Interview 女優、キム・コッビさん独占インタビュー
Text by hebaragi
2013/3/13掲載
「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2013(以下、ゆうばりファンタ)」にゲストとして参加されたキム・コッビさんに、ゆうばりファンタ、映画、アニメーションの声優、そして今後の俳優活動について伺った。

上映作のタイトルを自筆で書いた黒板の前で。韓日英仏4ヶ国語理解可能だそう
ゆうばりファンタとのかかわり
── 3年連続の参加となりましたが、ご自身にとって参加する前と後とで何か変わったことはありますか?
ゆうばりファンタへの参加がきっかけで、日本の監督やプロデューサーとお会いする機会が生まれました。その結果、日本の映画スタッフと一緒に仕事をする機会が増えたことにとても感謝しています(『蒼白者 A Pale Woman』と『クソすばらしいこの世界』は、ゆうばりファンタをきっかけとして企画がスタートした作品)。
── 日本映画に初めて出演して感じたことは?
制作するシステム自体が韓国映画と違っていて、事前に撮影のスケジュールなどを正確にきちんと決めたうえでスタートする印象です。撮影スタイルがほとんど決められていて、どんな作品・監督でも日本の作品であれば似たようなシステムです。韓国では監督によって撮影のスタイルが全く違います。日本の映画制作のシステムは、まるでマニュアル化されているようにも感じられます。
── キム・コッビさんとしてはどちらのスタイルが仕事しやすいですか?
自分が好きなのは韓国のスタイルですが、日本のスタイルが嫌いというわけではありません。決められたマニュアルどおりのシステムの中でも、監督や俳優同士が交流したり共感したりすることが可能なのが日本のスタイルだと思います。仕事がしやすいのは韓国のスタイルですが。
上映作『蒼白者 A Pale Woman』(常本琢招監督)
── 大阪で15日間撮影したということですが、街についてどんな印象を持ちましたか?
実際に一緒に仕事をしたのが大阪の人というわけではありませんでしたし、滞在中は撮影のスケジュールが立て込んでいて、街の雰囲気を感じる機会はあまりありませんでした。住んだことはないのですが仕事で行ったことのある東京はソウルと同じような大都市で、街を行き来する人々の忙しそうな雰囲気も似ています。大阪は東京より街にざわざわと活気がある雰囲気で、人々も親しみやすい感じがしました。実際に人々と交流したわけではなく自分の印象なので、本当にそうなのかはわかりませんが。
── ティーチ・インで監督から「透明感のあるキム・コッビさんにピストルを持たせたら面白い、という発想がこの役柄につながった」というお話が出ましたが、実際にピストルを持って演技した感想はどうでしたか?
日常生活で銃に触れる機会も全くないですし、韓国は銃器文化がある国でもないので、銃を持つようなアクションシーンをやってみたい気持ちがありました。今回初めて実際に銃に触れたのは興味深い経験でした。
上映作『クソすばらしいこの世界』(朝倉加葉子監督)
── 「ホラー秘宝」の山口幸彦プロデューサーが2011年の「ゆうばりファンタ」でキム・コッビさんと出会ったことがきっかけで出演依頼があり、企画がスタートしたということですが、いわゆるスプラッター映画に出演することに抵抗感はありませんでしたか?
残酷で気持ちの悪いシーンを見るのはあまり好きではありません。でも、俳優としてこのような作品に出演することには興味がありました。初めてでしたので貴重な経験になりました。
上映作『1999、面会~サンシャイン・ボーイズ』(キム・テゴン監督)
── 飲食店で接客する女性(タバンアガシ)の役を初めて演じて、どう感じましたか? 難しかったですか?
特に難しさは感じませんでした。今回上映された他の2作品『蒼白者 A Pale Woman』や『クソすばらしいこの世界』と比べると実際にありえるストーリーだったので共感もしやすく、役に没入することもできました。
── 店で歌うシーンがありますが、歌うのは好きですか? 好きな音楽は?
歌うことは好きで、外国の曲も好きですが、カラオケなどでは韓国の曲を歌うことが多いです。好きなアーティストはたくさんいます。興味を持った曲はインターネットで歌詞を検索して覚えています。日本のアーティストでは「フィッシュマンズ」などが好きです。歌うシーンは楽しく撮影できました。
好きな映画
── ふだん映画を見るのは好きですか? どんな作品、俳優が好きですか?
映画を見るのは好きです。2012年のゆうばりファンタのオフシアター・コンペティションで上映された中では、日本映画『もしかしたらバイバイ!』(高畑鍬名監督)が好きでした。他にもインディーズ系の作品をたくさん見ました。『秒速5センチメートル』(新海誠監督)も好きです。監督では『ジョゼと虎と魚たち』の犬童一心監督、俳優では蒼井優や池脇千鶴が好きです。かわいい女優さんだと思います。
『豚の王』とアニメーション
── アニメーションの仕事を引き受けることになったきっかけを教えてください。
『豚の王』のヨン・サンホ監督が『息もできない』のヤン・イクチュン監督の知人だったので出演を依頼されたのがきっかけです。
── 声優の仕事を実際やってみてどう感じましたか?
実写よりはるかに難しいです。『豚の王』の録音では、成人になってからのシーンでは先に声を入れるので(プレスコ)演技をするようにできましたが、過去の回想シーンはアフレコだったので、口の動きに合わせて声を出すのが難しかったです。
── 今後もアニメーションに出演する予定はありますか?
ゆうばりファンタから韓国に帰ってすぐ、小さな役ですが『豚の王』のヨン・サンホ監督の新作に出演することが決まっています。収録は2月28日からで、映画のタイトルは『サイビ/사이비』。「サイビ」とは韓国語で、必ずしもカルトとは限りませんが、詐欺まがいの新興宗教のことをいいます。そのような宗教をテーマにした作品です。
今後について
── 今まで出演した作品の中で好きなものを挙げてもらえますか。
やはり『息もできない』ですね。それから『三叉路劇場/삼거리극장』(2006年・日本未公開)です。『三叉路劇場』はミュージカル映画で、私にとって初めて主演した記念すべき長編映画なので思い入れがあります。
── これまで様々な作品に出演してきたと思いますが、今後はどんな作品に出演してみたいですか?
明るくて楽しい作品に出てみたいです。今までの出演作品では重くて大変な役柄ばかりだったので(笑)。今後は楽しい作品、たとえばコメディやロマンチックなものに出てみたいです。シットコムはぜひやってみたいです。
── そのような楽しい作品でお目にかかれるのを期待しています。本日はありがとうございました。
取材後記
何度会っても魅力的な女性である。彼女が登場するとステージやインタビュー会場が華やいだ雰囲気になる。また、スタッフや観客に対する丁寧な心遣いも素晴らしい。筆者が彼女とまとまった話をするのは今回が初めて。最初はお互い緊張のあまり、まるで入社試験の面接のようになってしまったが、徐々に緊張もほぐれ、楽しいインタビューになった。様々な質問に真剣な表情で答える一方で、音楽の話や好きな映画の話になるとキラキラと目を輝かせて楽しそうに話す少女そのものの表情が印象に残った。

『蒼白者 A Pale Woman』ティーチインの一幕
『蒼白者 A Pale Woman』上映後のティーチ・インで、常本琢招監督がキム・コッビについて「他の俳優に比べて演技の振れ幅が大きなところに魅力を感じてオファーした。大阪が舞台の日本映画だが、『恥ずかしくて』を見て彼女の美しい韓国語が印象的だったので大部分を韓国語の台詞にした。また、撮影現場の雰囲気づくりの面でも彼女の存在感が大きかった」と話していた。彼女が見せてくれるかわいらしい表情と、スクリーンの中で様々な役柄を演じるときの表情のギャップにはいつも新鮮な驚きを感じる。どんなジャンルの作品にも果敢にチャレンジする演技者としての姿勢は、メジャー指向が目立ちがちな現在の韓国映画界では稀有な存在といえるだろう。ゆうばりファンタ参加のために毎年2月下旬のスケジュールを空けるようにしているという彼女。今後の活躍にも注目していきたい。
ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2013
期間:2013年2月21日(木)~2月25日(月)
会場:北海道夕張市内
公式サイト http://yubarifanta.com/
特集 ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2013
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