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Report 第27回福岡アジア映画祭2013 ~博多祇園山笠のような熱気あふれる映画祭

Text by 井上康子
2013/7/29掲載




歴史あるアジア映画祭


 今年で27回を迎える「福岡アジア映画祭」が、7月5日から7月14日まで福岡市の西鉄ホールとアンスティチュ・フランセ九州を会場として開催され、コンペ部門5作品、アジアン・パノラマ部門9作品が上映された。半数の作品を見ることができたので紹介したい。

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 アジアへの玄関口である福岡では、アジア映画を上映する主な映画祭が夏期に集中的に開催されている。毎年その一番手として、博多祇園山笠で賑わう時期に開催されるのが本映画祭で、9月には「福岡インディペンデント映画祭」「アジアフォーカス・福岡国際映画祭」「東アジア映画フェスティバル」が控えている。1987年に第1回開催と開始も一番手。即ち、福岡で最も長い歴史をもつアジアの映画祭である。

 映画祭代表の前田秀一郎氏が、今村昌平監督作品を自主上映した際に監督が語ったマレーシア作品のおもしろさに興味を抱いたことが映画祭誕生のきっかけになった。27年前のことなので、前田氏は苦労してアジアの作品を見て、選び、開催したところ、今村監督に映画祭の意義を絶賛され、毎年の開催を促がされた。前田氏は監督のことば通りに、途切れることなく毎年開催し、今回までで約500作品を上映している。「継続は力なり」を実感させてくれたのは、最近の例では、昨年、国民俳優アン・ソンギ主演の大ヒット作『折れた矢』を上映し、併せて、ビッグスターである彼をゲストとして招いていたことが挙げられる。彼の出演作はこれまでに15作品以上上映しているが、そのような実績があってこその来福であっただろう。

 『折れた矢』のようにメジャー公開されたヒット作を日本初で上映することにもこだわりをもっているが、開催の主たる目的は「才能はあっても、まだ知られていない若い監督の作品を日本に、さらには世界に紹介する」ことだ。第8回からはコンペ部門を設け、今回までに韓国映画は11作品が最優秀作品賞にあたる「福岡グランプリ」を授与されている。今や世界三大映画祭を制覇し巨匠になったキム・ギドク監督も第16回(2002)に『バッド・ガイ(一般公開時タイトル:悪い男)』で受賞している。


コンペは娯楽性と社会性を兼ね備えたメジャー作品で、いずれも日本初公開


 今年の新しい若い才能、中国のホアン・レイ監督のデビュー作『アングリー・キッズ』は、両親が海外赴任し祖父の元に放置されたことに怒った少年が家出し、少女と共に児童を酷使する悪者をRPGの趣でやっつけるコメディ。都会の富裕層の少年と田舎の貧困層の少女のコンビに現代中国の縮図が見て取れた。台湾のチュウ・ヨウニン監督による『おばあちゃんの秘密』は監督の自伝的要素が強い作品で、家族の絆を描いたドラマ。迷える青年主人公を見守る祖母の視線が温かい。祖母役の女優チャン・シウユンは90歳近いそうだが彼女の存在感は圧巻。主人公を演じたクー・ユールンはアン・リー監督作品『ラスト、コーション』に出演するなど、すでに注目度の高い俳優だがさすがの演技力だ。

 コンペ部門では、韓国映画が3作品上映されたので、ティーチインの内容も含めて紹介しよう。

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『ウエディングスキャンダル』のシン・ドンヨプ監督

 『ウエディングスキャンダル』は、監督デビュー作『愛しのサガジ』で2004年にも本映画祭に登場したシン・ドンヨプ監督作品。延辺出身の朝鮮族の女性が韓国での就労のために偽装結婚するが発覚して拘束される。双子の妹(クァク・チミン)は姉を助けるため、偽装結婚相手の青年(キム・ミンジュン)に、相愛の夫婦であることを証明するためのセックス・ビデオ撮影の協力を迫るというラブコメ。本作は監督が企画した作品で商業的な投資がなく、キム・ミンジュンは役柄に意欲を見せてノーギャラで出演したとのことだが、格好よくない青年を肩の力を抜いて演じている。ビデオ屋の店員等により、真剣に楽しくセックス・ビデオ撮影が進む様に、監督自身の映画作りに対する愛情を感じた。

 『パパロッティ』は、『青燕 あおつばめ』などを手掛けたベテランのユン・ジョンチャン監督作品。孤児の高校生(イ・ジェフン)は孤独感からヤクザ組織に身を置いたものの、天賦の歌声を持ち、クラシック歌手を夢見、音楽教師(ハン・ソッキュ)は彼を全力で支える。イ・ジェフンとハン・ソッキュの安定したコミカルなやりとりに改めて二人の演技の巧さを実感できた。笑いを誘いながら感動的な展開を見せ、本作は今年の「福岡グランプリ」を受賞した。審査員の尾上克郎特撮監督からは「粒揃いの作品の中から選択するのに苦労した。最も多くの人が満足する作品として選んだ」との講評があったが、観客数も最も多かった。本作はすでに日本で配給権が獲得されている。

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グランプリを受賞したユン・ジョンチャン監督(左から2番目)

 『鋼鉄テオ』は、前作『バンガ?バンガ!』で職を得るためにブータン人に化けた青年の笑いと涙を描いたユク・サンヒョ監督が、主演のキム・イングォンと再びコンビを組んだ作品。韓国で民主運動が盛んだった1985年、中華料理店の配達員が憧れの女子大生に近づこうとしたことから、民主運動の学生闘士に変身し大活躍するというコメディ。同じく1985年の民主運動を描いたシリアスな『南営洞1985』が日本で上映されたばかりだが、本作は監督曰く「簡単にコメディにできない民主運動をコメディで描くということに挑戦した」意欲作だ。旬の俳優キム・イングォンが本作でも大いに笑って泣かせてくれる。監督は次作では「障害者を主人公にしたコメディ」に挑戦するそうで期待している。


多様なアジアン・パノラマ ~長編ドラマから社会派ドキュメンタリーまで


 韓国映画は『Jury』がパノラマ部門唯一の作品。前釜山国際映画祭執行委員長(現名誉執行委員長)キム・ドンホ氏が初めてメガホンを取った短編作品だ。昨年、アシアナ国際短編映画祭10周年を記念して製作された。映画祭の審査員役に、アン・ソンギ、カン・スヨンたちが実名で登場するほか、多数の映画人がカメオ出演している。「映画は夢です」と映画の良さを素朴に肯定した台詞は監督自身の思いだろう。

 アントワーヌ・バロー監督『夢想の森』(フランス)は、小栗康平、寺山修司、若松孝二ら3監督の作品と人となりを描いたドキュメンタリーで、小さきもの、名もなきものに寄せる3監督の思いがインタビュー等を通して迫って来た。

 以下は残念ながら鑑賞できなかったので簡単な紹介に留める。武正晴監督『モンゴル野球青春記 -バクシャー-』は、日本人青年がモンゴルで野球を教えた実話をもとにした長編ドラマ。蜂須賀健太郎監督『サンタクロースがやってきた』は、虚構の夢の重要性を伝え、今年のクリスマス時期に公開予定とのこと。中井信介監督『空に溶ける大地』と『忍び寄る原発 -福島の苦悩をベトナムに輸出するのか?-』は開発を巡る問題を描いたドキュメンタリー。谷津賢二監督『アフガニスタン 干ばつの大地に用水路を開く -治水技術7年の記録-』は福岡に拠点をもつNPO「ペシャワール会」の活動を追ったドキュメンタリー。尾登憲治監督『宝満山』は、福岡在住の監督が福岡の山の魅力を描いたドキュメンタリー。ジム・ウィテカー監督『リバース』(アメリカ)は、9.11アメリカ同時多発テロの生存者・遺族を追ったドキュメンタリー。

 アジアン・パノラマでは、例年、短中編のドラマが比較的多く上映されているが、今年は社会派ドキュメンタリー作品の割合が増えた。


自由な熱気に包まれて


 映画祭会場には、毎年「福岡アジア映画祭」と筆で手書きした立て看板が置かれている。その骨太の文字を見ると「今年はどんな作品を見せてくれるのだろう」と期待で胸が熱くなる。観客もアジア映画の熱心なファンが多く、目利きたちの興奮した会話がはずみ、場内は熱い。そして、上映後のティーチイン(コンペ部門では全回、アジアン・パノラマ部門でも約半数の上映回で実施)でその熱さが最高潮に達する。会場にいるボランティア・スタッフたちの服装は、ある人は浴衣、ある人はコスプレとたいへん自由で賑やかなことも手伝い、文字通り非日常的なお祭り気分に浸ることができる。前田氏は釜山国際映画祭と香港国際映画祭に毎年出向いているので、韓国作品と香港・台湾・中国のいずれかの作品は、毎年上映されている。韓国映画ファンにはお勧めの映画祭だ。博多祇園山笠の見物も兼ねて、ぜひ来てほしい。最後になるが、映画祭では通年、運営のための寄付を募っていることを付記しておく。

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『鋼鉄テオ』ユク・サンヒョ監督(右)


第27回福岡アジア映画祭2013
 7月5日(金)~7月7日(日)@西鉄ホール
 7月12日(金)~7月14日(日)@アンスティチュ・フランセ九州
 公式サイト http://www2.gol.com/users/faff/faff.html

Writer's Note
 井上康子。福岡アジア映画祭にまつわる思い出。それまでシリアスな韓国映画しか観たことがなかったのが、第10回福岡アジア映画祭(1996)でコメディ『トゥー・カップス』を観て「新しさのある映画」のおもしろさに開眼した。9月開催の「福岡インディペンデント映画祭」「アジアフォーカス・福岡国際映画祭」「東アジア映画フェスティバル」についてのお知らせ記事を近日執筆予定。乞うご期待。


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