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Interview 『合唱』 ハム・ヒョンサン先生&チョ・アルムさん

Text by mame
2012/11/18掲載



 「2012大阪韓国映画週間」(10月26日~10月30日@シネマート心斎橋)での上映にあわせて、『合唱(原題 ドゥレソリ)』に学生役として主演したチョ・アルムさん、合唱団の先生役として出演するほか、音楽監督も務めたハム・ヒョンサン先生が来阪しました。

 国立伝統芸術高校で結成された「ドゥレソリ」(「田植え歌」の意)という合唱同好会について描かれた本作は、なんといっても実際に韓国の伝統音楽(パンソリ・民謡など)を学ぶ学生が演じる合唱シーンの素晴らしさに圧巻のものがあります。上映後の舞台挨拶では、現在は大学生となったアルムさんが民謡を披露してくれ、会場も大いに沸きました。


劇中、おばさんの前で歌った民謡を披露するチョ・アルムさん
2012年10月27日(土)、シネマート心斎橋にて

 大阪の印象は「自転車が多い!」というアルムさん、「(会場周辺のアメリカ村の雰囲気が)ソウルの弘大(ホンデ)に似ている!」というハム先生に、様々なエピソードをお伺いしました。



インタビュー 2012年10月27日(土)


── 実際に学生生活を送る中での撮影でしたが、出演しようと思ったきっかけは何ですか?

アルムさん:私は国立伝統芸術高校(ソウル国楽芸術高等学校が2008年に国立化)の2期生ですが、「ドゥレソリ」は私の1学年上の1期生の先輩の代に結成された合唱団です。オーディションは希望者ではなく、合唱団全体に命じられました。内容はカメラ・テスト、演技、歌だったのですが、最終的に私の雰囲気が主役の先輩と似ていて、同じ民謡専攻ということもあって、決定しました。主役に決まった時は正直負担に思いました。

── 学生生活を送りながらの撮影は大変だろうし、負担というのも理解できる気がします。実際の撮影スケジュールはどんな感じだったのですか?

ハム先生:撮影期間はほぼ2ヶ月だったのですが、ほとんど土日と放課後でした。学生全員が集まるシーンは学校側と相談して撮影期間をもらい、2日間で集中して撮りました。そうなってくると台本の順番通りには撮れなかったので、感情の流れを表現するのが難しく、改めて本物の俳優さんはすごいなと思いました。

── 劇中で演奏されている合唱曲は元々あったものですか? それともこの映画のために作られたのでしょうか?

ハム先生:映画に出てくる合唱曲は全部で3つあるのですが、「引越しの日」という曲は元々、合唱団で歌われていた曲です。あとの2つはシナリオをいただいてから新しく作りました。実はスケジュールの関係で発表会のシーンが最初の方に来たので、あとの2曲は一晩で作詞・作曲しなければなりませんでした。あまりに時間がなかったので焦りましたが、驚くほどスムーズに曲ができあがりました。なんというか、それは簡単にできたというよりも、今まで「ドゥレソリ」であった出来事を考えると、自然と曲や詩が溢れ出てくる感じでした。当初は時間をかけてゆっくり曲を作りたいと思ったのですが、今考えてみると一気に作り上げてしまう事が思わぬ功を奏した気がしています。

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ハム・ヒョンサン先生

── 民謡・パンソリなどの伝統音楽と合唱の融合というのは今まで見たことがなく、大変新鮮に聴こえました。このような音楽ジャンルは以前からあったのでしょうか? また、アルムさんがやっている民謡と、スルギさんがやっているパンソリの違いについて教えて下さい。

ハム先生:今まで民謡から合唱曲を作るという歴史はあったのですが、民謡の歌い手がそのままの歌唱方法で合唱をするというのはこの合唱団が初めてのような気がします。実際「ドゥレソリ」を結成した当初は歌謡曲を歌う合唱団を作るつもりだったので、こんな展開になるとは私も驚きました。その辺りのエピソードは映画と同じですね。民謡はどちらかといえば歌謡に近く、歌詞に1番、2番といった流れがあります。パンソリは全体でひとつの話になっているので、正式に歌うと4時間、5時間ぐらいの長さになったりします。また、民謡が京畿道発祥に対して、パンソリは全羅道発祥で少し方言が入っていたりして、例えば「アリラン」にしても、民謡とパンソリでは発声方法が違いますね(民謡式アリランとパンソリ式アリランを実演してくれましたが、パンソリのほうがこぶしの効いた歌い方に感じました)。

── 映画の反響で「ドゥレソリ」の志望者が増えたりしましたか?

アルムさん:志望者はもちろん増えたのですが、公演依頼が増えました。私はもう卒業してしまったので、今の「ドゥレソリ」は私の後輩たちが中心になっているのですが、ただ、前は同好会活動だったはずが、公演が増えたことで練習や、皆で以前のように集まって喋ったりというコミュニケーションの時間がなくなり、少し大変になった気がします。

ハム先生:元々、同好会というのが皆で集まったりする場として機能していたはずなのに、そうなってしまったのは少し残念ですね。

── 監督の印象はいかがでしたか? また、友達との仲良さそうなシーンが印象的でした。撮影中のエピソードを教えてください。

アルムさん:大変でしたよ~(苦笑)。何が大変って、こちらは演技するのも初めてなので、撮り直しの時に「ここがダメだから、もう一回やり直そう!」と言われたら納得できるんですが、監督の場合「良かった! ん~すごく良かったんだけどもう一回やろう!」と言われるので結構混乱しました! 映画ではアルム、スルギ、ウニョンの3人組が出てきますが、これはモデルとなった先輩たちも3人組だったという設定から来ています。共演するまでは、特に仲が良いというわけでもなかったです。実は、私たちは1歳ずつ歳が違うので、思わず演技中に敬語が出てしまったりして、NGが出たりしました。

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主役の3人組:左からウニョン、スルギ、アルム

── ハム先生がクビになった時にヤケ酒を飲みながら「留学したときに、ルームメイトから『なぜ韓国人なのに自分の国の音楽を学ばない?』と聞かれて恥ずかしくなった」と言う台詞には、とても共感しました。

ハム先生:実はあれは私ではなく、監督の知り合いの方が実際に経験されたことで、その方は帰国して実際にサムルノリを学ばれたそうです。私は国楽専攻なので、西洋音楽専攻で留学経験がある、というのは実はフィクションです。この映画を作るにあたって資金集めをした際に「そのほうがドラマチックな展開になるかな?」と話しあって、西洋音楽の先生が国楽を学ぶ生徒と衝突しながら、合唱を完成させていくという展開になりました。

── アルムさんが国楽を学ばれたきっかけは何ですか? 今回は国立伝統芸術高校が舞台ですが、国楽は若者の間でどのように受け入れられているんでしょうか?

アルムさん:小学校の課外授業で国楽を学んだことがきっかけで、民謡を習い始めました。若い人の国楽に対する反応ですが、好き嫌い以前に、関心がないというのが現実ですね。私たちは学校で学んでいるので身近ですが、普通の若者の間では触れる機会がないので。

ハム先生:そうですね。舞台となった国立伝統芸術高校も、まだ歴史が浅いのですが、そもそもこういう高校を作って、伝統芸術を残す支援を国がしなければ、なくなってしまうのでは?という危機感があります。ですので、今回のように映画を作ったりして、面白く見せようという試みが増えれば、伝統芸能に対する興味も深まるのではないでしょうか。そういう意味では、日本では吉田兄弟など伝統楽器を使ったミュージシャンが一般に周知され活躍しているので、羨ましいなと思っています。

── アルムさんは現在大学1年生と聞きましたが、学校はどうですか? 将来の事を考えたりしますか?

アルムさん:そうですね。1年目なので、まだ大学の雰囲気に慣れてない感じですね。将来の事ですか…。頑張って歌を続けたいですが、それだけで生活していくのは難しいので、歌だけでなく、何か別の道も見つけた方が良いのかな?と思ったりしています。

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チョ・アルムさん

ハム先生:私は現在36歳なのですが、まだ独身です。「音楽と結婚した」と周りには言っていますが(笑)。やっぱり音楽だけで生活していくのは心もとないし、結婚するとなるとそれなりに責任も伴いますよね。ただ、芸術の道に進むという事で、生活していくのは大変というのは周知の事実なので、そんな中でも心は豊かでありたいと思っています。そういったところをこの映画から感じてもらえると、とても嬉しいです! 昨日・今日と大阪に滞在していて思ったのは、大阪ではストリート・ミュージシャンの歌にも、それなりに耳を傾ける人がいるところが素晴らしいな、と思いました。韓国の場合は、結構通り過ぎてしまう人が多いので。私たちも「ドゥレソリ」で大阪で路上ライブをしたら、盛り上がりそうなので、是非やってみたいと思っています!(笑)



取材後記

 上映終了後の舞台挨拶では、皆さんアルムさんの歌を聴きたくて仕方ない様子で、1日目は司会の方から、2日目は観客から「早く歌って!」とリクエストが出て、アルムさんははにかみながら民謡を披露してくれました。

 ティーチインのエピソードですが、「伝統芸術を学んでいる高校生」というイメージから想定するよりも、自由な学生生活を送っている姿に皆さん驚きを覚えたようです。観客の女性の方から「大学入試の時も茶髪で行っていたけど大丈夫なの?」という質問が出たのですが、「本当は大丈夫じゃありません! それは撮影の都合上、髪を染めて戻してという時間がなかったので…」とハム先生が慌てる一幕もありました。

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 取材ではアルムさんに将来について伺いましたが、映画はここで終わっているけれど、出演者にはそれぞれのその後があり、大学生となった今が一番迷ったりする時期なので、「他人に聞かれても『頑張ります』としか言えないよなあ…」と無責任な質問をした自分を反省しました。

 監督には、その後の彼女たちを追って第二弾、第三弾と続編を作っていくアイディアもあるようですが、観てみたい!と思う一方で、それはそれで大変難しい現実を映した映画になると予想できるのもまた事実です。『合唱』という映画は多くの人の心を動かしましたが、それで彼女たち全員に音楽のプロへの道が拓けるわけでは決してなく、迷いながらも希望を持って進んでいくしかない、という芸術家の悩みは古今東西共通なのだと再確認しました。

 「国楽と合唱の融合」というと表現はちょっと堅苦しくなりますが、聴いた瞬間、ざわっと鳥肌が立つあの感覚、さらに例えるならば「無名のミュージシャンのライブに来たら大当たりだった!」という感覚も味わえるこの映画。彼女たちの生み出す稀有なハーモニーを聴いてしまうと「是非これからもライフワークとして歌を続けていってほしい!」と願ってしまうのは間違いないので、プレッシャーにならないよう「ドゥレソリ」メンバーの今後を見守っていきたいと思います。


2012大阪韓国映画週間
 2012年10月26日(金)~10月30日(火)@シネマート心斎橋
 公式サイト http://osaka.korean-culture.org/

『合唱』
 原題 ドゥレソリ/英題 DURESORI : The Voice of East/韓国公開 2012年
 監督 チョ・ジョンレ 主演 キム・スルギ、チョ・アルム、ハム・ヒョンサン
 コリアン・シネマ・ウィーク2012、2012大阪韓国映画週間上映作
 韓国版公式サイト http://www.duresori.co.kr/

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Writer's Profile
 mame。1983年、岡山県生まれ。2004年、韓国・弘益大学美術学部に交換留学。韓国映画は留学を決めるきっかけにもなった。専攻は木版画。現在は会社勤めをしながら作品制作を続けている。


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