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Review 『王になった男』 ~権力に興味を持たない影武者

Text by 井上康子
2013/1/23掲載



 朝鮮王朝の時代を、史劇の重厚さにシットコムを彷彿とさせるユーモアも交えて描いた大作。実在した15代目の王「光海(クァンヘ)」と、彼の影武者ハソンを、イ・ビョンホンが一人二役で演じ分け、人々が望む王の姿も示して、韓国では国産映画歴代興行成績3位になった。長編デビュー作『麻婆島』を大ヒットさせ、前作『拝啓、愛しています』が昨年末から日本で公開されているチュ・チャンミン監督の最新作。王宮が舞台だが活躍しているのは王族ではなく、王宮で働く人々だ。市井の人を見つめる監督の視線は温かい。

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 光海は虎視眈々と王の命を狙う大臣のパク・チュンソ(キム・ミョンゴン)らの存在に怯えている。毒を盛られるおそれから食事もろくに摂れず、影武者を探し出すように命じる。下層階級に属し、風刺的に光海をものまねして食いぶちを稼いでいたハソンは王と瓜二つで、極秘の代役を務めることが命じられる。

 王とハソンが対面する場面は一人二役の見せ場だが、イ・ビョンホンの演技は鳥肌が立つ程、見応えがある。我が身を守ることしか考えない傲慢な王と恐怖に怯えるハソンは声も顔つきも全く異なり、同じ俳優が演じているとは到底思えない。厳密な言い方をすれば「ハソンが演じる王」も含めると彼は三役を巧みに演じ分けている。

 他の旬の俳優たちの演技も注目に値する。シム・ウンギョンは腐敗した地方官吏の取り立てで家族が離散したために、毒見役の女官になったサウォルを、キム・イングォンは有能で忠実な護衛官ト武将を演じて、各々強烈な印象を残している。また、チャン・グァンは『トガニ 幼き瞳の告発』の加害校長役のイメージを一新し、ハソンが影武者であることを知りながら彼の知恵袋となる、温和なチョ内官を好演している。本作で最も輝いているのは権力を持たず、与えられた使命を懸命に果たすこれらの人々だ。

 ハソンは金のために影武者を引き受けたに過ぎなかった。けれど、私利私欲に走る官吏や大臣たちを目にし、サウォルの苦悩を知り、虐げられている人々を助けたいという思いから、次第に真の王へと変貌を遂げていく。そして、本作はメロドラマでもあり、王妃(ハン・ヒョジュ)に対する恋も切なく描かれている。ハソンはサウォルに対しては優しい兄で、ト武将に対しては思いやりのある上司で、チョ内官に対しては甘えん坊の甥で、王妃に対しては恋する男で、さらにカリスマあふれるリーダーである。トップスターであるイ・ビョンホンの多様な姿が堪能できるのは練り上げられた脚本のおかげだ。

 王が唯一信頼している側近のホ・ギュン(リュ・スンリョン)はハソンを見つけた人物で、彼の教育係である。他人の眼がある時は影武者を上座に座らせ、そうでない時は下座に座らせるのだが、混乱から位置が逆転するというシットコムのような場面が何度も繰り返される。ハソンが大勢の女官の前で排便を余儀なくされることも笑いを誘う場面として描かれた。これらの笑いは、実質的に意味のない権威付けに対する監督の嘲笑だろう。

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韓国版ポスター 左が初期の版、右が後に出た版。イメージが全く異なる。

 本作の韓国でのポスターは当初、黒を基調とした暗いイメージのもので、筆者は「影武者が王の富と権力を欲する作品に違いない」と考えた。その後、ポスターも明るめの色調のものが出たが、実際の内容も、予想を心地よく覆すものだった。ハソンは王が所有しているものを何一つ欲しない。ただ、子どものように好奇心を持つだけだ。これは長編監督デビュー作『麻婆島』で、ロトの当たりくじを求めて島に来た者たちが、農業で自給自足をする、文字通り地に足の着いた生活をする老婆たちに、程なく取り込まれたことを見せて以来、チュ・チャンミン監督が一貫して示してきた思想の表れである。

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日本のチラシは豪華4ページ二つ折り。裏面はイ・ビョンホンの二役を強調している。

 昨年の大統領選では、格差と競争に疲憊した韓国社会がどのようなリーダーを求めるかが話題になった。本作は選挙戦中に公開されていたこともあり、虐げられた人々の思いに応えたハソンを理想のリーダーと見なす報道も見受けられた。

 権威的なことを避け、寡黙に使命を果たす市井の人々を見つめるチュ・チャンミンの作品は、現在の韓国社会が強く求めるものである。彼の活躍は今後も続くだろう。


『王になった男』
 原題 광해, 왕이 된 남자 英題 Masquerade 韓国公開 2012年
 監督 チュ・チャンミン 出演 イ・ビョンホン、リュ・スンリョン、ハン・ヒョジュ
 2013年2月16日(土)より、新宿バルト9、丸の内ルーブルほか全国ロードショー
 公式サイト http://becameking.jp/

Writer's Note
 井上康子。福岡市在住。観たい作品が地元で上映されず、シネマコリアの記事を楽しみにされている方がいらっしゃると伺っています。そういう声を励みに、作品の良さをお伝えできるよう今年もがんばります。





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