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Review 『探偵ヨンゴン 義手の銃を持つ男』 ~B級なんて言わせない?!オ・ヨンドゥの新作は時をかける探偵!

Text by Kachi
2013/3/13掲載



 京都には「あほぶりのかしこ」という言葉がある。いいところのない「あほあほ」、常に知的ぶる「かしこかしこ」、賢そうにみえて肝心なところが抜けている「かしこぶりのあほ」ではなく、知ったかぶりをせず、時機を見はからって自分の意見をきちんと言う聞き上手な「あほぶりのかしこ」でこそあれ、という意味で、一見中身がなさそうだがここぞという時に能力を見せる人の褒め言葉だ。

 2011年、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭ヤング・オフシアター・コンペティション部門グランプリ受賞も記憶に新しい、オ・ヨンドゥ監督の『エイリアン・ビキニの侵略』は、強い正義感を持つ民間ヒーローの男と、彼の純潔な精子を狙う美人エイリアンの攻防戦というムチャな展開に爆笑していると、突然暴力が出現し、そのまま「正義とは何か」という問いの世界へ駆け抜けていく。監督が率いる映像集団「キノマンゴスチン」が手がけたオムニバス作品『隣りのゾンビ -The Neighbor Zombie-』は、ウィルス感染でゾンビ化していく人間たちの心の葛藤や、姿が変わり果てていく愛する者を駆除から守ろうとする者のジレンマにスポットを当てていた。世間には、壮大なテーマを広げておいて結局何が言いたいか分からない「かしこぶりのあほ」映画もある中、オ・ヨンドゥ作品はB級映画とみせかけて実は深く考えさせられる「あほぶりのかしこ」である。

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 そんな監督の待ちに待った新作が『探偵ヨンゴン 義手の銃を持つ男』だ。しがない依頼ばかりの探偵ヨンゴン(ホン・ヨングン)が、謎の女性(チェ・ソンヒョン)との出会いをきっかけに、悪の組織とタイムマシンをめぐる闘いを繰り広げるという予測不可能なストーリー。前2作はほぼ屋内での撮影だったが、本作で「室内を抜け出したかった」と監督は語る。しかし室内どころか、時空まで飛び越えてしまったのだから、どこまで思考のスケールが大きい人なのかと驚かされる。

 「キノマンゴスチン」は低予算映画が売りだが、作品世界は小さくまとまった印象はなく、ぐいぐい観客を引き込んでくる。まず、役者たちの個性が強い。前2作からおなじみのホン・ヨングンは、小動物に似たつぶらな瞳と見た目からは想像できない腕っぷしの強さがさく裂している。今やオ・ヨンドゥ作品のミューズとなったハ・ウンジョン演じる探偵事務所の社長モニカと、ヨンゴンの友人であやしい店を営むチャン(キム・ヒチャン)は、色気と毒気で興を添える。人類の時間と命の征服をたくらむ「ティック タック トゥー」を演じるのは、『プンサンケ 豊山犬』で清廉な韓国情報員だったペ・ヨングン。彼のスタイリッシュだが残忍な悪役の怪演が光っていた。

 武術監督を出演させたアクションシーンは、狭い空間だからこそ緊迫感が生まれ、手に汗握る。CGを駆使した遊び心のある映像、義手やタイムマシンなどの凝ったギミックも楽しく、費用を言い訳にしない映画作りの可能性を感じさせてくれる。思えばあのキム・ギドクも低予算映画の雄だ。

 『エイリアン・ビキニの侵略』は、人間の一生を呑み込んで永遠にめぐり続ける「時」の恐怖が、エイリアンという形でビジュアル化されていた。永劫回帰の中で、人間は石ころのように小さな存在かもしれない。しかし、生きていた証は過去のどこかに残るのではないか…。残酷な時間の流れになすすべなかった『エイリアン~』に対し、『探偵ヨンゴン~』はひとつ答えを出した格好だ。

 韓国映画にSF作品は少ない。そんな中でオ・ヨンドゥは、たった3作でポテンシャルの高いSF映画を見せてくれた。この頭の良い監督が、次はどんな「あほかしこ」を見せてくれるか目が離せない。


『探偵ヨンゴン 義手の銃を持つ男』
 原題 영건 탐정사무소 英題 Young Gun in the Time 韓国公開 2012年
 監督 オ・ヨンドゥ 出演 ホン・ヨングン、チェ・ソンヒョン、ハ・ウンジョン、ペ・ヨングン
 2013年3月23日(土)より、K's cinemaにてレイトショーほか順次公開
 公式サイト http://www.u-picc.com/tantei/

Writer's Note
 Kachi。『エイリアン・ビキニの侵略』を見たのは、今はなきシアターN渋谷。他では見られない映画はすべてここで、というほどいつもユニークで骨のあるプログラムのミニシアターでした。自分も老後はカルト作品の名画座をやりたいと思う今日この頃です。


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