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Essay 北の街のシネマ放浪記・その3 ~シネマ・トーラスで『ベルリンファイル』を見る

Text by hebaragi
2013/10/15掲載



 苫小牧市と聞いて皆さんは何を思い浮かべるだろうか。筆者が思い浮かべるのは高校野球である。二度にわたる全国制覇、三度目の決勝戦は延長再試合の末の準優勝という北海道勢初の快挙をもたらした駒大苫小牧高校ナインの勇姿は今でも鮮明に記憶に残っている。普段は日本ハムファイターズの応援をしている北海道民も、駒大苫小牧快進撃の立役者・田中将大投手が楽天ゴールデンイーグルスのエースとして活躍する姿を見るたびに誇らしく感じるのではないだろうか。

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シネマ・トーラスの外観

 さて、素顔の苫小牧市は製紙や自動車・石油化学を中心とした北海道随一の工業都市である。最近では電車で1時間以内という交通の便から札幌市のベッドタウンとして宅地開発が進むほか、新千歳空港に隣接し、本州各地へのフェリーが多数発着する苫小牧港を抱える交通の拠点としても発展著しい。また、日本一の水揚げ量を誇るホッキ貝をキーワードにした観光振興が図られていることもユニークな点といえるだろう。

 そして、知られざる苫小牧市のもうひとつの顔が「映画の街」である。とりわけ、『バッシング』『愛の予感』『春との旅』『日本の悲劇』などの作品で知られ、ヨーロッパの映画祭で高い評価を受けている小林政広監督が惚れ込んだ街であり、多くの監督作品でロケ地になっていることは特筆すべき点といえる。一般に苫小牧の風景は無機質な工業都市のイメージが強いが、どこまでも続くモノトーンの海岸線に工場の煙突が立ち並ぶ風景は、映画制作にとってあらゆる可能性を秘めた無限のキャンバスにもなるようだ。最近では『のぼうの城』のロケも行われている。

 「シネマ・トーラス」は、苫小牧駅から徒歩10分ほど、製紙工場に近い商店街を抜けたところにある。映画館の看板は目立たないが、併設されているボーリング場を目当てに来ると分かりやすいかもしれない。札幌のシアターキノなどと同様に市民出資をもとに立ち上げたミニシアターであり、今年になって実現したデジタル化に際しても市民の寄付が大きかったと聞く。通常上映のほか、毎月1回、ミニシアターのない室蘭市と伊達市の公共ホールで出張上映会を実施するなど意欲的な活動を続けているほか、先述した小林政広監督とのタイアップによる様々な企画も行われている。そして、韓国映画を積極的に紹介してきていることも大きな特徴のひとつであり、最近も『高地戦』『拝啓、愛しています』『王になった男』『殺人の告白』といった作品を上映している。こじんまりとした中にもアットホームな暖かみを感じるミニシアターである。

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シネマ・トーラスの館内

 今回は「韓国映画特集」で上映されていた作品の中から『ベルリンファイル』を見た。チョン・ジヒョンが出演する南北スパイ映画という程度の予備知識だけで先入観なしに見たが、オープニングから各国のスパイや得体の知れない人物たちが暗躍するテンポのよい展開に引き込まれ、あっという間の二時間だった。ハ・ジョンウとハン・ソッキュの渋い演技、リュ・スンボムのややコミカルなキャラクターが印象的だが、登場人物のほとんどが男性という設定のなかで、チョン・ジヒョンの存在は異彩を放っている。彼女は前作『10人の泥棒たち』では華麗なワイヤーアクションや様々なコスチュームで楽しませてくれたが、今回は一転して凛としたたたずまいを感じさせる北朝鮮大使館職員(通訳)として登場する。ストーリーは中盤以降、本国関係者に追われることとなったハ・ジョンウ、チョン・ジヒョン夫妻の逃避行、そして拉致監禁の舞台となったアジトでの銃撃戦など緊迫したシーンが続く。一方、極限状況にあっても、ふたりの会話にはすれ違いがちな夫婦の葛藤が描かれ、ラブストーリーの要素も感じさせる。チョン・ジヒョンが、屋根伝いに逃げ回ったり、銃撃戦でピストルを持つシーンを余裕でこなしているように見えたのも新たな発見といえる。

 作品中に描かれている国際関係は最近の北朝鮮情勢が反映されるなどリアリティにあふれており、見る者に強い印象を残す。南北分断やスパイをテーマにした韓国映画はこれまでにも多数製作され、多くの観客を集めてきた。しかし、現実の対立状況をベースに描かれていることからくるリアリティある迫力は「悲しい現実」ともいえるのではないだろうか。本作品の舞台として、かつて東西冷戦の象徴であったベルリンを選んだことについて、製作側の強いメッセージを感じる。1989年、誰もが想像しなかったベルリンの壁崩壊のシーンを今でも鮮明に思い出す。あれから四半世紀が経とうとする現在も、残念ながら南北分断は続いている。朝鮮半島に真の平和が訪れ、分断が本当の意味で昔話になる日が一日でも早く訪れることを切に願いつつ、劇場をあとにした。


Writer's Note
 hebaragi。筆者とシネマ・トーラスとの出会いは2004年公開の『チルソクの夏』にさかのぼる。その後も、札幌で見逃した韓国映画を見る際などに重宝させていただいているありがたい存在だ。


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