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Review 『未熟な犯罪者』『合唱』『最悪の友達』 ~葛藤と希望、青少年を見つめる3監督の視線

Text by Kachi
2012/12/18掲載



 今秋に開催された第25回東京国際映画祭、その提携企画コリアン・シネマ・ウィーク2012とフォーカス・オン・アジアでは韓国作品が12本上映されたが、とりわけ青少年をテーマにした良作が目についた。

 東京国際映画祭・コンペティション部門で審査員特別賞と最優秀男優賞(ソ・ヨンジュ)を獲得した『未熟な犯罪者』(2012年、原題 犯罪少年)。ジグ(ソ・ヨンジュ)は、根は優しい子だが、動機も手口も稚拙な犯罪を繰り返し、少年院に送られる。退院を控えた日、死んだと聞かされていた母ヒョスン(イ・ジョンヒョン)が実は生きていることを知る。生まれて初めての親子生活に戸惑いながら、二人は少しずつ心を通わせていくのだが…。

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『未熟な犯罪者』

 17歳でジグを産み、すぐに失踪したヒョスンは、韓国の理想的良妻賢母像を吹き飛ばす、見た目も行動も子供のような母親。ジグを引き取ったのも思いつきの感が否めない。しかし、若い彼女が苦しい時に、誰にも心から頼れなかった孤独はいたたまれない。

 カン・イグァン監督はティーチインで、1997年のアジア通貨危機以降、韓国では離婚が増え、見捨てられた子供たちが行き場を失い、軽犯罪を繰り返している現状を語った。そして、多くが平凡な子であるにもかかわらず、少年犯罪をことさら特異で猟奇的なものとしか報道しないマスコミや、触法少年(刑罰法令に触れる行為をした少年)を見放してしまう社会へ疑問を投げかけた。

 若年層のセックス・妊娠・自殺や犯罪といった暗部が描かれた『未熟な犯罪者』だが、監督は問題を感情的に描くことを避けた。気まずさがにじみ出ていた親子の再会シーンが象徴するように、白々しい感動も演出しない。好演したソ・ヨンジュが14歳とジグ世代だったことも作品にリアリティを与えていた。


 コリアン・シネマ・ウィーク2012で上映された『合唱』(2012年、原題 ドゥレソリ)は、これまでの学園映画とはひと味違う傑作だった。

 伝統音楽の経験だけで合唱に挑んだ芸術高校の合唱サークル「ドゥレソリ」の生徒役に、実際の創立メンバーの後輩たちを起用したのだが、監督は演技経験のない彼女らに過度な演出をしなかった。スクリーンに映し出された学生の悩みや喜びが本物で、自然と思春期の頃の自分に重ねられた。

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『合唱』

 インタビューでチョ・ジョンレ監督は「自殺率の高い韓国にあって、とりわけ若者の自殺が増えつつあるのに社会は解決策を考えていない」と憂いを口にした。合唱団の中には、国楽の担い手として将来を期待する親からのプレッシャーに悩み、いら立ちから非行に走る子もいたが、そんな青少年たちの心を勉強以外に熱中できることで解放してあげたいと考えたのだ。「ドゥレソリ」の一人アルム(チョ・アルム)の「自分の意志で行動を起こすことが嬉しい」というセリフには、夢を持てたことへの喜びが言葉以上にあふれていた。


 フォーカス・オン・アジアでは、ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2012から選りすぐりのショートフィルムと国際映画祭の常連監督による最新ショートフィルムが上映された。女性監督ナムグン・ソンの短編『最悪の友達』(2009年)は現代の青少年をとりまく状況を端的に描写した作品だった。

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『最悪の友達』

 女子大生インソン(ペ・ヘミ)は、初体験の相手チュンギ(キム・スヒョン)が兵役検査でアメリカから帰国することを知り、彼ともう一度セックスしようと画策する。二人の奔放な性とインソンの冷静でシニカルな語り口には面白味もあるが、チュンギはいつも思い詰めた様子で、女友達ノバク(キム・ウンミ)は9回の自殺未遂をし、足に障害を持つ。

 影を落としているのは、物を買い与えるだけや過干渉だったりする親との関係だ。チュンギのアメリカ行きも、悪い友達を遠ざけ優秀な人間にするため、母親が彼の意志も聞かずに計画したことだった。だがチュンギは結局アイデンティティを失い、どこにも居場所が見つけられなくなってしまう。彼の「アメリカも兵役も嫌だ」という言葉には、わがままではなく、親にも友達にさえも思いを分かってもらえない寂しさがあった。

 アニメのコスプレ会場に3人で迷い込んだ時、チュンギの表情が突然晴れる。「ドゥレソリ」のメンバーのように、誰の押しつけでもない自分の好きなことに夢中なコスプレイヤーたちに、自分の理想を見たのかもしれない。


 「現代の高校生を描いた映画だと、明るい面ばかりを捉えた作品か、逆に問題を含んだ非常に陰鬱な作品かで、ありのままの姿を捉えてないことを残念に思っていた」とは『合唱』チョ・ジョンレ監督の弁。

 『合唱』は夢を持つことの素晴らしさがストレートに出ていて清々しかったが、監督が若者の葛藤を認めていたことが、どこか抑制の効いた作りにさせたのだろう。他方、『未熟な犯罪者』と『最悪の友達』も、シリアスな問題を提起して終わりではない。『未熟な犯罪者』のラストシーンのほの暖かさには、良い親子とはいえない二人でも「どうか離れないで」と願うばかりだ。そして、『最悪の友達』のインソンはノバクの10回目の自殺を必死に止めた。

 3作品ともに共通していたのは、ネガティブなことを抱えていても、つまずいても、もう一度希望へ進もうとしている人の背中をそっと押してくれる点だ。「凍ったら、溶かせばいい」。外に干して凍ってしまった洗濯物を取り込む母ヒョスンの何気ない一言が、心に残った。


第25回東京国際映画祭
 2012年10月20日(土)~10月28日(日)@TOHOシネマズ六本木ヒルズほか
 公式サイト http://2012.tiff-jp.net/

コリアン・シネマ・ウィーク2012
 2012年10月20日(土)~10月23日(火)@韓国文化院・ハンマダンホール
 公式サイト http://www.koreanculture.jp/

「フォーカス・オン・アジア」&ワークショップ ショートショートフィルムフェスティバル&アジア
 2012年10月25日(木)~10月28日(日)@東京都写真美術館ホール
 公式サイト http://www.shortshorts.org/

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Writer's Note
 Kachi。1984年、東京生まれ。図書館勤務。学園青春ものや熱い友情ものといった、過剰に泣かせようとする映画が大の苦手。ですが、今回レビューした作品はドライといえるほど抑えた描き方をしつつ、きっちり感動させてくれました。


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