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Report 第5回別府八湯★日韓次世代映画祭 ~質の高い社会派作品とビッグなゲストに出会えるレトロな街の手作り映画祭

Text by 井上康子
2013/3/19掲載



 第5回別府八湯★日韓次世代映画祭(Japan & Korea Film Festival:以下、JKFF)が2月22日~24日に別府ビーコンプラザ、別府市中央公民館を会場に開催され、ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した話題作『嘆きのピエタ』がオープニング上映された。ちょうどこの作品を鑑賞した余韻にどっぷり浸っていた私は、キム・ギドクと主演女優チョ・ミンスによるトークが行われるのを知り、「2人の肉声が聞きたい」という思いに駆られた。また「名作に違いない『Jesus Hospital』を見なければ」、「地方都市の映画祭なのになぜ旬の話題作と豪華ゲストを呼べるのか知りたい」とも思った。そんな動機で、初めて会場に足を運んだ。

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オープニング舞台挨拶の模様(写真提供:日韓次世代映画祭)
左からキム・ギドク、アン・ソンギ、チョ・ミンス、イ・ミョンセ


日韓次世代映画祭とは? ~豪華ゲストを招待できる訳


 JKFFは今年で5回目。韓国の大学の映画学科関係者と交流のある下川正晴氏(JKFFディレクター、大分県立芸術文化短期大学教授)を中心に、大分・別府地域の大学関係者等により、若い世代の交流を目的として2008年に初めて開催された。その特長は、韓国映画界を代表する監督や人気俳優をゲストとして招聘し、質の高い作品を上映していることだ。近年は韓国映画評論家協会が主催する「映画評論家協会賞」の受賞者を中心にゲストが招待され、受賞作や関係作品が上映されている。これは同協会の協力によるもので、今年のゲスト・上映作品について述べると、キム・ギドク(監督賞)、チョ・ミンス(主演女優賞)が来日し、『嘆きのピエタ』(作品賞)が上映された。また、新人監督賞を受賞したシン・アガ、イ・サンチョル両監督が来日し、共同監督作品『Jesus Hospital』が上映された。また、アン・ソンギ(主演男優賞)も来日し、その主演作『折れた矢』が上映された。その他、韓国映画評論家協会常任顧問であるキム・ジョンウォン氏(JFKK特別顧問)を講師に迎えた「日韓シネマ講座」(『曼陀羅』上映+解説)が開かれ、日韓学生合作の短編映画も上映された。下川氏は新聞記者時代にソウル特派員を経験し、韓国の大学で教鞭を執っていたこともある韓国通。元ジャーナリストらしく、現実社会を反映した作品を選定しているようだ。

 以下、上映作品とトークの模様を紹介する。


『折れた矢』


 教授として勤務していた大学で入試問題の誤りを公表すべきだと主張したギョンホ(アン・ソンギ)は面子を保とうとした大学から解雇され、解雇不当の訴えは大学と司法の癒着により却下される。担当判事の反省を促すためにクロスボウの矢を向けたギョンホの行為は、司法への挑戦と見なされ、彼が不利になるよう審理が進められる。『ホワイト・バッジ』(1992)で、国策としてベトナム戦争に派兵された主人公が帰国後に心を病んで崩壊する様を描いたチョン・ジヨン監督の作品で、2007年に実際にあった事件が元になっている。チョン・ジヨンは大きな権力をもつ者が個人の尊厳を踏みにじることを許さない監督で、最新作『南営洞1985』(2012)も同じ系譜に属する。

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『折れた矢』 6月15日(土)より、シネマート六本木ほかロードショー

 ゲストとして登壇したアン・ソンギは「監督とは『ホワイト・バッジ』を一緒に作った間柄で、シナリオを渡され出演を打診された。シナリオがとても良かったので翌朝には、やります!と返事をしたが、観客動員350万人というヒット作になったし、何より監督と再び仕事ができたことがうれしかった」とチョン監督への信頼感を表明した。

 同じくゲストとしてトークに参加した韓国映画評論家協会会長ペ・ジャンス氏は、俳優としての顔も持っており、「60本の出演作があるが、アン・ソンギ氏と共演した作品が多いことに誇りをもっている」と発言。本作では新聞社の部長役で出演しているが、実際に新聞社の局長に就いており「本業だったので良い演技を見せることができた(笑)」と語った。韓国映画ファンであれば、氏の出演作を見たことがあるだろう。


『嘆きのピエタ』


 映画祭2日目、『春夏秋冬そして春』の上映後に、キム・ギドクとチョ・ミンス、そして韓国映画評論家協会出版理事カン・ユジョン氏が登壇。JKFF韓国側実行委員長で監督のイ・ミョンセ氏の司会のもと、『嘆きのピエタ』に関するトークが行われた。

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『嘆きのピエタ』 6月、Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開

 高利貸し業者に雇われるガンド(イ・ジョンジン)は、返済不能に陥った零細な工場主たちに障害を負わせ、その保険金で借金を返済させている。表情ひとつ変えず相手を痛めつけるガンドの残虐さを見て、このまま暴力的に終わるのだろうと思っていたが、母と名乗るミソン(チョ・ミンス)の出現で、予想をはるかに越えたスピリチュアルな世界へとストーリーが転換していく。キム・ギドクの進化を感じた。

 「映画の構想をどこから得るのか?」という問いに対して、キム・ギドクは「ニュースをよく見るが、現実を伝えてくれている。私が生きたいと思う世界に、私は生きていないという不安を映画で表現している」と答えた。昨年のニュースで、映画の舞台になった清渓川(チョンゲチョン)の町工場街が写り、財閥系の企業に仕事を奪われて多くの工場が倒産したと報じられたのを思い出した。清渓川は監督が工場労働者として10代を過ごした所だ。母と名乗る女を登場させた理由は「暴力的な人間の前に母親を連れて来て、母の心を伝えたら、どういう姿を見せるかと考えた」ため。スピリチュアルな終焉は宗教色が濃いが、やはり「神の視点で描こうとした」そうだ。ただし、自身の宗教観については「5年前まではクリスチャンとして活動していたが、その後、神はいないと悟ることがあった。生きるということは、神はいないということを悟る過程だと思っている」と大きな変化があったことを吐露した。

 チョ・ミンスをキャスティングした理由を、監督は「エネルギッシュなことは以前から分かっていた。まだ使われていないエネルギーを感じた」と語り、チョ・ミンスは監督の第一印象を「会ってみたら人の匂いが感じられた」と互いを評価した。

 キム・ギドクは低予算・短期間で作品を撮りあげることで有名だが、本作も10日間で撮影した。イ・ミョンセ監督からの「低予算・短期間で大きな成果が出せる秘訣を教えてほしい」という質問に、最初は分からないと戸惑いを見せたが、「シナリオを書く時は心で書き、撮る時も心で撮るようにしている。そうすると心臓の音が聞こえてくる」と応じ、深く納得した観客から大きな拍手が沸き起こった。

 チョ・ミンスは事前にシーン毎の説明をされ、撮影をわずか6日間で終えた。時間が限定されているので「監督は演技者を待ってはくれないが、エネルギーを集めることを教えてもらい楽しかった」と現場の雰囲気を報告。大ヒットした『砂時計』『ピアノ』など、TVドラマで活躍していた彼女が、近年、あまり映画に出演していなかったことに触れ、イ・ミョンセ監督が「韓国映画は男性中心のところがあって…」と言いかけたのを微笑みながら「映画の力は女性です!」と一言で制した。本当に強いエネルギーがある人で、素敵だ。


『Jesus Hospital(原題 ミンク・コート)』


 本作は、シン・アガ監督が、実の祖母が亡くなった時の体験を元に脚本を書いており、植物状態になった家族の延命治療という現代的問題を扱っている。非主流キリスト教信者で母の回復を信じて延命治療の継続を求める次女と、主流キリスト教信者で無意味な延命治療の中止を求める長女たちを、対立的に登場させていることは、キリスト教徒が多数を占める韓国的特色といっていいだろう。対立の根底には、牛乳配達で細々と生計を立てる次女と、彼女を見下してきた長女らの間の長年の確執がある。延命治療をきっかけに互いの真意が明らかになり、さらに状況の変化で真意と思っていたものがねじれていく過程がスリリングに描かれている。両監督の新人らしからぬ老練さに拍手した。

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シン・アガ監督(左)、イ・サンチョル監督(右)

 次女ヒョンスン(ファン・ジョンミン)は母親の命を重視しているが、一方で莫大な延命治療費には無頓着だ。両監督が、いずれの登場人物も長所も短所もある普通の人としてリアルに息づかせ、温かい視線で見つめていることにもたいへん好感がもてた。シン監督がファン・ジョンミンをキャスティングしようと思ったのは、彼女が出演した短編映画を見て「彼女なしではこの作品はできない」と思ったため。欠点も多いが、幼子のような無垢な面を持つヒョンスンの魅力をファン・ジョンミンは体現している。『地球を守れ!』(2003)の彼女も可愛らしかったが、そういう持ち味のある女優なのだろう。


次世代にひきつがれる日韓交流


 会場の中央公民館はレトロな建物で、中に入るとゆったりと時間が流れる。会場内には文化祭のように、映画祭の歴史が模造紙で展示されるなど、素朴な手作り感にあふれている。トークではQ&Aに長めの時間が割かれ、ゲストと多くの観客が直接対話をした。豪華なゲストや話題の社会派作品と共に、このような小さな映画祭の良さにも触れることができた。

 ボランティア・スタッフは下川氏の教え子である芸術文化短期大学の学生が中心で、韓国語通訳は別府にある立命館アジア太平洋大学の韓国人留学生がほとんどだったが、みんな楽しそうに仕事をしていた。スタッフを経験した学生たちは続々と韓国へ留学しているそうだ。JKFFの未来は明るい。


第5回別府八湯★日韓次世代映画祭
 期間:2013年2月22日(金)~2月24日(日)
 会場:別府ビーコンプラザ国際会議室、別府市中央公民館
 公式ブログ http://ameblo.jp/jk-nextfilm/

Writer's Note
 井上康子。評論を読むことが映画を観るのと同じくらい好きなので、日韓次世代映画祭では韓国映画評論家協会の皆さんと交流できたことも収穫だった。最近、最も感銘を受けたのは沢木耕太郎がロバート・キャパの出世作の謎に新説を唱える中で、キャパの心情に迫っていたこと。鋭い人間観察にもとづく彼の評論が大好き。


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