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Interview 『ダンシング・クイーン』 イ・ソックン監督

Interviewed by 井上康子
写真提供:映画祭実行委員会事務局
2012/10/10掲載



 アジアフォーカス・福岡国際映画祭2012の公式招待&オープニング作品『ダンシング・クイーン』は、今年韓国で400万人を動員したヒット作だ。中年夫婦が夢を追う姿を見せて希望を与えてくれ、ソウル市長選に出馬した夫の演説会、歌手としてデビューした妻の舞台と花のある見せ場が多く、オープニング作品として面目躍如たるものがあった。9月14日の野外でのオープニング上映時は、笑って泣いてと観客の反応が大変良く、一時小雨だったにもかかわらず退席する人が出なかったことからも、観客が作品に没頭していたことが実感できた。なお、その後も人気は上々で、映画祭で行われた観客投票で第2位になり、今年から設けられた熊本市賞(熊本市から都市連携の一環として提供される)を授与されている。

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オープニング上映で挨拶する監督

 イ・ソックン監督は物静かで、言葉を選びながらまじめに話をする方で、友人からつけられたあだ名は「公務員」だそうだ。監督が作品について、静かだが思いをこめて語ってくれた。


配役名もファン・ジョンミンとオム・ジョンファ

── 夫婦を演じたのは、アジアフォーカス2006で上映された『私の生涯で最も美しい一週間』でもカップルとして登場したファン・ジョンミンとオム・ジョンファで、実生活でも友達同士だという二人が息の合った演技を見せている。映画では異例のことだが、二人は俳優名のまま登場している。キャスティングできるとは決まっていなかったにもかかわらず、監督が脚本の段階から二人が演じることをイメージして執筆したためだと聞いた。監督が二人に寄せる思いの強さが伺えるが、二人をキャスティングした理由は何だったのだろうか。

ファン・ジョンミンは、純粋で田舎者のようなところがあるけれど、ある瞬間ものすごくカッコいい人で、最後にカリスマ性のある政治家の姿を見せてくれると思った。コミカルな演技とシリアスな演技の両方が必要で演技力に定評がある彼が適していた。政治家の姿になった時に「正しい価値観により正しい選択ができる人」というイメージを持っている人だとも思った。

オム・ジョンファは、完璧な歌手の姿を見せたかったので、実際に歌手であり、女優である彼女が良かった…、という以上に代わりができる人はいなかったといってよい。ファッション・アイコンとしての存在感があり、この作品で必要な普通の主婦の姿が表現できるか心配したが、映画『ベストセラー』の彼女の演技を見て、母親役もこなせる二つの面を併せ持った人だと思った。昨年、手術を受け、体調が万全でなかったので一部代役を立てようとしたが彼女とあまりにも差があり、カリスマ性をもった女優だと感心した。


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撮影:井上康子


民主主義への思い ~正しい価値観で正しい選択をする

── ジョンミンは1982年に釜山からソウルの小学校に転校しジョンファと出会う。この二人の出会いの場面では、教師による席決めにジョンファが「民主主義に反する」と抗議する。そして、10年後の再会の場面では、大学生になった二人は民主運動のデモに出くわし、鎮圧隊に対してギブアップのお手上げをするのだが、その行動が「民主主義万歳を叫んだ」と勘違いされ、マスコミから称賛を受ける。このように民主化に伴った犠牲の面を強調せず、コメディタッチで描いていることは新鮮で驚きだった。従来の政治家の姿を風刺を利かせて見せ、貧乏弁護士のジョンミンが新たな政治家になろうとする姿にも共感できた。

1982年の民主主義の高まりを描いたのは、子どもの視線から民主主義を描きたいという意図があった。コミカルな描き方のみになったのが少し残念。時間の都合でカットせざるを得なかったが、貧乏なジョンミン一家が狭い部屋にいて、誰かがオナラをしたのがジョンミンのせいになり、父親が「罪のない人を救うのが民主主義」というのを本当は入れたかった。民主主義に込めたのは、主人公が正しい意識を持っているという思いであって、(市長選が題材になっているが)政治的メッセージを強調しようとしたのではない。ジョンミンは貧しい家庭で育って劣等感を持っている人。そんな普通の市民であり、最初から正義を主張していた人ではなく、決意して正義を主張するようになる人。民主主義というのは、こういうルールであるという人と人との約束であって、いろいろな人の意見を平等に尊重し、正しい選択をしなくてはならないもの。正しい価値観をもって正しい選択をするという思いを民主主義に込めた。


女性が共感する作品 ~主婦の自己実現

── 歌手になりたい妻と市長になりたい夫の間で葛藤が生じ、市長選を前に、夫は妻に「家でおとなしくしていろ!」と言い放ったものの反省し、お互いの夢を尊重し合うという和解が行われる。監督の話では、夫が反省し妻の夢を尊重するということも監督の言った「正しい判断」であり「民主主義」に含められるようだ。さて、現在の韓国では、この映画のように妻が自己実現しようとすることは許容されるのだろうか?

夫婦の葛藤をどう描くかがポイントだった。シナリオの段階で一番悩んだのが、妻がダンス歌手になりたいということが市長選を控えた夫の政治的な致命傷になるかどうかだったが、現在の韓国社会では問題にならないと判断した。むしろ、妻が「歌手になりたい」と言っているのに、夫が反対したら、その夫は観客に受け入れられないと判断した。それで、妻が独身だと嘘をついて歌手活動をしている、さらにマネージャーとの不倫が噂されているという設定にし、そのような背景もあるから夫が「反対する」形にした。今年、韓国では主婦のための歌の勝ち抜きオーディション番組『スーパー・ディーバ2012』の放送が始まった。社会の動きが変わって来たと思うが、現実的には韓国も日本も、育児中の主婦が夢を追うのは難しい状況にある。女性が韓国社会で生きるのは大変で、番組に出る人も、勝ち抜きたいというより、自分のこれまでの話をして共感を得たいという思いを強く持っている。この映画祭でも、女性観客から「私もまた仕事をしようと頑張っている」という声が聞けた。女性たちがこのように共感してくれるのは嬉しい。


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家族で熊本市賞を受賞

 本作は、夫婦の愛を中心にし、家族愛も描いている。熊本市賞受賞時も夫人とお嬢さんと共に壇上に立ち、監督自身が家族を大切にしている姿を見せてくれた。


『ダンシング・クイーン』
 原題 ダンシング・クイーン/英題 Dancing Queen/韓国公開 2012年
 監督 イ・ソックン 主演 ファン・ジョンミン、オム・ジョンファ
 アジアフォーカス・福岡国際映画祭2012公式招待作品
  公式サイト http://www.focus-on-asia.com/
 2012大阪韓国映画週間(10/26~10/30@シネマート心斎橋)上映作
  公式サイト http://osaka.korean-culture.org/
 福岡×釜山 日韓シネマ・エクスチェンジプロジェクト第1弾として2012年12月8日(土)より、T・ジョイ博多にて2週間限定公開
  公式サイト http://www.t-joy.net/cinemaex/

特集 アジアフォーカス・福岡国際映画祭2012
 Report アジアフォーカス・福岡国際映画祭2012
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