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Review 『嘆きのピエタ』 ~キム・ギドクが現代社会へ贈る「ピエタ」像

Text by Kachi
2013/6/12掲載



 筆者が初めてキム・ギドクの名を知ったのは『悪い男』(2001)のポスターだった。水槽の中を泳ぐ熱帯魚のようにあでやかだが、どこか悲しげな女性。そこに書かれた奇抜で不穏なタイトルを目にした時の記憶は、今も強く残っている。

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 『鰐 ~ワニ~』(1996)で映画監督デビューを果たして以来、キム・ギドクは一瞬で心をつかむ強烈なビジュアルと極端なストーリーで世界を席巻してきた。そんな彼が、3年間の隠遁生活を経て発表した復帰作『アリラン ARIRANG』(2011)、『アーメン』(2011)に次ぐ『嘆きのピエタ』は、冷酷な借金取り立て人ガンド(イ・ジョンジン)と、彼の前に突然現れ母を名乗る女ミソン(チョ・ミンス)の数奇な関係をめぐるドラマだ。韓国・清渓川(チョンゲチョン)周辺にひしめく町工場の景色が作り出すくすんだ画面に、ミソンの濃い緑のショール、赤い唇とスカート、動物の死骸といった原色が映える。色彩感覚と小道具の選び方は独特で、ワンカットを見ただけでキム・ギドクの映画だと分かるほどだ。グロテスクなショットが続くが、それはやがて訪れる戦慄と深い感動の布石となる。今や映画の中の凄惨な描写はめずらしくもないが、キム・ギドクのそれには思想すら感じられ、他の追随を許さない。

 『嘆きのピエタ』が示すのは、カネに人間がとらわれ続ける現実だ。残忍なやり方で借金を返済させる悪魔のガンドもまた、雇われたしがない取り立て人であり、カネにひざまずく債務者フンチョル(ウ・ギホン)は、いら立たしいほどみじめだ。人間はカネに使われる小さな存在でしかない。資本主義社会の縮図がここにある。さらに一筋縄ではいかない形で母性愛が交錯する。母として子を慈しむミソンと、子として母を求めるガンドは、その宿命のために激しい痛みで貫かれる。何かを守ろうとする愛は、時として強い残酷さを持つのだ。問題作にして傑作『悪い男』では、ヤクザが女子大生を売春婦にしてしまう非道さが、奇妙な説得力で純愛として表現されていた。キム・ギドクが描く愛は、常に劇薬だ。

 これまでキム・ギドクは、私たちが目をそむけたい社会の負の側面を、えぐるような形で見せつけてきた。『嘆きのピエタ』もとても露悪的だが、見た後はなぜか心が澄んでいる。光と陰を分けることができないように、作品でさらけ出された悪もまた、善良なもの、純粋なものと表裏一体だ。カネに翻弄されるフンチョルや、ミソンを失いそうな瞬間に慟哭するガンドは、どれほど極端に造型されたキャラクターであっても、どこかで我々に重なる。

 自身を磔にする十字架を担ったイエス・キリストがゴルゴダの丘へと進むように、カネで誰かを傷つける悲しい現代社会を生きる人間の罪を、ガンドは一人背負っていく。聖母マリアのミソンは、そんな我が子の悲惨な姿を見て涙する。作品で完成された神々しいギドクの「ピエタ」像に、魂を洗われた思いがした。


『嘆きのピエタ』
 原題 피에타 英題 Pieta 韓国公開 2012年
 監督 キム・ギドク 出演 チョ・ミンス、イ・ジョンジン
 2013年6月15日(土)より、Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー
 公式サイト http://u-picc.com/pieta/

Writer's Note
 Kachi。ソビエト時代の映画『不思議惑星キン・ザ・ザ』(1986)を鑑賞。これぞカルト!な、愛すべきおかしな作品でした。


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