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Report 第4回アジアンクィア映画祭 ~様々な愛、様々な生き方を示す珠玉の作品たち

Text by Kachi
2013/8/10掲載



 8月17日(土)より、自らゲイを公言している韓国の映画監督キム=チョ・グァンスの短編『ただの友達?』、『少年、少年に会う』、『愛は100℃』が、「Gショートムービーセレクション」として東京のシネマート新宿と大阪のシネマート心斎橋で上映される。「99.9%真実のゲイ映画を作りたかった」という監督の意欲が見事に表現されていながら、韓国歌謡のトロットやダンスも飛び出すエンターテイメント性も備えている。初めて見た時は、あまりに官能的な描写に驚倒したので、限定とはいえ劇場公開されることは感慨深い。

 第4回アジアンクィア映画祭(5月24日~26日、5月31日~6月2日@シネマート六本木、以下AQFF)では、そのキム=チョ・グァンス監督の初長編作『2度の結婚式と1度の葬式』や、イ=ソン・ヒイル監督の連作プログラム「One Night and Two Days」、ソ・ジュンムン監督の特集上映、キム・スヒョン監督『マネキンと手錠』、短編作品ではチャン・ユンジュ監督『ネイル』、アンドリュー・アン監督『アンディ』などが上映された。

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『2度の結婚式と1度の葬式』

 『2度の結婚式と1度の葬式』は、ゲイのミンス(キム・ドンユン)とレズビアンのヒョジン(リュ・ヒョンギョン)が、自分たちの性的指向を隠して偽の結婚式を挙げるシーンから始まるコメディ。作品のテーマである同性カップルの婚姻や養子縁組の問題は深く掘り下げない。だが「笑えるクィア映画を撮る」が信条のキム=チョ・グァンス監督らしい、間断なく客席から爆笑が起きる娯楽作だった。「クィアに友好的なフランスへ行きたい」と愚痴り、控えめに生きるミンスが、今も偏見の残る韓国でめげずに暮らそうとするパートナーのソク(ソン・ヨンジン)やヒョジンと関わることで少しずつ変わっていく前向きなメッセージに好感を持った。ヒョジンとソヨン(チョン・エヨン)のレズビアンカップルの扱いの小ささには物足りなさもあり、ゲイ仲間はいわゆるオネエ口調でややステレオタイプな描き方ではあったが、それぞれの魅力が十分に感じられる。とりわけ、ミンスに熱い想いを寄せるティナ(パク・チョンピョ)はキュートで、実は一番芯の強い、忘れがたいキャラクターだ。韓国唯一のゲイ・コーラスグループ「G-VOICE」が務めたエンディング曲はさすがだったが、本編のキャストたちの歌も彼らに劣らず素晴らしい。

 『マネキンと手錠』は、美大の教授が、教え子に紹介されたユン(キム・ヒョジン)をモデルにスカウトして映像作品を撮影している話と、ユンによる失恋の回想で展開していく。カルト映画のような作りで、規格外なクィア映画だった。デパート店員のユンは、自分と同じ服装をさせたマネキンを屋上から落とし、通りかかったカン(キム・コッビ)たちスリ集団の車に激突する。追ってきた刑事が手錠でユンとカンをつないだことから、二人の愛と不思議な逃避行が始まる。刑事とその後輩との珍妙なやり取りで明らかになる事実や、光州事件で命を落とした女性のこと、カンと謎の僧侶の関係などが次々と現れ、物語は様々な愛と生き方、現実と非現実を自由にめぐって広がりをみせていく。

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『マネキンと手錠』

 ユン曰く「レズビアンの愛とは自分がどんな立場にいようと相手を思いやる利他愛」だ。差し挟まれる女性たちの昔の記憶や想像が、その主体が誰であるか時としてあいまいにされ、まるで彼女たちの心が共鳴しあっているようだ。ユンとカンをつなぐ手錠は、気持ちのつながりの象徴である。だが、かつて『バンジージャンプする』が同性愛を思わせる関係を「これは人間愛」と否定したこととは異なり、レズビアン描写は美しくもストレートなもので、女優二人の熱演が光っていた。

 「AQFFセレクション ソ・ジュンムンプログラム」では、同監督の新作『REC』とAQFF2009からのアンコール上映となる『蛍の光』が上映された。『REC』は、ホテルの一室でゲイのカップルがお互いを撮りあう映像で進んでいく。セックスにふける二人の熱々ぶりをひたすら見る映画かと思っていたが、粗いカラー画面が鮮明なモノクロになった瞬間、彼らを待っていた結末の冷たさに気づき、ハッと息を飲んだ。『蛍の光』では、かつての恋人同士が、老境に至って偶然再会する。ホテルの部屋で、思い出の歌謡曲を口ずさみながらの二人のチークダンスは珠玉のシーンだ。まるで『REC』のその後を見ているようで切なさもひとしおだった。2作品とも巧みな映像表現、悲しいのに何度も見たくなる筋書きは、まさに一級のラブストーリーだ。

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『REC』のティーチインより
チョン・ヘフンさん(左)とソン・サムドンさん(右)

 ソ・ジュンムン監督のデビュー作である、ゲイカップルの別れを描いた『カメリア・プロジェクト:ボギル島の三つのクィア・ストーリー』の一編『漂流する島』は、以前監督自らが『チョンノの奇跡』の中で「みんなで映画を撮っている気持ちになれなかった」と告白していたように、ゲイであるために撮影現場で感じた監督の孤独が現れているような、どこか遠慮がちな作品であった。しかし『REC』のティーチインで、主演のソン・サムドンさんとチョン・ヘフンさんは、ソ監督との撮影中の思い出を笑顔で話した。クィアではない二人は、韓国のゲイ・ストリートであるチョンノやイテウォンに行って当事者たちと話したり、ネットでゲイのアダルト動画を見たりして撮影に臨んだが、「すごくリアリティを追求していた監督が、プロデューサーと二人でラブシーンの演技の手本を示してくれた」とのこと。監督は入隊中、性的指向を理由に言われなき屈辱を受けたこともあったそうだが、誰かを愛することの喜びと苦しみを映し出す映画を、様々なトラウマを乗り越えながら、スタッフや俳優たちと一緒に作り上げているのだ。

 イ=ソン・ヒイル監督の連作『あの夏、突然に』、『南へ』、『白夜』は「One Night and Two Days」としてクロージングで一挙上映された。『あの夏、突然に』では教師と生徒、『南へ』では軍隊内での同性愛が、『白夜』では2011年にチョンノ一帯で起こったゲイをターゲットにした襲撃事件が、それぞれ物語のベースになっており、クィアの状況や社会的問題に触れてはいる。だが、監督は『白夜』について「付き合っていた人と手をつなげずチョンノを散歩した思い出を元に執筆した脚本に、事件のことを書き加えた」と語る。ホモフォビアからの攻撃によって心身に傷を負った被害者の痛みをすくいとりつつあえてそこに固執せず、苦く切ない恋愛模様にスポットを当てたのだ。

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ティーチイン中のヒイル監督

 ヒイル監督の映画は、夜や夕日などが作り上げる暗さと、そこに浮かび上がる登場人物の美しさが魅力で、今回の3作品にも引き込まれた。AQFF2007で上映された『後悔なんてしない』では、施設育ちの貧しい青年スミン(イ・ヨンフン)は恵まれた家庭のジェミン(キム・ナムギル)を強く拒みながら彼と愛し合っていく様子が印象的だった。同様に『あの夏、突然に』の教師と生徒、『南へ』の現役兵と除隊した元上官、『白夜』の裕福な男とその日暮らしの青年など、身分や階級、生活レベルなどで何らかの格差を持つ彼らは、傷つける言葉とは裏腹にどうしようもなく惹かれていく。そんな彼らに感情を揺さぶられた。

 今年6月26日に、アメリカ連邦最高裁が「結婚を男女間のみのもの」と規程する連邦法の条項を違憲とする初めての判断を示した。クィアカップルにも異性愛者の結婚と同等の権利を与える道筋をつけつつある欧米に比べ、アジアでは法律はおろか、社会の意識も一進一退を繰り返している。そんな中、AQFF2013はクィアとして言いたいことを押し出していくものばかりではなく、笑いや感動、恋の喜びやもどかしさといった人間の普遍的感情や、多様な人生を描き出す作品が多かった。会場では、映画ファンの知り合いに何人も会った。それはひとえに、作品がクィア当事者のみならず、映画好きにもアプローチしている証拠だろう。むしろクィア映画の枠に収まらない作品も発信し続け、異性愛者の映画と変わらない状況を作り上げることこそが、ホモフォビアに対する一番の抵抗策なのかもしれない。隔年開催のAQFF、2年後にはどんな珠玉の作品が揃うのだろうか。


第4回アジアンクィア映画祭
 期間:2013年5月24日(金)~5月26日(日)、5月31日(金)~6月2日(日)
 会場:シネマート六本木
 公式サイト http://aqff.jp/

Writer's Note
 Kachi。『2度の結婚式と1度の葬式』は、ソウルLGBT映画祭でも見てきました。G-VOICEの音楽、キャストのキレのあるダンスと歌は何度見ても良かったです。


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