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Review 『拝啓、愛しています』 ~チュ・チャンミン監督が描く自立したおとなの愛

Text by 井上康子
2012/12/21掲載



 韓国映画には高齢者を主人公とした作品が少ない。まして、高齢者の愛を描いた作品は少なく、『拝啓、愛しています』はその希有な一作である。長編デビュー作『麻婆島』でたくましく生きるおばあちゃんたちを描いたチュ・チャンミン監督が、本作でも地に足の着いた生き方をする老カップルを登場させており、たいへん見応えがある。出演しているのは映画やテレビでおなじみのベテラン俳優たち。TVドラマでは専ら祖父母としてのみ描かれる高齢者キャラクターだが、本作の登場人物は枯れておらず、家族と依存しあっていない姿は素敵だ。

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 主人公マンソク(イ・スンジェ)は子や孫と仲良く同居しているが孤独である。目覚めが早く、休日の早朝は時間をもてあましている。孫のヨナ(ソン・ジヒョ)が散歩を勧めるが、まだ眠い彼女は付き合おうとはしない。マンソクも自立したおとなとして彼女に同行を無理強いすることはない。年齢が違えば、習慣も興味の対象も異なる。マンソクには同世代の仲間が必要なのである。

 彼はバイクで牛乳配達をしており、バイクがはねた石のせいで転倒した女性を助ける。彼女はリヤカーで廃品回収をしているソン(ユン・ソジョン)で、それがきっかけとなり、二人は互いに好意をもつようになる。駐車場の管理をするグンボン(ソン・ジェホ)は認知症の妻(キム・スミ)を介護している。マンソクは徘徊している彼の妻を見つけたことで、グンボンと友達になる。

 マンソクはテレビのセックスシーンに思わず身を乗り出し、ソンからのプレゼントを有頂天になって見せびらかす、お茶目なかわいいおじいちゃんだ。そんな一面のある彼だが、牛乳配達をしているのは、妻が出していた重病のサインを気にかけず、最後にほしがった牛乳も飲ませることができなかったためで、彼なりの贖罪である。また、ソンを原題『クデルル サランハムニダ / 그대를 사랑합니다 / きみを愛しています』にある「クデ / 그대 / きみ」と呼ぶのは、「タンシン / 당신 / あなた」を亡くなった妻以外には使わないという決意のためで、至って律儀なのである。

 他の老人たちも同様で、グンボンは献身的に妻の介護をし、妻は認知症になっても帰宅したグンボンから彼がその日にしたことを聞くのを心待ちにしている。ソンは若い頃に駆け落ちをしたために故郷に戻る資格がないと思っている。脇役として登場する古物商(オ・ダルス)でさえ、グンボンに廃品の目覚まし時計を頼まれたことを忘れず、使えるものを届けに行く。この作品が穏やかな幸福感に満ちているのはこのような市井の人々の律儀さを監督が丁寧に描いているためだ。

 ソンは名前を付けてくれるはずの父親が出征後、行方不明になったためにソンという姓しか持たず過ごしてきた。「辛抱が得意」という彼女は年下の人間にも敬語を使い、自分の思いを口にできずに生きてきた人だ。マンソクは彼女を「あなただけ」を意味する「イップン / 이뿐」と名付け、彼女に生命を吹き込む。文盲だったイップンは「キム・マンソク」という文字を最初に綴り、マンソクへの思慕を示す。

 名前を得、文字を覚えたイップンは自分の意志を表現できるようになり、大きな決断を行う。彼女の決断はマンソクの希望とは異なるもので、観客にとってもたいへん思いがけない内容である。マンソクは大いに苦悩するが、イップンを愛するがゆえに、彼女の決断を尊重して受け入れる。自分の思いを犠牲にすることをいとわない、自立したおとなの愛の大きさ、美しさに圧倒される。

 韓国映画によくある若者の恋愛映画では描くのが難しかったであろう、おとなの成熟した愛が描かれているのである。


『拝啓、愛しています』
 原題 그대를 사랑합니다 英題 LATE BLOSSOM 韓国公開 2011年
 監督 チュ・チャンミン 主演 イ・スンジェ、ユン・ソジョン、ソン・ジェホ、キム・スミ
 2012年12月22日(土)より、シネスイッチ銀座、シネマート新宿ほか全国順次ロードショー
 公式サイト http://www.alcine-terran.com/haikei/

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Writer's Note
 井上康子。福岡市在住。チュ・チャンミン監督のデビュー作『麻婆島』がアジアフォーカス・福岡映画祭2005で上映された折は堅実な幸福観に心酔してレビューを執筆し、2作目『愛を逃す』が福岡アジア映画祭2006で上映された折はティーチインでの監督の聡明な語り口に感動した。第3作となる本作も最新作『王になった男』も大ヒットしているが、福岡と縁の深い監督の活躍に期待している。


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