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Essay 北の街のシネマ放浪記 ~個性あふれる映画館で素敵な映画たちと出会う

Text by hebaragi
2013/4/3掲載



 映画館へ行くのが好きだ。作品を見る楽しみはもちろんだが、映画館のたたずまいに心が落ち着く。スタッフと交わす会話や他の観客の反応も楽しい。北海道には個性的な映画館が存在している。そんな映画館を鑑賞作品とともに紹介していきたい。

 現在、札幌ではかなりの数の韓国映画を見ることができる。全国公開系は札幌駅直結の「札幌シネマフロンティア」や「ユナイテッド・シネマ」、単館系なら「シアターキノ」と「蠍座」、その中間に位置するのが「ディノスシネマズ札幌劇場」という大まかな棲み分けが形成されているようだ。


ひっそりとたたずむ「蠍座」


 札幌のミニシアターといえばシアターキノが有名だが、もうひとつのミニシアター「蠍座(さそりざ)」は札幌駅北口から徒歩3分のロケーション。閑静な一角にあるビルの地下にある。同じビルにあるコンビニの派手な看板に比べ、蠍座は入口に小さなあんどん型の看板が一個置かれているだけ。最初に訪れたとき、ビルの前を3回通り過ぎてからようやく存在に気づいたほど奥ゆかしいたたずまいである。

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蠍座の入口

 毎月のラインナップが掲載されている『蠍座通信』は、上映作品紹介はもとより、かつて大手の映画館に勤務していた経歴を持つ館主のコラムが楽しい。上映作品は全国公開系ではない国内外の秀作が基本。韓国関係の映画はアート系の秀作の上映が多い。これまでに『春の日は過ぎゆく』、『キムチを売る女』、『アドリブ・ナイト』、『妻の愛人に会う』といった作品が上映されてきた。また、過去には『花を売る乙女』、『怪傑洪吉童』といった北朝鮮の作品も上映された。

 ロビーには落ち着いた雰囲気のカフェコーナーがあり、上映待ちの間、お茶を飲みながらこれから見る映画への思いをめぐらせることができる。注目すべき点のひとつは全国最安と思われる料金だ。1本鑑賞の場合は900円、2本だと1,400円、3本だと2,000円、学生の場合はそれぞれ800円、1,200円、1,800円とさらに安い。これは近くにいくつかある大学や高校の学生たちに気軽に映画を見てほしいとの館主の思いもあったと聞く。体全体が沈み込むフランス製のゆったりとしたシートに身を任せる至福の時間は何物にも代え難い。

 今回見た作品は『おだやかな日常』。休日ということもあってか、客席の7~8割が埋まる盛況ぶり。この作品は、2組の夫婦の生き方を通して、自分たちと異なる意見をもつ者に対して「病気だ」、「宗教だ」などとレッテルを貼って排除しようとする不気味な圧力を描いている。作品には、このような他人に同調することを強いる圧力が2つ登場する。1つ目は幼稚園の保護者たちによるものであり、2つ目は会社の上司からのパワハラ同然の行動だ。同様のテーマを描いた映画に、イラク人質事件をヒントにした小林政広監督の『バッシング』がある。また、コミックが原作のTVドラマ『斉藤さん』は『おだやかな日常』と同じく、幼稚園に通う子どもを持つ保護者間の同調圧力を描いた秀作だ。

 必死の決意でわが子を守る母親を演じた杉野希妃と、不安にかられて行動する隣家の主婦を演じた篠原友希子の表情がストレートに伝わってくるとともに、同調圧力派の保護者を演じた渡辺真起子の演技も強く印象に残る。「あなたの意見に私は同意しないが、あなたが意見を言う権利のために、私は体を張ってたたかう」。民主主義のバックボーンともいうべきヴォルテールの言葉を思い出す。残念ながら、この言葉の精神と正反対のことが起きているのが今の日本社会だ。何か問題が起きたとき、立ち向かう相手を間違えてはいけない。原発の問題とは、今後のエネルギーのあり方だけでなく、日本社会そのもののあり方が問われている問題でもある。震災から2年が経ったが、まるで何事もなかったかのように生活する忘れっぽい日本人。うわべだけの「おだやかな日常」に対する問題提起が見る者全ての胸に突き刺さる。


韓国映画といえば「ディノスシネマズ札幌劇場」


 札幌での韓国映画上映については、ディノスシネマズ札幌劇場を抜きに語ることはできない。2000年代以降、上映本数では他館を圧倒してきたからである。劇場は、札幌最大の歓楽街「すすきの」に近いロケーションで、ゲームセンターやボウリング場などがあるアミューズメントビルの7階と8階にある。客席数の多い1~3番スクリーンではメジャー系の作品、50席前後の4・5番スクリーンではミニシアター系の作品が上映されている。『悪い男』、『春夏秋冬そして春』といったキム・ギドク作品をいち早く紹介するなど、隠れた秀作を意欲的に紹介してきたほか、かつて毎年開催されていた「韓流シネマフェスティバル」の会場にもなっていた。

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ディノスシネマズ札幌劇場の入口

 今回見た作品は『愛してる、愛してない』。『アドリブ・ナイト』、『素晴らしい一日』同様、日本の原作をイ・ユンギ監督が映画化。キャストは人気のヒョンビンとクールビューティー、イム・スジョン。朝イチの上映回はヒョンビン目当てと思われる女性であふれており、筆者が唯一の男性だった。

 雨の一日、別れ話を切り出し荷物の整理をする女と、女に別れを告げられた男の会話を中心に淡々とストーリーが展開する。「思い出の詰まったものはなかなか捨てられない」と言う男に、女は「意味深な言葉ね」と返す。女は言う「なぜ怒らないの?」 男は悟ったように「怒っても状況は変わらないさ」と答える。時間が経つにつれ、主人公2人、とりわけイム・スジョンの表情が微妙に変化していく演出が秀逸だ。筆者が彼女をスクリーンで見たのは韓国の古典『薔花紅蓮傳(チャンファホンニョンジョン)』をモチーフにしたゴシックホラー『箪笥』が最初だったが、一見無表情のようで様々な思いを秘めた表情が印象的だった。その後、『アメノナカノ青空』、『ハピネス』といった作品で薄幸の女性をしっとりと演じたかと思えば、パク・チャヌク監督の『サイボーグでも大丈夫』のような変化球なテーマの作品や、『あなたの初恋探します』のようなラブコメにも出演し、演技の幅を着実に広げてきた。

 「雨が人生を変えることもある」と言ったら言い過ぎだろうか。雨の日は誰しも外出がおっくうになるし気分も沈みがちになる。一方で、雨の日はゆっくりと落ち着いて物事を考えるよい機会と言うこともできる。そんなときに大きな決断をしなければならないとしたら…。ストーリーの中盤、隣家から迷い込んできた子猫と飼い主夫婦の存在が2人に微妙な変化を与えていく。そして、結末は…。全編を通して、しっとりとした空気感が漂い、心地よい印象が残る。


Writer's Note
 hebaragi。北海道在住。知らない街に行ったらミニシアターを訪れることにしている。ミニシアターには、その館独自のユニークな顧客サービスがあったり、全国公開されないご当地ロケの作品が上映されていたりするなど新たな発見も多い。劇場スタッフから街のグルメ情報を仕入れたりすることも楽しみのひとつだ。「酒場放浪記」ならぬ「シネマ放浪記」といったところだろうか。


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