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Report 福岡インディペンデント映画祭(FIDFF)2012

Reported by 井上康子
写真提供:FIDFF2012
2012/10/1掲載



福岡インディペンデント映画祭とは?


 福岡インディペンデント映画祭2012(以下、FIDFF)が、9月6日(木)から11日(火)まで福岡市内2会場で開催された。福岡市で毎年開催される「アジアフォーカス・福岡国際映画祭」(以下、アジアフォーカス)の協賛企画であり、おおまかな区分であるが、アジアフォーカスがプロによる長編を上映するのに対して、若い作り手の育成や交流を目的としたFIDFFでは、若手作家の作品を上映している。2009年にスタートしたばかりの若い映画祭で、出品者の応募料金で運営費の一部をまかなうという運営スタイルを取っており、若手作家の「見てほしい」というニーズに応えている。

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 第1回FIDFF2009は、自主映画制作団体作品を中心に約60作品が福岡市総合図書館の会議室で上映され、関係者を含め約600人が来場するというスタートであった。第2回FIDFF2010は、コンペ部門が始まり、会場を福岡アジア美術館あじびホールに移し、99作品が上映され、来場者も1,000人を越えるようになった。昨年第3回は126作品が上映され、来場者は前年の2倍以上、2,000人を越えている。第4回にあたる本年は、入場者増に対応するため、あじびホールに加えリノベーションミュージアム冷泉荘ニコイチも会場になり、コンペ部門に応募された86作品など、約160作品が上映された。コンペ部門は単に作品の優劣を競うのでなく「応援」の意味をこめるという趣旨から賞が増やされ、犬童一心監督を招いてグランプリ作品の講評をするカフェトークも行われている。


釜山の映画団体・映画祭との連携の歴史


 FIDFFは海外の映画祭との連携・交流も目的にしている。スタート時より福岡の姉妹都市である釜山の映画祭の出品作品を欠かさず上映し、FIDFF上映作も釜山で上映するというように相互の連携を深めている。

 FIDFF代表を務める西谷郁(にしたに・かおる)氏は、アジア映画を専門とする研究者で、2005年からの釜山での調査結果をアジアフォーカス2006で「釜山国際映画祭の魅力とは?」と題して発表している。また、2007年にはアジアフォーカスの梁木靖弘ディレクターが釜山アジア短編映画祭(以下、BASFF)に審査員として招かれ、同年のアジアフォーカスではBASFFの作品が特別プログラムとして上映された。このような学術的交流・映画祭間の交流実績がFIDFFに引き継がれ、釜山の映画祭の作品上映が可能になっている。

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本年の韓国からのゲストたち 左端がキム・イソク釜山独立映画協会会長

 第1回FIDFF2009では、BASFFと「人材交流と作品の相互上映」を約したMOU(組織間の合意覚書)を締結して姉妹映画祭となり、BASFF特別協力により同映画祭の8作品が上映された。

 第2回FIDFF2010では、釜山国際短編映画祭(旧BASFFが名称変更/以下、BISFF)との共同制作プロジェクトにより、韓国の女優を招き日本のスタッフにより制作した『ダイエットのうた』(橘剛史監督、YouTubeで鑑賞可)が上映され、その経緯がカフェトーク「釜山と福岡の映画交流 ~作品の交換上映から共同制作へ~」で語られた。また、「BISFF&Indi Busanセレクション」としてBISFFとメイド・イン釜山独立映画祭の7作品が上映された。なお、この年のBISFFでは第1回FIDFF2009の6作品が上映されている。

 第3回FIDFF2011では、釜山独立映画協会(通称、Indi Busan)と「人材交流と作品の相互上映」、同協会が運営するメイド・イン釜山独立映画祭(以下、MIB)と「姉妹映画祭になる」旨のMOUが締結され、MIBの作品を中心に長編作品を含む6作品が上映され、来日ゲストによる「映画制作がつなぐ釜山と福岡」「日本と韓国のインディペンデント映画」をテーマにしたカフェトークが行われた。また、この年からFIDFF作品もMIBで上映されるようになっている。

 第4回となる今年は、昨年MIB作品として上映された『Stray Cats』(アジアフォーカス2011でも特別上映)のミン・ビョンウ監督が来日時に九州で撮った、まさに映画祭同士の連携の結実といえる作品『Time Traveler』がオープニング作品として上映されたのをはじめ、「MIB優秀作品集」として『Beautiful Miss JIN』『Grandma』『Kids On Board』の3作品が上映され、MIB作品の監督・プロデューサーが制作状況を語るカフェトークが行われた。また、BISFFが制作支援を行い、釜山の大学生が制作した短編5作品が「BISFF PROJECT オペレーションキノ」として上映された。なお、FIDFF作品は今年のBISFFですでに上映され、11月に開催されるMIBでも昨年同様上映される予定である。


FIDFF2012上映作 ~カフェトークの内容を交えて


 今年、上映された作品のうち、オープニング作品『Time Traveler』、コンペティション作品『アイゴ~! ~わが国籍は天にあり~』について、また、カフェトークで監督たちの話を聞くことができたMIB作品『Beautiful Miss JIN』『Grandma』についてはゲストの話も交えて紹介する。


『Time Traveler』
 原題 時間旅行者/英題 Time Traveler/2012年/10分15秒
 監督 MIN Byung-woo(ミン・ビョンウ)

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『Time Traveler』(写真提供:FIDFF2012)

 昨年上映されたミン・ビョンウ監督の『Stray Cats』は恋人に去られたばかりの男性の話だったが、この『Time Traveler』は、その男性が九州を旅しながら気持ちを整理していくというもので、続編のような話になっている。『Stray Cats』は男性と彼の部屋に上がり込んだ野良猫との交流を、猫のかわいいしぐさを盛り込んで微笑ましく描いた作品であったのに対し、本作は男性の孤独感をそのまま表現していて異なる味わいがある。九州、特に福岡の方は見慣れた街並みを異邦人の視線で見ることができる。『Stray Cats』(英語字幕付)『Time Traveler』(字幕なし)はYouTubeで鑑賞可能だ。


『アイゴ~! ~わが国籍は天にあり~』
 英題 Aigo!~My natinonality is in heaven~/2011年/28分5秒
 監督 Lee Dalya(李達也)

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『アイゴ~! ~わが国籍は天にあり~』李達也監督

 国籍をめぐる在日2世の父と3世の娘・息子との葛藤を描いた作品。父の世代が自分のアイデンティティと国籍をセットで考えるのに対して、若い世代はキャリアや生活上の便宜から国籍を変更せざるを得ず、それだけに国籍というものをクールにとらえる傾向が強まっているようだ。子どもたちのためにグランドを広げようと2世の父たちが休日は開墾を行ったというような朝鮮学校運営にまつわる苦労話も聞くことができる。


『Beautiful Miss JIN』
 原題 ミス・ジンは美しい/英題 Beautiful Miss JIN/2011年/98分
 監督 JANG Hee-chul(チャン・ヒチョル)

 釜山の東莱駅の待合室をねぐらにしているホームレスの女性、ミス・ジンが主人公。いずれも家族を持たない、捨て子の少女、ホームレスの男性、駅職員の男性が、心の美しいミス・ジンを核にして家族のような関係を築き、それを支えに次の一歩へと踏み出していく。ミス・ジンはホームレスだが、いつもこざっぱりとおしゃれ。自他のトラブルを知恵とユーモアで解決してしまうので、彼女を追い出そうとしている駅長でさえ彼女に魅了されてしまう。実世界とは立場が逆転し、定職に就いている駅の職員たちの方がホームレスの自由さを羨むようになるのを見ると、この作品は大人のための良きファンタジーだと思える。

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カフェトークの模様 左からキム・イソク氏、チャン・ヒチョル監督、ペ・ソヒョン氏、キム・ジゴン監督

 釜山の郊外や海辺を舞台に、釜山なまりが使われていることで、どこか懐かしく感じる温かい作品に仕上がっているが、FIDFF代表の西谷氏とゲストのキム・イソク釜山独立映画協会会長から、釜山ロケ・釜山方言の映画を作ることは「商業的に成功することが難しく、勇気がいることだ」という称賛の声があがった。昨年、MIBで上映される前に釜山国際映画祭でも上映された、いわば作品として一定の評価を受けたプロの作品であるが、ゲストのチャン・ヒチョル監督とペ・ソヒョン プロデューサーからは、厳しい条件の中で制作されたことが具体的に語られた。釜山フィルムコミッションから資金援助を受け、監督の自己資金も使い、さらに「機材もコストをかけないように準備し」「夜のシーンはお金がかかるのでなるべく昼のシーンに設定」するといった工夫を行った。プロデューサーが、駅での撮影は手数料が高い、雪のシーンの撮影がなかなかできないなどで、「監督ともめたこともあり、今は仲良く並んでいるけど、その時は殺してやりたかったくらい(笑)」大変だったが、俳優やスタッフも監督の人脈からほとんど無報酬で参加してくれ、「お金の力でなく、監督の努力と人脈でこの映画を作ることができた」と熱く語ったのが印象に残る。


『Grandma』
 原題 おばあさん/英題 Grandma/2011年/53分/ドキュメンタリー
 監督 Kim Ji Gon(キム・ジゴン)

 キム・ジゴン監督によると、制作のきっかけはスタッフたちが釜山の再開発予定地を歩いていて、おばあちゃんたちが酒盛りで路地を塞いでいるために通れなかったことだという。おばあちゃんたちがマッコリをくれて「撮ってくれ」と言うので撮影が始まった。写されているのは、おばあちゃん同志のにぎやかなおしゃべりと映画スタッフとおばあちゃんたちの交流。おばあちゃんたちにまじって鍋からラーメンをおいしそうに食べているのは助監督たちで、撮影する側もされる側も至って自然体。おばあちゃんたちは李明博大統領の悪口をこれでもかと言い放ち、にぎやかに歌って踊りと大変エネルギッシュだ。監督は立ち退き直前にゴキブリが出た時に、おばあちゃんが「私は引っ越すし、この家は取り壊されるけど、ゴキブリも生きていかないといけない」と言ったことなど「おばあちゃんたちと話していて何度も感動することがあった」と語ったが、作品中の何気ないやりとりからもおばあちゃんたちへの敬意が感じられる。

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『Grandma』ティーチインでの西谷氏(左)と監督(右)

 制作資金は「近所のレンタルDVD屋のおじさんが100万ウォン、私の作品を評価してくれている監督が100万ウォンなど、カンパの合計1,200万ウォン」をあてたが、「ドキュメンタリーについては釜山独自の支援がなくて苦労している」という。キム・イソク氏からは「おばあちゃんが李明博大統領の悪口を言っていたが、彼はそういう批判を怖れて、映画への支援を削減しようと動いている」と説明があり、最後に同氏の「映画の支援策を作っていかなくてはならないが、並行して自分が作りたい映画を自由に作ることをがんばらないといけない」という力強い決意の言葉でトークは締めくくられた。


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ゲスト、審査員、コンペ部門監督が一堂に会して記念写真



福岡インディペンデント映画祭(FIDFF)2012
 会期:9月6日(木)~9月11日(火)
 会場:福岡アジア美術館・8Fあじびホール、冷泉荘・B棟1階ニコイチ
 料金:500円(6日間フリーパス)
 公式サイト http://www.fidff.com/


Reporter's Note
 井上康子。FIDFFには第1回から参加しており、映画祭がどんどん発展していくのを頼もしく見ている。来年も若い作り手の力のこもった斬新な作品を多くの人に見てほしい。『Beautiful Miss JIN』『Grandma』は釜山が大好きなこともあり、とても好きな作品になった。


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