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Report 福岡インディペンデント映画祭(FIDFF)2013 ~目覚ましく成長・進化する韓国との交流

Text by 井上康子
2013/10/2掲載



 福岡インディペンデント映画祭2013(以下、FIDFF)が、8月30日から9月10日まで福岡市内3会場で開催された。自主映画制作の活性化とクリエイター同士の交流、また海外映画祭との連携を目的に2009年にスタートし、5周年を迎えた今年は、コンペティション・招待作あせて193作品が上映された。若い映画祭だけあって、その成長は目覚ましい。コンペ応募数は昨年の86作品から今年は129作品まで増加した。招待作品は、メイド・イン釜山独立映画祭(以下、MIB)の優秀作品など、国内外の秀作が上映された。さらに、犬童一心監督による「コンペ部門グランプリ作品講評カフェトーク」をはじめ、盛りだくさんのイベントが実施された。どの会場も盛況で、観客数は昨年の1,871人から今年は2,471人と大幅増だった。


力作揃いの日本作品、女性作品に注目


 コンペ応募作は上映時間で6部門に分けられ、各部門で頂点に立った作品には部門別グランプリが、さらに全作品から選ばれた作品には最優秀作品賞が授与される。受賞式後に上映された受賞4作品はいずれも力のこもった作品だったが、最優秀作品賞だけあり『家族の風景』(佐近圭太郎監督)が秀逸だった。社会人になって間もない青年が、母親の怪我をきっかけに、家族の中では子どもだったのが大人となっていく。何気ない日常を通して、彼の心の変化が表現されていた。昨年、『かしこい狗は、吠えずに笑う』で最優秀作品賞を受賞した渡部亮平監督は、講評を行った犬童一心監督に認められ、その後、犬童監督のドラマ作品の脚本を担当しているそうだ。FIDFFにより若い制作者の育成が実現されている。

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コンペ授賞式(写真提供 FIDFF事務局)

 国内招待作品では、今年の釜山国際映画祭ドキュメンタリー部門で公式上映される『ある精肉店のはなし(仮)』の予告編と、昨年、ベルリン国際映画祭こども審査員特別賞を受賞した『聴こえてる、ふりをしただけ』が、特に観たかった作品で、いずれもトークも聴けて、作品への興味がより強まった。前者は大久保千津奈撮影監督が屠畜を行う家族に真摯に向き合う姿に、後者は看護師で母親でもある今泉かおり監督の「育児休暇を利用して撮影した。母親になり、子どもにきちんとメッセージを伝えられる映画を作らなくては、と思うようになった」という言葉に、会場から大きな拍手が起こった。今年のコンペ参加者も女性の比率がかなり低かったが、この二人のような女性映画人がロールモデルとなって映画を志す女性がもっと増えていくことだろう。


斬新で個性的なメイド・イン釜山独立映画祭作品


 FIDFFは、スタート時より毎年、釜山の映画祭の作品を上映し、FIDFFの作品も釜山で上映するという形で交流を継続している。昨年9月初旬に開催されたFIDFFでもMIB優秀作品が上映され、上映作品の監督を中心にしたゲスト・トークが行われた。その後、11月のMIBではFIDFF推薦作が上映され、今年5月の釜山国際短編映画祭(以下、BISFF)でも同じくFIDFF推薦作が上映されている。今年も、姉妹映画祭であるMIB優秀作品11本が上映され、監督とMIBを主催する釜山独立映画協会(通称Indi Busan、以下、IB)のスタッフら計8名が招待された。釜山の作品をこれだけまとめて見ることができ、あわせてトークも聴けるのはたいへん貴重な機会だ。

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釜山から来日したゲスト、右端がIB代表チャ・ミンチョル氏(写真提供 FIDFF事務局)

 MIB優秀作品は、ベテラン監督中心の長編3本、『Hunt』(キム・ヨンジョ監督)、『The Illusion』(キム・デファン監督)、『トダリ・リドックス』(パク・チュンボム監督)と、若手監督中心の短編8本、『同行』(カン・ミンジ監督)、『ピンポン玉』(イ・ジョンファ監督)、『mother』(アン・ミョンファン監督)、『平行線』(チェ・ユンス監督)、『境界人』(ソン・イルソン監督)、『ダイビング』(ミン・ジュホン監督)、『花夢』(パク・へジョン監督)、『像』(オ・ミヌク監督)であった。

 特に印象に残った6作品を紹介する。

『Hunt』 田畑を荒らすイノシシを狩猟する男たちを追跡したドキュメンタリー。語りを一切排し、開発による自然破壊、イノシシ被害の深刻さ、捕獲の困難さを写し、政府が奨励する狩猟が有効な対策ではないことを訴えている。

『境界人』 『ムサン日記~白い犬』のように脱北者が韓国で生活することの厳しさを描いている。主人公が脱北途中に家族を見捨てた苦悩が効果的にフラッシュバックで挿入され、15分の短編だが長編を見たような充実感があった。監督は「社会には絶対的な善も悪も存在しないことを伝えたかった」と制作意図を語った。

『平行線』 映画の編集を任された主人公の学生が、映画に登場する女性に恋心を抱き、編集で自分と相愛の映画にしてしまうが、現実では彼女は彼を知らず通り過ぎるだけで、交わることなく平行である。監督が「映像媒体で見ると親しみを感じるが実際は違うことが分かった時に感じる無力感を表現した」と語るのを聞き、非凡な着眼に感心した。

『mother』 清掃員をする母親の一日を息子である監督が追ったドキュメンタリーで、たいへん親孝行な映画だ。働き者のお母さんと息子の会話が微笑ましい。

『ピンポン玉』 聴覚障害の少年の孤独感を描いているが、かすかにしか聴こえない少年の音の世界をイメージできる音響効果が素晴らしかった。

『ダイビング』 ガラスの部屋に引きこもっている青年を主人公にし、外の世界への憧れや不安がメルヘンタッチで描かれていて、若い監督らしい作品だと好感をもった。

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ゲスト・トークの模様

 来日ゲストによるトークでは、IB副代表チェ・ヨンソク氏から「釜山国際映画祭が開催される釜山は映画産業に力を入れており、大学の映画学科も増えている。若手が頑張っているが、映画はどうしてもソウルが中心であり、苦労しながら制作している。協会はできるだけ支援をしていこうとしている」という状況報告があった。筆者は、昨年のMIBと今年のBISFFに参加する機会を得たが、MIBの短編プログラムでは、上映作の学生監督が「いつも良きアドバイスをくれる」という司会の監督を「先輩」と呼び、会場にいた家族も紹介され、若い監督を支える雰囲気が何とも温かだった。BISFFでは国際映画祭として、中国映画の特集が組まれ、中国の学生監督・ベテラン監督の作品を上映し、映画理論のレクチャーや中国の監督についてのセミナーが開催され、発表の場であると同時にシステマティックに学べる場なのだと思えた。こういう面から、釜山の若手は恵まれているように感じたが、確かにプロの映画人として生活していくのは大変であろう。

 IB代表チャ・ミンチョル氏は「映画祭同士が交流しているが、言語の問題があり、例えば私は今日のFIDFF上映作を観ても理解できない。字幕制作の支援が実現し、互いの作品を理解できれば深く長い交流になるだろう」と指摘。また、上映作『The Illusion』の監督でもあるキム・デファン事務局長は「今年11月開催のMIBでもFIDFFの作品を上映予定。確実に互いを支えあえるよういろいろ企画している」と抱負を語った。これらが実現すれば交流の質は今後さらに高まることだろう。


進化する韓国との交流


 FIDFFと釜山の共同プロジェクトとして、釜山出身で福岡ソフトバンクホークスに所属する金無英(キム・ムヨン)投手の活躍を描いた『金無英ドキュメンタリープロジェクト』(ダイジェスト版)が上映された。FIDFF代表・西谷郁氏の企画&監督作品で、日韓交流を体現しているキム投手を描くことで、両国の絆をさらに強くすることを目的としたものだ。

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ジョン・チヨンさん(左)とムン・チヨンさん(右)

 また、韓国出身&福岡在住のFIDFFアートディレクター、ムン・チヨンさんと、ジョン・チヨンさんが、日本という異なる文化・言語の世界で感じたアイデンティティの問題を表現した美術作品展「KIZUNA」も開催された。FIDFFのスタッフが日韓交流に関する作品を発表したことに、FIDFFにおける韓国との交流の進化を感じた。

 来年はさらに活況を呈し、韓国との交流がより深いものになっていることだろう。ぐーんと大きくなったFIDFFに再会したい。


福岡インディペンデント映画祭2013
 期間:2013年8月30日(金)~9月1日(日)、9月5日(木)~9月10日(火)
 会場:福岡アジア美術館、中州大洋映画劇場
 公式サイト http://fidff.com/

Writer's Note
 井上康子。今年のFIDFFでは李達也監督の『GALAPAGOS』を観ることができなかった。FIDFF2012で、国籍をめぐる在日親子の葛藤を描いた『アイゴ~! ~我が国籍は天にあり~』を見せてくれた李監督の新作で、在日への差別に対する監督の思いが込められた作品だ。互いをよく知ることが共存の道。韓国との交流を続けるFIDFFの果たす役割は大きい。


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