日本公開であるが、ここ最近の韓国、日本、そして世界情勢の混迷は、皮肉にも本作の封切りに合わせたかのようである。さらについ先日、セウォル号事件の署名活動に参加したということで、朴槿恵政権が制作したとされる「青瓦台が検閲すべき文化人、芸術家9,473人」いわゆる「ブラックリスト」にパク・チャヌクらとともにソン・ガンホの名前も掲載されているとの報道があったばかりであった(政府はこのリストの存在自体を否定している)。

 予定時刻を少し過ぎ、ソン・ガンホと、本作のプロデューサーであるチェ・ジェウォン氏が姿を現した。

ソン・ガンホ:はじめまして、ソン・ガンホです(日本語)。10年ぶりに皆様にご挨拶できて、本当に光栄で嬉しく思っております。その間、どうして空白期間ができてしまったのか分からないのですけれども、今回、意味のある作品で皆様にご挨拶ができて格別な思いです。

チェ・ジェウォン:この『弁護人』は、数年前に韓国で公開されているわけですが、時間が経った今、こうして私が日本に来ましたのも、この作品に格別な愛情があるからです。そして、アメリカでトランプ大統領が誕生した時期にこの映画を上映していただいて、そして韓国と日本の国民の皆さんももう一度自分たちの生きている姿を振り返ってたくさんのことを考えられる、そんな意味のある映画だと思いますので、そういった考えを皆さんと共有したいと思いますし、その一助になると思います。

ソン・ガンホ:皆さんもご存じかと思いますが、韓国情勢は今混乱し、非常に残念な状況にあるのですが、この『弁護人』という作品は、今こそ、たくさんのことを提示できる時期ではないかと思います。それと併せて、最後は残念な形でお亡くなりになってしまった、盧武鉉元大統領の若い頃が描かれている作品です。若い時の、その人生に向き合う姿勢、身を粉にして献身する姿勢を改めて映画を通じて皆さんにご覧いただいて、韓国人に限らず日本の皆さん、中国の皆さんと共有できる映画でありますし、非常に意味のある作品だと思います。この映画を通して皆さんも私たちと同じ気持ちを感じ取っていただけると思います。


 ソン・ガンホが口にした「意味のある作品」という言葉。それをきっかけに二人からは、社会派の題材にたずさわった映画人ならではの言葉があった。チェ・プロデューサーが言及した、アメリカの次期大統領に選出されたドナルド・トランプ氏は、選挙戦では、女性や移民といったマイノリティへの攻撃的発言が目立った。保守的、孤立的とされるトランプ氏、そして韓国の現大統領の姿には、本作が舞台とした、政治が暴力的で愚かだった時代の指揮官たちが重なるようだ。

 韓国でも日本でもよく知られた実在の人物である盧武鉉氏を演じる上で意識したこと、弁護士役を初めて演じた苦労について聞かれると、ソン・ガンホは次のように答えた。

ソン・ガンホ:実は最初、オファーをいただいた時に「怖い」という気持ちになりました。残念な最後を迎えられてしまった、今は亡き盧武鉉元大統領のことを愛し、恋しく思う国民の皆さんが見守っているわけですし、ご家族の方もいらっしゃるので、その人生の一部をしっかり迷惑をかけずに上手く演じることができるだろうかと、俳優としての悩みがありました。でも至らなくても未熟でも、真心を込めて演技をすれば、皆さんと心を触れあわせることができると思い、勇気を出して演じました。


 ソン・ガンホが実在の歴史的人物を演じるのは、『王の運命(さだめ) ―歴史を変えた八日間―』に続いて2作目だ。しかし、故・盧武鉉元大統領については、韓国人ではない筆者にすら未だ鮮明な記憶が残っている。ソン・ガンホほどの名優の口から出た「勇気」という言葉に少し驚くとともに、本作に賭けた並々ならぬ決意に思いを馳せる。

ソン・ガンホ:今回演じたのは専門的な職業だったので、苦労はありました。法廷の用語もあり、台詞も膨大で大変でした。公判のシーンも全部で5回ありますが、それぞれが違ったリズム感を持ち、特色もありますので、それを立体的に生かすために、それぞれを差別化させて演じるということが難しく、悩みました。ですので、個人的にセットには何日か前に入って、そこで第1次公判から5次公判まで、一人で練習したのを覚えています。


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 質疑応答に入り、報道陣からは口々に演技についての賞賛を受ける。そのたび、「ありがとうございます!」と日本語で答えながら笑顔を見せる。その茶目っ気に、会場は幾度も笑いに包まれる。まずは、ここ数作のソン・ガンホの演技における「深み」について、長いキャリアの中で演技への態度や考え方へ変化があったか、という質問がされた。

ソン・ガンホ:私も自然と年を重ねているわけですが、その中で人生全体を見渡すような視点が出来てきます。人生には色々な時期、逃走している時期や、大きな声をあげて叫んでいるような時期などがあったりしますが、今は人生を見渡すような傾向にあるように思います。ですので(変化と言えば)、人生を見守って寄り添っているような自分の立ち位置ですね。

チェ・ジェウォン:少し付け加えさせていただくと、初めてソン・ガンホさんと一緒にお仕事をしたのが『殺人の追憶』だったのですが、本当に演技の上手い俳優さんだなあと思っていました。その後、いろんな映画に出演されて作品も重ねられ、月日も流れていく中で、今は映画全体を見渡せる視点をお持ちだと思います。自分一人のことを考えて演じるのではなく、共演されている俳優さんとの調和も考えて演技をされたり、映画の方向性をしっかりと提示してくださる俳優さんだと思います。本作に続いて、新作『密偵』でもご一緒しましたが、そのように感じました。作品を重ねるたびに年輪となって慕われていくような俳優さんだと思います。世界のどこに出しても恥ずかしくない俳優であると自負心を持っています。


 『弁護人』のヤン・ウソク監督は、本作が映画監督として初めてである。ソン・ガンホよりもキャリアが若い監督との作品づくりについて、質問が及ぶ。

ソン・ガンホ:驚いたことがありました。監督にお会いして、この映画の物語を、いつの時点で構想していたのか気になっていて、もし盧武鉉元大統領が亡くなった後に考えたとしたら、少しがっかりするなあと思っていました。ところが、監督はこの物語を構想したのは1990年代の序盤だとおっしゃるんですね。自分がいつか映画監督になったら、是非これを映画にしたいと思っていたと言ってくださり、大きな感動を覚えました。監督の中には、何か政治的な背景があったわけではなく、時代を描くだけでも感動が与えられると思っていらしたようです。


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 「後半の裁判シーンで、ソン・ガンホ演じる弁護人ソン・ウソクの論理的な問いかけが、理不尽に覆されるという繰り返しに、そうした理不尽を乗り越えて進んできた韓国の20年の民主化の歴史そのものが表わされていると感じた」という報道陣から、裁判シーンを支えていたソン・ガンホの迫力についての問いかけがあった。

ソン・ガンホ:第1次から第5次の裁判シーンは、本当にどう演じたらいいか何日も考えていました。そのせいで、あのシーンにおける感情やリズムが自然発生的に身についたのだと思います。今お話しくださった記者の方の発言の中に正解があったような気がするのですが、あのシーンにおける演技は、テクニカルな要素ではなかったと思います。あの時代はまさに、故・盧武鉉元大統領をはじめ、私も含めて多くの韓国人が望んでいた民主化への思いが込められていたと思います。そんな熱い思いが自然と出てきたのだと思います。また、裁判は同じような形で実際も行われていたそうで、故・盧武鉉元大統領も同じように無視されたり、ちょっと辛い目にあったりされたそうです。モハメド・アリのボクシングのシーンも台詞で言っていましたけれども、あのくだりも実際にお話しになったことを映画の中に取り入れたそうですが、ソン・ガンホという役者の気持ちもミキシングされていたように思います。


 韓国のマスコミからは、『弁護人』で描かれた韓国現代史をあまり理解していない日本人へ伝えたいこと、そしてやはり、件の「ブラックリスト」について質問がおよぶ。ソン・ガンホはやや苦笑いを浮かべながらも、おそらく彼が現時点で言える最も誠意ある答えを口にした。

ソン・ガンホ:ブラックリストについては、自分がリストに入ってしまったことによって、「国民に対して申し訳ない」と思う気持ちがやや薄れました。本作は、盧武鉉元大統領の政治哲学や政治家としての姿を語るための映画ではないと思います。軍事独裁政権による暗黒の時代を生きた、その姿を描こうとしているのだと思います。抱えきれないほどの圧力があった時代に一人の若者が真摯な気持ちで人生に向き合い、献身する姿が描かれていますので、その点が現代を生きる多くの人たちの気持ちをゆさぶったのではないかと思います。そしてまさにそういった点を描くことがこの映画の究極的な目標だったと思います。そしてそれが観客の皆さんにもしっかりと伝わったと思います。


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 司会者からは、韓国で封切られた新作映画『密偵』が750万人の観客を動員し、ソン・ガンホは韓国の俳優で初めて主演映画の累計観客数が1億人を突破したことが発表され、会場からは拍手が起こる。だが当のソン・ガンホ本人は、こう謙遜し声を出して笑う。

ソン・ガンホ:1億人という数字が出ているわけですが、俳優としてはお客さんのことを計算しながら作品を選んだり、遠慮したりということはしていないですよね。おそらく、ある記者の方が累計観客数を「(計算してみると)面白いんじゃないか?」と思って記録を探して、数字をまとめてくださったのだと思います。映画の宣伝を担当しているワーナー・ブラザースの広報チームも、うまくまとめて記事にしてくれたのではないかと思います。決して、私がこの数字をあげてくださいと言ったわけではありません(笑)。


 そして最後に、チェ氏から「プロデューサーだけが知るソン・ガンホの素晴らしさ」が語られ、会見は締めくくられた。

チェ・ジェウォン:映画は、監督、シナリオ、プロデューサー、俳優がいなければなりません。私以外の3つの要素が大事になってくるわけです。ソン・ガンホさんと長く作品を撮ってきて、今はとても親しい友人としてお会いする中で感じたのは、ソン・ガンホさんという俳優は、映画を作るという作業の中でその3つの要素の単なる一つではなくて、しっかりと映画を撮っていく上でのパートナーだなとよく感じています。『弁護人』の演出を務めたのが新人監督だったのですが、非常に感動的な作品を撮れたのも、主演俳優がどれほど見事な演技を見せてくれたかにかかってくると思います。今後『密偵』という映画をご覧になった時にもまた感じられると思いますが、日本との縁があまり良くない時代の物語ではあります。その中で淡々と、時に熱い表現で演じてくれています。日本の観客の皆さんに観ていただいても決して恥ずかしくない作品が出来あがったと思っています。その反面、ソン・ガンホさんはとても繊細な面があるんです。一般の方よりももっともっと感傷的になっているところもありますし、また見た目は骨太に見えるかもしれないのですが、誰もが鈍感に見落としてしまうようなところも敏感に反応される時があるんですね。ですので、緊張しながら世の中を見渡しているんだなと感じることが多いです。私としてはソン・ガンホさんがいない現場にいくと心も体も楽ですが、ソン・ガンホさんが現場に来るといきなり緊張してしまうことがよくあります。それからソン・ガンホさんは、日本のビールが大好きです!


 翌日の舞台挨拶は、満員のファンたちで沸きに沸いていた。登壇したソン・ガンホは、「韓国と日本は近い国ですが、文化も歴史も違います。でも、映画というのは本当に美しくて大きな役割を担っていると思います。映画を通して心が一つになって触れ合えたり、お互いを理解し合えたり、共有できたりするからです。そういう意味では、文化において映画というのは美しい、非常に大切な役割を担っていると思います。『弁護人』、あるいは他の韓国映画を通して皆さんは韓国のことを知って下さり、そして私たちは日本の映画を通して日本のことを知りたいです。そういうきっかけになってくれたら嬉しいです」と語りかけた。自身の作品だけでなく、すべての韓国映画への心配りが見えるその発言は、まさに国民的俳優というにふさわしい。

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初日舞台挨拶

 ソン・ガンホはスクリーンの中のソン・ガンホそのものであった。記者会見ではチャーミングさでその場を大いになごませ、舞台挨拶の日は、お客さんとのセルフィーにも笑顔で応じていた。一方で、役柄、作品の時代背景、そして韓国という国について語るときは、真摯で切実な眼差しに変わり、一言一言を大切に話しているという印象であった。セウォル号事故の後、ソン・ガンホは「遺族の方々の切実な願いを祈願して応援します」と、心の痛みを表明した。ブラックリストの件で述べた所感は、「自分が国民を思ってした行いで政府から睨まれたのなら、それで構わない」という意味だと、筆者は受け取った。一流の俳優である前に、人間としての高貴さを強く感じた。韓国にはソン・ガンホという俳優がいる。それが何とも羨ましい。


『弁護人』
 原題 변호인 英題 The Attorney 韓国公開 2013年
 監督 ヤン・ウソク 出演 ソン・ガンホ、オ・ダルス、キム・ヨンエ、クァク・トウォン、イム・シワン
 2016年11月12日(土)より、新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー
 公式サイト http://www.bengonin.ayapro.ne.jp/


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Report 第11回札幌国際短編映画祭(SAPPORO SHORT FEST 2016) ~ショートフィルムならではの魅力あふれる作品との一期一会

Text by hebaragi
2016/11/28掲載



 10月10日から16日まで、札幌プラザ2・5をメイン会場に「第11回札幌国際短編映画祭(SAPPORO SHORT FEST 2016)」が開催された。今回は、世界101の国と地域から3,548作品の応募があり、日本の作品も253作品を数えた。期間中に上映された作品は、オフィシャル・コンペティション対象作品をはじめ約200本を数える。朝夕めっきり寒くなり、紅葉もちらほら始まった秋の札幌を彩る風物詩となった感もある映画祭をレポートしたい。

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映画祭ポスター

 本映画祭のメインとなるコンペは、フィルムメーカー部門と作品部門があるが、今回も秀作揃いで、観客を大いに魅了した。なかでも作品部門のナショナル・プログラムとして17作品が出品された日本映画には興味深い作品が多かった。最優秀国内作品賞と最優秀作曲賞のダブル受賞となった『どす恋ミュージカル』(落合賢監督)はユニークな設定と、主演を務めた台湾の人気歌手リン・ユーチュンの歌唱力に魅了されつつ、抱腹絶倒のシーンが続く楽しい作品だ。

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『どす恋ミュージカル』

 最優秀北海道作品賞を受賞した『流星と少女』(「北海道セレクション」部門、片岡翔監督)は、流れ星をモチーフとして、思春期の少女の瑞々しさが伝わってくる作品。「ファミリー&チルドレン」部門では、最優秀チルドレンショート賞の『つかまえろ』(監督:バー、デマレット、フォナー、マーティー、ロビン、ソラー)が、銀賞の『UTOPA』(田中孝弘監督)、銅賞の『ムーム』(監督:ロバート・コンドウ、堤大介)とともに、楽しく美しい映像表現で、たくさんの子供たちの目をひいた。また、受賞作品以外でも、『お墓参り』(吉村元希監督)、『少年のバス』(山口洋介監督)、『ナラシ』(崔得龍監督)など、ショートフィルムならではの世界観を持った作品が多かったことが印象に残る。

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『最高の監督』

 韓国映画は「アジアンタイフーン11」と題した特集上映で3本の作品を見ることができた。昨年の『女優魂』に続き、女優ムン・ソリが監督し主演も務めた作品『最高の監督』は、ある映画監督の葬儀会場が舞台のワンシチュエーション・コメディドラマだ。過去の栄光はあるものの最近は10年以上も監督作品がなく、葬儀の参列者もほとんどいない監督。少ない参列者たちは、まるで単に酒を飲みに来たとしか思えない行動で遺族を困惑させる。そんな中、ムン・ソリは、仕事の依頼もめっきり減った女優の表情を見事に演じていた。また、『ウジュの鶏』(ピョン・ソンビン監督)は、学校の先生に恋をしたダウン症の少女を表情豊かに演じた作品。『ダンシング・キャット』(ミン・ヨングン監督)は、風変わりな踊る猫の人形をモチーフにした作品で、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2016のショートフィルム・コンペ部門にも出品されたが、今回もユニークな設定が観客を楽しませた。

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『ダンシング・キャット』

 本映画祭は、インディペンデント精神を重んじ、子供たちの未来を考え、新しい世界の価値観を相互理解し、世界の平和を作ることを目的としている。また、徳島国際短編映画祭とも連携しており、作品の相互上映も行われている。さらに今回は、新たな取り組みとして、「No Maps - Sapporo Creative Convention」としてコンペティション、エキシビション、カンファレンス、ワークショップなど、産業、学術、文化がクロスする国際的なコンベンションが開催された中での映画祭という位置づけになるなど、これまでとは異なる新たな展開を迎えた。短時間に次々と珠玉の作品に触れられることが短編映画祭ならではの大きな魅力のひとつだ。11回目を迎えた今回の映画祭も秋の札幌を彩る一大イベントとして市民の間にも定着した印象がある。来年以降のさらなる発展を願ってやまない。


第11回札幌国際短編映画祭
 期間:2016年10月10日(月・祝)~10月16日(日)
 会場:札幌プラザ2・5ほか
 公式サイト http://sapporoshortfest.jp/16/

Writer's Note
 hebaragi。新海誠監督の作品が好き。『君の名は。』は既に3回劇場に足を運んだ。大ヒット中の本作に魅了された観客が『秒速5センチメートル』など過去の作品でも「新海節」に注目してくれればと思う今日この頃。


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Report アジアフォーカス・福岡国際映画祭2016 ~四半世紀継続の力を見せる

Text by 井上康子
2016/10/18掲載



 「アジアフォーカス・福岡国際映画祭2016(以下、アジアフォーカス)」が、9月15日から11日間、福岡市内会場で開催された。26回目となる今年は24ヶ国・地域の85作品が上映された。<アジアの新作・話題作>として、韓国映画はオ・ダルス主演『大芝居(原題 大俳優)』、バフマン・ゴバディ監督最新作『国のない国旗』などが、<特別上映作品>ではマジド・マジディ監督の超大作『預言者ムハンマド』、行定勲監督『うつくしいひと』などが上映された。また、近年、急速に変化を遂げたベトナム映画の特集があり、作品上映の他にシンポジウムも開催された。大勢の映画スタッフや俳優が来福し、観客が詰めかけ、上映後のQ&Aは活発で、サイン会も賑わった。中でも、福岡で活躍する若い映画人の作品を上映した<福岡パノラマ>は若者の熱気でたいへんな盛り上がりだった。


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震災前の熊本ロケ作品『うつくしいひと』で登壇した行定勲監督(写真提供 映画祭事務局)

マジディ監督新作、観客賞受賞作は、信仰・民族の真の姿と誇りを伝える


 マジディ監督の8年ぶりの新作となる『預言者ムハンマド』(イラン)がアジア初上映された。イスラム教の祖ムハンマドの誕生から青年に至るまでを描いたスペクタクル映画。大迫力のアクションも見物だが、主軸は特別な能力を持つ者として命を狙われる主人公を守ろうとする家族の情愛と、自分を殺そうとした他民族をも助ける主人公の意志にあり、監督のこれまでの作品同様に清冽な余韻を残す。監督が本作の目標にしたという、テロや暴力のイメージに染まったイスラムではない、本当のイスラムの教えを見せたいという思いがひしひしと伝わる。

 「福岡観客賞」(観客投票1位の作品)受賞作『ハラル・ラブ』(独・レバノン)はベイルートに住む3組のカップルが恋愛・結婚生活の中で、イスラムの教えを守るべく奮闘する姿をコミカルに描いた作品。毎晩セックスを求める夫に辟易して第二夫人をあてがっておきながら、第二夫人に嫉妬するようになる妻とか、男女間の感情は万国共通なのだとイスラム教の国に親しみを感じた観客が多かったことが受賞につながったのだろう。

 「熊本市賞」(観客投票2位の作品)受賞作『セブンレターズ』(シンガポール・マレーシア)はシンガポールを代表する7名の監督により、シンガポール建国50周年を記念して作られた、7本の短編からなるオムニバス映画で各々の監督が故郷に抱く思いを描いており、強い郷愁に誘われた。エリック・ク―監督が『Cinema』で民族の壁を越えて映画を作ってきたことに対する映画人の誇りを見せたのを始めとして、多民族国家らしく、他民族との交流を見せる作品が多かった。


不安定な時代をしなやかに生きるマイノリティ、溢れるノスタルジー


 <アジアの新作・話題作>では、第二次世界大戦中にナチスの迫害を受ける主人公を詩と絵画を交えて高い作家性を持って描いた『風は記憶』(トルコ・仏・独・ジョージア)をはじめとして、過去・現在の不安定さを見せる作品が多かったが、そのような状況にあってもしなやかに生きるマイノリティを描いた作品に特に感銘を受けた。『国のない国旗』(イラク)は『酔っぱらった馬の時間』『サイの季節』などの著名な作品があり、アジアフォーカスにも馴染み深い、クルド人バフマン・ゴバディ監督の最新作。クルド人の置かれた深刻な現実の中で、子供たちに夢を抱かせようと活動を続ける実在のクルド人二人を描いたドキュメンタリーでありながら、ユーモアを湛えたファンタジックなドラマでもあり、作品世界に魅了された。監督がプロデューサーを務め、クルド難民キャンプの子供たちが脚本・監督・撮影をこなした『国境に生きる ~難民キャンプの小さな監督たち~』も本作に併せて特別上映された。『ラジオ・ドリーム』(米・イラン)は米国に亡命したイラン人を中心に、自由さを失わない、風変わりな人々が登場し、楽しめた。『プラハからの手紙』(インドネシア・チェコ)は1960年代にインドネシアのスカルノ政権が失脚し、新政権を否定したためにプラハから帰国できなくなり、そのまま老いた人々と彼らの信念を味わい豊かに見せた。『ぼくは詩の王様と暮らした』(フィリピン)はフィリピンの少数言語パンパンガ語を操る詩人に言葉で思いを伝えることの大切さを改めて教えられた。

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『国のない国旗』バフマン・ゴバディ監督(写真提供 映画祭事務局)

 恋愛映画2作品は、オープニングを飾った『再会の時~ビューティフル・デイズ2~』(インドネシア)が古都を、『この街に心揺れて』(台湾)は歴史ある街を舞台に、カップルの過去と現在を交錯させ、韓国で大ヒットした『建築学概論』のように強いノスタルジーを感じさせた。

 『凱里ブルース』(中国)は初老の男の魂の彷徨と回帰をエキゾチックな映像で表現した正統派の芸術映画。『くるみの木』(カザフスタン)は釜山国際映画祭2015でNew Currents賞(新人監督賞にあたる)を受賞した作品で、伝統的な結婚式・出産・育児を通じ、独自の寓話のような趣を持って、人の一生を語る。両作品は若い才能の到来を実感させた。


韓国映画好きにはたまらない作品:オ・ダルス初主演映画『大芝居』


 名脇役オ・ダルスの初主演映画。20年間、演劇俳優を続けているが、児童劇団で「フランダースの犬」の台詞のない犬役でしかない主人公が、話題の映画に出演して有名俳優になろうと大芝居に打って出る。パク・チャヌク監督作品の助監督を長く務めたソク・ミヌ監督のデビュー作で、パク監督の『オールド・ボーイ』『渇き Thirst』をはじめ、『ペパーミント・キャンディー』などの名作のシーンがオマージュとして使われ、パク監督をモデルにした監督が登場し、オ・ダルスと監督に縁があるユ・ジテやキム・ミョンミンがカメオ出演する。映画、スタッフ、俳優への敬意を映画にしたような作品で韓国映画ファンであれば誰もが楽しめる。主人公の息子を演じた子役の良さもあって、家族愛にもほろりとさせられた。


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『大芝居』

アジアフォーカスの足跡と未来


 アジアフォーカスはマジディ監督の監督第2作『父』を1996年に上映して以来、『天使のようなこどもたち(劇場公開題 運動靴と赤い金魚)』『カラー・オブ・パラダイス(劇場公開題 太陽は、ぼくの瞳)』を日本初紹介した。他にも、ゴバディ監督や、リリ・リザ監督(今回上映の監督作『再会の時~ビューティフル・デイズ2~』)の作品を紹介し、監督たちの成熟の軌跡を見せてきたことはアジアフォーカスの足跡のひとつだ。

 そして、2013年に作品が上映され、来福したタイのアピチャッポン・ウィーラセタクン監督との交流も続き、<福岡パノラマ>では天神アピチャッポンプロジェクト(TAP)ワークショップに集った若い映像作家が共同製作した『光の記憶“Memory of Lights”』が上映された。若者の成長も支えており、二度目の四半世紀もアジアフォーカスは成長を続けることだろう。


アジアフォーカス・福岡国際映画祭2016
 期間:2016年9月15日(木)~9月25日(日)
 会場:キャナルシティ博多ほか
 公式サイト http://www.focus-on-asia.com/

Writer's Note
 井上康子。アジアフォーカス・福岡国際映画祭2016では熊本出身の行定勲監督が熊本地震前に熊本各地をロケして製作した『うつくしいひと』が上映された。監督は「続編も作り、熊本の人を元気づける」と熱を込めて語った。映画の力を信じる思いの強さに圧倒された。


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Report 福岡インディペンデント映画祭(FIDFF)2016 ~韓国からの応募作『アレルギー』がグランプリ獲得

Text by 井上康子
写真提供:福岡インディペンデント映画祭事務局
2016/9/20掲載



 第8回を迎えた福岡インディペンデント映画祭2016(以下、FIDFF)が、8月25日~9月4日に福岡市内で開催された。若手映像作家たちからの100を越える応募作の中から、ヒョン・スルウ監督『アレルギー』が最優秀作品賞にあたるグランプリを獲得し、監督・俳優がゲスト来福した。韓国・台湾の映画祭との交流も継続され、両映画祭の作品の招待上映があり、韓国の監督たちによるトークも開催された。国内・海外からの応募作品・招待作品、併せて、これまでで最多の193作品が上映された。

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グランプリ『アレルギー』のゲスト
左からヒョン・スルウ監督、キム・イジョン、ソ・ヒョヌ


今年の受賞作:絶賛されたヒョン・スルウ監督作品『アレルギー』


 『アレルギー』に登場するのは二人だけ。部屋の模様替えを思い立ったミンジ(キム・イジョン)は男手が必要になり、唯一、手伝いを頼めることになったビョング(ソ・ヒョヌ)を迎え入れる。大学で同級だった二人だが、実はミンジはビョングに良い印象を持っていない。上映前に作品のスチール画像を見て、その壁ドン風なたたずまいから、これは劇的に恋愛に発展するのではと妄想していたが、全然違っていた。劇的な変化はないが、短い時間を共にし、ミンジはビョングに対する印象を「良い奴」と改めていく。日常のささやかな出来事の中で人が心を開いていく姿が何ともさわやかで温かかった。監督の「お金がないので、メイクの女性の部屋を借りて、部屋の中だけで撮影した」などの言葉から条件の厳しさの中で技術とアイデアで表現を高めたことが伺えた。俳優二人の巧みさも含めて絶賛された。

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『アレルギー』

 準グランプリ『モラトリアム・カットアップ』(柴野太朗監督)は、監督の分身と思える主人公の青年が感じる、自身の成長や時代の変化に対する戸惑いを妄想と現実を交錯させて見せる。息もつかせぬ展開に圧倒された。90分部門グランプリ『バイバイ、おっぱい』(鋤崎智哉監督)は、おっぱいができた男性の戸惑いから受容を描き、人の本質とは何かを考えさせた。40分部門グランプリ『ワークさん』(小野篤史監督)は、就活・就職は企業に受けようと自分に嘘をつくことではという監督の問題意識を真面目に楽しく発展させた作品。コメディー賞『カモン、ボルテージ!』(佐藤美百季監督)は、やる気の出ない漫画家と弟子の珍道中を見せて、場内を捧腹絶倒させた。


今年も釜山独立映画祭の受賞作品を招待上映


 釜山の映画祭作品を招待上映し、FIDFFの作品も釜山で上映するという交流はスタートから途切れることなく継続している。昨年同様に釜山独立映画祭(以下、IFFB)2015の受賞作品が招待上映され、11月開催のIFFB2016ではFIDFF2016の推薦作品が上映予定。

 IFFBの6作品はたいへん実験的な作品から娯楽性の高いドラマまで様々で、カフェトークに登壇した4人の監督たちも、会社勤めをしながら釜山で開催される参加費無料のワークショップで作ったという人から、商業映画監督志向と思われる人まで多様だった。

『シンタンジン(新灘津)』(チェ・ジョンムン監督)
 冷静な主人公の女性が、かつての知り合いの男性に偶然会い、混乱していく。混乱の理由は示さずに緊張感で最後まで引き付ける。

『ランニング・フォトズ』(キム・ナヨン監督)
 様々な名作映画の登場人物の走るシーンをつなげた作品。編集が良く、走りのリズムが心地よい。

『アイム・ゴーイング・ホーム』(キム・スジ監督)
 家出した男子高校生がドキュメンタリー映画を撮っている女性に出会ってのロードムービー。

『夕食』(パク・スミン監督)
 監督が脚本も書いているが、自分の父をモデルにしたという父親のぶっきらぼうな優しさが魅力的。監督の新作『お父さんはかわいい/아빠는 예쁘다』は今年の釜山国際映画祭で上映されるそうだ。

『ユンイル(閏日)』(イ・チェリン監督)
 男子高校生の夏の一日を描いている。『アイム・ゴーイング・ホーム』もそうだが、釜山郊外の素朴な街並みが活かされている。

『何かが消えた』(パク・チョンヒョン監督)
 監督が村上春樹の短編小説『ねむり』を読んで、眠りをイメージして作った実験的な作品。

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カフェトークに登壇した監督たち


台湾との交流も継続


 海外の映画祭との交流は拡がり、昨年から「台湾青春、未来映画祭(未来電影日:以下、FFDT)」との交流も行われている。8月のFFDT2016では、FIDFF2015受賞作品が招待上映され、FFDT推薦5作品が今回招待上映された。『Replace』(Mark Arg監督)は、事故で亡くなった妻の面影を求めて、主人公は妻の臓器が移植された人を探す。ハートフルドラマと思って見ていたが結末は驚きのスリラーだった。『Last Day』(HONG,CHING-YA監督)は、過酷な運命に翻弄される男達を、『KEEP MY LOVE』(Yang,Rong監督)は、無農薬の茶作りに取り組む若者たちを、『Night Raid』(WANG,YI-LING監督)は、兄弟が亡くなった父親を理解していくまでの過程を、『The Night Light』(Shen,Sing-Ying監督)は、下町に暮らす人たちの絆を描いていた。来福したMark Arg監督は広告作品を撮っていたとのことで、インパクトの強い映像に引き付けられた。他の監督の作品もいずれも商業上映作品レベルの映像を見せてくれた。Mark Arg監督は仕事を辞めて、お金を貯めては撮影することを繰り返して本作を完成させたそうで、韓国ゲストから釜山では助成があることを聞き、羨ましがっていた。

映画の作り手を生み、育てる


 犬童一心監督を招いての公開の受賞作品講評、実績のある監督を講師にしての映画制作ワークショップ(今年はフランスからダミアン・マニヴェル監督が来福し、入門者向けミニ・ワークショップが開催された)が、近年は恒例になっている。上映後のQ&Aでは監督や出演者と観客の交流も活発に行われた。

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受賞式の集合写真

 FIDFFでは若い作り手が自由な発想で撮った、愛すべき新鮮な作品たちが待っている。来年はどんな作品に出会えるだろう。


福岡インディペンデント映画祭2016
 期間:2016年8月25日(木)~9月4日(日)
 会場:福岡アジア美術館
 公式サイト http://fidff.com/

Writer's Note
 井上康子。リオデジャネイロ・パラリンピック2016で、競泳(知的障害)で銅メダルを獲得した津川選手の恥じらいと自信のこもったインタビューでのやりとりを見て、映画『マラソン』でチョ・スンウの演技が輝いていた自閉症の主人公を思い出した。津川選手がここに至るまでにはどんな物語があったのだろう。


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