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Interview 『結界の男』チョ・ジンギュ監督 ~商業映画に自信と誇りをもつ男

Text by 井上康子
2013/10/16掲載



 アジアフォーカス・福岡国際映画祭2013で上映された『結界の男』は、ヤクザが暴力団内部の抗争に巻き込まれ怪我をしたことから巫女としての力を授かり、運命に逆らえず巫女の役割も果たしていくという話。ヤクザの主人公がいやいや巫女をかけ持つというペーソスを含んだコメディであり、また巫女として死者の姿が見えるようになったことから生じる死者との交流はホロリとさせる人間ドラマでもあった。

 主人公を演じたパク・シニャンはもちろんだが、彼と敵対するヤクザを演じたキム・ジョンテ、そして検事役のチョ・ジヌンと、ドラマとコメディを縦横にこなせる演技の巧い役者が揃っていて、天真爛漫な演技を見せる子役も登場し、満員の観客は微笑、爆笑、そして涙だった。映画祭期間中、何度も「『結界の男』がおもしろい」という声を耳にし口コミで評判が伝わっているのを実感したが、観客による人気投票でも堂々第2位になった。

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ティーチインでの監督(写真提供:映画祭事務局)

 チョ・ジンギュ監督は2001年に韓国公開された『花嫁はギャングスター』で監督デビュー。この作品は大ヒットし、さらに映画のリメイク権をハリウッドの映画会社が購入した。長編映画のリメイク権が購入されたのは韓国で初めてのことだったので、大きな話題になった。『花嫁はギャングスター』も『結界の男』も、華々しい成功を収めるだけの演出の冴が見て取れる作品だ。

 監督は日本で映画を学んだ方でインタビューは日本語で行った。作品に関して、また日本に留学した経緯なども聞かせていただいた。


作品構想・脚本について

── 『花嫁はギャングスター』では、暴力団の女親分が臨終の床にある姉の遺言に従って公務員の妻になった。かけ離れたイメージの二つの役割をこなすというのは今回のヤクザと巫女も同様で、そこから生じるおもしろさがあった。今回の構想はどのように得たのか?

ネット記事に、実際にヤクザが「いたこ」をしていると書いてあったのがきっかけで、おもしろい話ができると思い構想を練った。極端にかけ離れた設定にし、そこから逃れられないという状況を作る。そこから生じるジレンマがおもしろさになる。

── 脚本は、パク・シニャンがヤクザを演じた『達磨よ、遊ぼう!』のパク・キュテだが、同じヤクザが主演のコメディということで依頼したのか? 脚本執筆はスムースだったのか?

彼がコメディの脚本を書ける人だからという面はあって依頼したが、「今回はコメディも重要だけど、それだけではない」と伝えていた。まず、この素材でどんな状況を作り、どんなキャラクターを設定するかを彼と6ヶ月間話しあった。それから彼が2回脚本を書き、3回目は私と彼でホテルに1ヶ月間籠って仕上げた。脚本はたいへん重要で、韓国では脚本に通常1~2年かけている。私は商業映画に強いと自負しているが、観客に受け入れられる映画を制作することに真剣勝負で臨んでいる。

── 『花嫁~』では夫が暴力団の妻に同化するコミカルなラストだったのが、本作では主人公が暴力団から離れることが示唆されたラストになっていて、違いを感じた。監督が年齢を重ねて心境の変化があったのか?

『花嫁~』では、妻が家庭で落ちついて子どもを産むだろうという観客の予想を裏切る必要があった。あのラストは特に女性に歓迎された。笑いだけではない、希望を与える話がしたいという思いは以前からある。


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『結界の男』(写真提供:映画祭事務局)


主人公はカリスマ性をもつパク・シニャン

── パク・シニャンはヤクザとしても巫女としてもカリスマ性があり適役だと思ったが、彼を起用した理由は? ステータスの高い俳優なのでキャスティングが容易ではなかったのでは?

彼はヤクザを演じた経験があるし「神秘的で近寄り難い存在」というイメージがあって、今回のカリスマ性がある特別な存在としての巫女役にぴったりだと思った。半年くらい交渉に時間を要した。

── パク・シニャン演じる巫女が女装をしているのは、巫女になっているのがバレないようにするためかと思っていた。

男性巫女は女装する習慣があり、作品では笑いを取るために女装を誇張した。男性が「自分は男巫女だ」と言うのは、トランスジェンダーがカミングアウトするのと同じニュアンスで受け止められる。

── パク・シニャンくらいの演技派だと、演技について自分の考えが色々ありそうだが、監督として演出し難いことはなかったか?

監督と俳優の意見が違うというのはよくあること。僕の意見が正しいと思ったら説得し、彼の意見も聞いて、調整しながら進めた。彼は自然に話せる台詞を重視する。「演技が大切だから脚本通りだとやり難い」という時は任せた。


存在感の光るキム・ジョンテとチョ・ジヌン

── キム・ジョンテとチョ・ジヌンが絡む、検察の取調室のシーンは思い出してもおかしさが込み上げてくる。あそこは監督が二人に任せたのでは?

二人ともすごくアドリブが上手な俳優。あそこは観客へのサービスシーンで脚本にも具体的なことは書いていなかった。二人とも、どんどんアイデアがあふれ出てきて、午後5時から始めて朝まで撮影していた。キム・ジョンテは事前に自分のアイデアを話さず、相手に準備をさせない。チョ・ジヌンはそれを受けて立って、自分のアドリブで返す。二人は釜山の慶星大学演劇映画学科の先輩後輩で元々親しく息があっていた。

── 二人とも存在感を感じる俳優だ。監督の評価は?

キム・ジョンテは状況設定があれば、台詞を口にしなくても存在感を見せる。韓国で誰もが認める才能ある俳優だ。チョ・ジヌンは現在、主役級の俳優なので、それほど出番が多くない本作の場合は「特別出演」になった。取調室のシーンは、笑いながらも悲しいという雰囲気を作りたかったのだが、彼は見事にやってくれて、あまりにも演技が巧くて感謝している。


子役の天真爛漫さは演出の力

── 子役は重要な役柄だったがのびのび演じていて良かった。演じたユン・ソンイはどのようにキャスティングしたのか? 全く緊張感なく演じているように見えたが、天真爛漫さによるのか? 演出によるものか?

子役は、800人から絞られた約20人になったところで、私が会ってあの子に決定した。映画初出演だが、演技が良かったしイメージも良かった。演技と釜山方言の指導を3ヶ月程度する中で「いける!この子に全てを懸けてみよう!」とまで思えた。子供はみんな緊張する。スタッフ全員に命じて皆がずっと子供のように振る舞った。イタズラをしたり…。子供が間違っても怒ったりしてはいけない。仕事だと感じさせないよう、遊びだと思ってもらうように心がけた。


日本に留学した理由、今村昌平監督の言葉

── 監督が日本で学んだ学校は? なぜ日本への留学を思い立ったのか?

日本大学芸術学部の研究生になり、日本映画学校(現、日本映画大学)で映画の実務的なことを、また早稲田大学で映画理論について学んだ。私は1960年生まれだが、学生時代は今と異なり、韓国ではそれほど映画が盛んでなかった。文化的に解放されていなかった時期で「韓国で見ることができない『地獄の黙示録』『乱』を日本に行ったら見よう」という思いが強かった。日本に行けばたくさんの映画を見ることができると期待した。

── 日本で学んで良かったと思うか?

良かった。私はフェデリコ・フェリーニやミケランジェロ・アントニオーニが好きで作家性の強い監督を志望していた。印象に残っているのは日本映画学校で今村昌平監督がかけてくれた言葉だ。「作家になることは簡単にはできない。まずは社会で生存しろ」と。それで、生存するとはどういうことかと考えて、商業映画を撮ろうと思うようになった。今は商業映画を作るのが楽しい。2時間、観客を夢中にし幸福にしようと使命感をもっている。幸福に劇場を出てくれたら私も幸福だ。



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日本語も堪能なチョ・ジンギュ監督(撮影:井上)

 付け加えると、キム・ジョンテとチョ・ジヌンの取調室シーンの撮影時は「二人の演技がスタッフも笑い転げるほどおもしろかったが、インパクトを持たせた終わりにしたかった」ので、監督のアイデアで「作品中、最後にチョ・ジヌンが発する一言を加えた」そうだ。確かにこの一言で場面が転換し、おもしろさがグッと増し、歯切れのよい終わりになっている。なるほど、これが「商業映画に強い」監督の演出力だと感動した。『結界の男』は今後、コリアン・シネマ・ウィーク2013(10/18~10/22@韓国文化院ハンマダンホール)とK-CINEMA WEEK 2013 in OSAKA(10/27@ナレッジシアター、11/2~11/4@シネマート心斎橋)でも上映される。鑑賞の折はチョ・ジヌンの最後の一言にご注目を。

 次回作は、自閉症の人を主人公にし、外の世界へ連れだそうとする人との摩擦を描いたコメディを構想中だそう。福岡の食べ物が大好きで、中でもお寿司は気に入りの店まであるとのこと。また新作を福岡に持って来て、観客を笑わせ泣かせてほしい。


『結界の男』
 原題 박수건달 英題 Man on the Edge 韓国公開 2013年
 監督:チョ・ジンギュ 出演:パク・シニャン、キム・ジョンテ、オム・ジウォン、チョン・ヘヨン
 アジアフォーカス・福岡国際映画祭2013公式招待作品
  公式サイト http://www.focus-on-asia.com/


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