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Report アジアフォーカス・福岡国際映画祭2013 ~多彩な作品でアジアの今を写す

Text by 井上康子
2013/10/16掲載



 「アジアフォーカス・福岡国際映画祭2013」(以下、アジアフォーカス)が、9月13日~9月23日、キャナルシティ博多を主要会場に開催された。23回目の今年は23ヶ国・地域から、これまでで最多の51作品が上映された。アート系のクールな作品、コメディ・恋愛・社会派のホットな作品、文芸の香立つピュアな作品、そして混沌としたバイオレンスを描いた作品など、多彩な作品から「アジアの今」が見て取れた。注目企画として、香港映画大特集、今年の福岡アジア文化賞の受賞者であるタイのアピチャッポン・ウィーラセタクンを招いての受賞記念上映&シンポジウム、韓国のイ・チャンドン監督全作上映など、たいへん充実していた。


多彩な作品:アジア諸国・地域の今


 伝統を受け継ぎながら新しい価値観・表現を示してインパクトが強かったのが、香港映画『狂舞派』とタイ映画『Pee Mak(原題)』だった。

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福岡観客賞を受賞した『狂舞派』のゲスト(写真提供:映画祭事務局)

 『狂舞派』は香港映画の伝統である高い運動能力を誇示するカンフーをモダンなヒップホップに置きかえた作品。「他者に勝つ」という従来の価値ではなく、「独自性」という新しい価値を示して、すがすがしさを残した。ヒロインの少女は片足を怪我して杖が必要になり、杖を小道具としたダンスを考案するのだが、そのダンスの斬新なこと。片足が義足でプロのダンサーであるトミー・ガンズ・リーが主演し、超人的な踊りを披露しているが、彼が上映後のQ&Aで「素晴らしいダンスとは?」と尋ねられ、「オリジナルなダンス」と答えた時には映画のメッセージと重なり、割れんばかりの拍手が沸き起こった。スターの出演しないインディペンデント映画だが、異例なことに大ヒットしたという。香港映画の新時代を感じさせる勢いのある作品で、アジアフォーカスでも人気投票で第1位の福岡観客賞を受賞した。

 『Pee Mak(原題)』は、タイで民間伝承され、繰り返し映画化されてきた怪談のリメイクで、タイ映画史上最大のヒット作。出征した夫を待つ妻が出産時に死亡してしまい亡霊となって夫を待つ、という譚は元怪談通り。従来の映画では主題が妻の怨念であったのを、本作では妻を愛する夫の愛の深さにし、さらにホラーだがコメディという大胆な変更で明るい作品になっていて、若い観客が大勢来場した。既存の作品では、男性中心主義の代表である僧が妻の亡霊を退治してきたのが、本作では、亡霊に怯えた僧の方が逃走してしまうというのも痛快で、タイ社会の変化が伺えた。

 新作が最多3本上映されたインド映画はいずれも社会派ドラマで、中でも2部作計5時間半で対立するファミリーの3世代に渡る復讐劇を描いた『血の抗争』は見応えがあった。インド特有の歌と踊りが満載のマサラムービーからインド映画は変貌しつつあるのだろう。

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『聖なる踊子』(写真提供:映画祭事務局)
監督は釜山国際映画祭のアジアンフィルムアカデミーと東西大学で映画制作を学んだ

 作品の中には韓国とのつながりや違いを考えさせるものもあった。釜山にある東西大学林權澤(イム・グォンテク)映画芸術学部で学んだ、インドネシアのイファ・イスファンシャ監督による『聖なる踊子』で、踊り子として生きることを選択したヒロインの辛苦は、イム監督作品『風の丘を越えて~西便制』のヒロインを彷彿させた。台湾映画『ウィル・ユー・スティル・ラブ・ミー・トゥモロー?』は夫がゲイだったという内容なのだが、ゲイを扱った韓国映画のような重さはなく、ほのぼのとした味わいで意表を突かれた。不器用にしか人を愛せない人々が登場し、結婚に踏み切れない女性が非現実的な韓ドラにハマっているという設定が笑いどころで、韓ドラが台湾でも浸透していることが伺える。


質の高い作品:『悲しみを聴く石』を筆頭に


 アジアフォーカスはイランのアカデミー賞受賞監督、アスガー・ファルハディ作品をいち早く紹介するなど、質の高い作品選びに定評がある。

 梁木靖弘ディレクター今年の一押し作品『悲しみを聴く石』(フランス/アフガニスタン)は、アフガニスタンからフランスに亡命後、本作の原作小説を著し、フランスで最も権威あるゴンクール賞を受賞した作家アティグ・ラヒミ自身が監督した作品で、2009年にアジアフォーカスで上映されたファルハディ作品『アバウト・エリ(原題)』(公開時タイトル『彼女が消えた浜辺』)に主演したゴルシフテー・ファラハニが美貌と成熟した演技を見せている。戦闘で植物状態になった夫を看病しながらの妻の独白は女性の受苦の歴史であり、再生への熱望である。作家から監督に転身したイ・チャンドン監督作のように文学作品の深みがある映画に大勢の観客が期待以上の感動を得た。

 イランから亡命中のバフマン・ゴバディ監督『サイの季節』(イラク/トルコ)では、反革命的な詩を書いたとして30年間投獄された詩人と妻を中心に据え、監督第一作『酔っぱらった馬の時間』のようにクルド人の苦悩が描かれている。時にサイが突然現れるといったシュールな芸術表現の持つ力に圧倒された。

 アジアフォーカス常連のレイス・チェリッキ監督『沈黙の夜』(トルコ)は一族のために殺人を犯し、長い服役を終えた初老の男が主人公。今度は一族和解のための結婚をするのだが、その新婚初夜の出来事を喜劇から一転して悲劇で収束させる手法が見事だった。


韓国映画:話題作と名監督特集


 『未熟な犯罪者』は、アジアフォーカス開幕直前に第86回アカデミー賞外国語映画部門の韓国代表に選ばれた。言わば韓国映画界の自信作だ。友だちに誘われて空き巣に入り、少年院に送られた中学生の元に、彼を捨てた母親が迎えに来て、一緒に暮らすようになる。母親には家も定職もなく、少年は復学を拒否され、悲惨な状況に陥るが、互いが家族を得た喜びに支えられ、明るさを失わない姿がさわやかな印象を残した。カン・イグァン監督は実際に3~4ヶ月にわたって少年院などを取材し、脚本も監督自身が執筆しているが、劣悪な環境のために罪を犯し社会に拒否される少年と、家族に受け入れられず過酷な状況に追い込まれる若いシングルマザーを描き、社会の問題を鋭く問うている。

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熊本市賞を受賞したチョ・ジンギュ監督(写真提供:映画祭事務局)

 『結界の男』は、ヤクザが突然巫女の能力を得て、ヤクザと巫女をかけ持ちせざるを得なくなるというコメディで、最後はしんみりとさせてくれる。観客は笑って泣いての大満足で、人気投票第2位に授与される熊本市賞を受賞した。主人公を演じたパク・シニャンのファンから、撮影中のエピソードを問われたチョ・ジンギュ監督は「化粧(男性の巫女は化粧をして女装する習慣がある)に苦労した。説得しウソもついて(笑)きれいにした。彼の演技は素晴らしくて出演に応じてくれて有難かった。何でも一生懸命やる俳優で、何ヶ月も前から準備をしていた」と応じ、ファンも大喜び。日本に留学経験がある監督はすべて流ちょうな日本語で答え、映画だけでなく日本語についても絶賛された。

 名監督特集「イ・チャンドン全作上映」は、梁木氏の「初期イ・チャンドン作を若い人たちに見てほしい」という思いから企画された特集だそうだ。デビュー作『グリーンフィッシュ』では、土地開発のために生活の基盤を失った主人公が居場所を求めたことから暴力団に使い捨てにされる。第2作『ペパーミント・キャンディー』では、兵役中に軍事独裁政権側の人間になることを強いられた主人公が時代に過剰適応し遂には身を滅ぼす。いずれの作品も、時代のうねりの中に置かれた若者が主人公で、厳しい雇用環境へ投げ出された現在の日本の若者の姿に重なる部分がある。鑑賞した若者はどんな感想を抱いただろう。


アピチャッポン監督:受賞記念上映&シンポジウム


 アピチャッポン監督は今年の福岡アジア文化賞受賞者で注目度が高く、さらに監督による『メコンホテル』が上映されるとあって、入場できない人が出るほど盛況であった。『メコンホテル』はパルム・ドール受賞作『ブンミおじさんの森』と同様に死者と生者が同席するスピリチュアルな作品。舞台がメコン川にされたことで、悠久の流れと輪廻のイメージが重なって感じられた。

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シンポジウムでのアピチャッポン監督(写真提供:映画祭事務局)

 シンポジウムの締めくくりで、梁木氏の「未来の映画祭のあるべき姿は?」との問いに、監督は「(産業化した映画祭ではなく)農業をしている人が撮った作品を上映できるような民主的な映画祭」と答えた。実は、アジアフォーカスでは昨年、シネコンに代表される映画のグローバル化に対抗するため、地産地消を目的とした特集「農業と映画」を企画し、実際に農業をしながら映画作りをしている監督の作品を上映している。二人の志向の共通性に驚いた。また、梁木氏からは「(アートとして)過激な作品を見てほしいが、そういう作品を上映すると観客を集めにくい」という悩みも吐露された。

 もし映画祭で上映される作品が、いずれシネコンで上映されるような作品ばかりだったら、ずいぶん寂しいものになるに違いない。グローバル化に対抗するアジアフォーカスの未来はどのような姿になるのだろう。来年もアジアフォーカスの真骨頂を思わせる質の高い作品を中心に、他所では見ることができない過激なアート作品も織り交ぜて「アジアの今」を感じさせてほしい。


アジアフォーカス・福岡国際映画祭2013
 期間:2013年9月13日(金)~9月23日(月・祝)
 会場:キャナルシティ博多
 公式サイト http://www.focus-on-asia.com/

Writer's Note
 井上康子。アジアフォーカスで、亡霊とその遺族が共に過ごす作品『結界の男』『Pee Mak(原題)』『メコンホテル』を見て、「東北の被災地で行方不明の家族を雑踏の中で見かけるなど霊的な体験を訴える方がいる」と新聞にあったことが思い浮かんだ。根底にあるのは大切な人に会いたいと願う心だ。遺族の痛切な思いと、その思いが堆積された文化としての亡霊譚が胸に染み入った。


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