HOME団体概要support シネマコリア!メルマガ登録サイトマッププライバシー・ポリシーお問合せ



サイト内検索 >> powered by Google

■日本で観る
-上映&放映情報
-日本公開作リスト
-DVDリリース予定
-日本発売DVDリスト
■韓国で観る
-上映情報
-週末興行成績
-韓国で映画鑑賞
■その他
-リンク集
-レビュー&リポート
■データベース
-映画の紹介
-監督などの紹介
-俳優の紹介
-興行成績
-大鐘賞
-青龍賞
-その他の映画賞


Review 『高地戦』

Text by Kachi
2012/10/14掲載



 戦争映画というものは大体悲しくできているものだが、わけても韓国で数多く作られている朝鮮戦争の映画は悲惨だ。同じ民族同士が北と南に分かれて血を流し合い、勝利も敗北もないままの「終戦」ではない「停戦」。そんな話を、戦線での絆やヒロイズムで語られても…と、本作が“朝鮮戦争の停戦協定成立から発効までの12時間”が題材と聞いてためらいつつも、シン・ハギュンが出演していることを頼みに試写へ向かった。ところが… 語弊のある表現になるが、これが実に面白かったのだ!

koutisen.jpg

 朝鮮戦争末期の1953年。韓国軍・防諜隊中尉ウンピョ(シン・ハギュン)は、死んだ中隊長の体から味方の弾丸が発見されたこと、そして敵軍が韓国軍を経由して手紙を出していたことに端を発した内通の疑惑を調査するため、激戦地エロック高地へ送られる。彼はそこで開戦直後に生き別れた親友スヒョク(コ・ス)と再会。しかし、お互いの無事を喜ぶ間もなく、泥沼の戦局は続く。7月27日午前10時、ついに停戦協定が調印され、平和な日常が戻るかに見えた。だが協定が効力を持つのは、その日の夜10時からだった…。

 誰もが「いずれ終わる」と口にするのに、その実、誰にも終わりが見えない戦況の中、目の前にいる敵を機械のように殺すことが兵士の体に染み付いていく。戦場で正気を失わずに生きるには、身も心も痛みを感じないようにするほかない。気弱で心優しいクリスチャンだったスヒョクが、勇猛だがどこか冷酷で、「殺して下さい」と神に祈るような青年に変わったことがそれを物語っている。そんなスヒョクに「真相を突き止めてもお前は何もできない」とはき捨てられても、「でもまだ帰れない」と冷静に言うウンピョ。彼はいつもチョコレートを持っていて、中隊の兵営で誰かが保護している、戦争で腕を失くした民間人の少女にそっと渡す。一方、スヒョクは「おじさん、私の腕は大きくなったら生えてくるよね?」という少女に「生えてくるわけないだろ! お前は一生腕なしだ!」と言い放ち、ウンピョに殴られる。

 まだ人間の優しさ、倫理を忘れていないウンピョは前中隊長の謎の死を、どんな状況であれ「殺人」とこだわるが、命令により殺人も正当化される戦争にあっては意味を持たず、真実は最後まで闇の中だ。一方で、明らかになった内通の一部始終。奪いまた奪われるを繰り返す塹壕内の収納庫で起きた「内通」というよりハプニング的「交流」には、「こんなことあり得る?」と戸惑いつつも、温かさとおかしさに少しほっとする。

 前作『義兄弟 SECRET REUNION』で、北朝鮮の工作員と韓国の国家情報員の奇妙な友情を描いたチャン・フンが、「スペクタクルを消費するための戦争映画は撮らない」「戦争で命を落とした人々を単なる感情的な装置としない」(プレスインタビューより)という意気込みで制作した『高地戦』は、高地での激烈な戦いと、朝鮮戦争完全停戦までの12時間の死闘というほとんど記録が残されていない戦いに説得力を持たせるべく、戦闘シーンでのヒューマニスティックな描写を極力避けリアリティに徹している。寄りと俯瞰を上手く使った険しい山岳地帯での銃撃シーンでは、戦いそのものをきちんと見せていて迫力がすさまじい。戦争の恐ろしさを伝えるのは、どれだけ真に迫って凄惨さを描写できるかなのだ。

 シン・ハギュンやリュ・スンスら定評のある演技派を揃えつつ、『ポエトリー アグネスの詩』で同級生への性暴行の加害者という難役をこなしたイ・デビッドがこの戦争を象徴する少年兵ソンシクを、そして本作で韓国映画評論家協会賞男子新人賞を獲得したイ・ジェフンが、想像を絶するトラウマを背負いひたすら戦い続けるイリョン大尉を熱演している。人民軍を率いるジョンユン中隊長(リュ・スンリョン)は、強いリーダーシップと懐の深い姿でどこか父親を彷彿とさせ、韓国軍に感情移入して見ていたはずなのに、討つべき敵のその気高さにほれぼれしてしまう。

 アクション担当のホン・イジョンが「軍隊にもう一度行ってきた感じがしたろう」(プレスインタビューより)と出演陣をいたわったロケでは、銃を構えながら急な山を登り、走り、這うための厳しい訓練が、主要人物だけでないキャスト全員に課せられたそうだ。コ・スはこの作品の撮影を「私自身の高地戦体験」(プレスインタビューより)と振り返ったが、役者たちが体を張ったことが作品に厚みを持たせた。

 兵営でのつかの間の憩いの時、ソンシクは当時の流行歌「戦線夜曲」(注)を歌う。きっと韓国軍にも人民軍にも、その心の奥底に響き渡っていたであろうこの曲。「泣ける」「感動する」なんて言葉を安易に寄せ付けない作品なのに、涙が止まらなかった。

(注)パク・チュンソクが作曲し、演歌歌手シン・セヨンが歌った戦時中の流行歌。朝鮮戦争停戦2年前の1951年に発表され、以後長年にわたり様々な有名歌手がカバーして歌い継がれてきた。


『高地戦』
 原題 高地戦/英題 The Front Line/韓国公開 2011年
 監督 チャン・フン 主演 シン・ハギュン、コ・ス、イ・ジェフン
 2012年10月27日(土)より、シネマート新宿、シネマート六本木ほかにてロードショー
 公式サイト http://www.kouchisen.com/

Reviewer's Note
 Kachi。1984年、東京生まれ。図書館勤務。イリョン大尉役のイ・ジェフンは、キム=チョ・グァンス監督の短編『ただの友達?』でゲイの青年ソクを可愛く演じていました。『高地戦』では一転、ハードなシーンもあるリーダー役を迫真の演技で熱演。自分と同世代のこれからが楽しみな俳優の登場に嬉しさを覚えたのですが、なんと今月25日に入隊とか。このシチュエーション、韓国映画ファンの宿命ですね…。


>>>>> 記事全リスト


関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント


Copyright © 1998- Cinema Korea, All rights reserved.
Powered by FC2 Blog