Report 『福岡』主演クォン・ヘヒョ&ユン・ジェムンによるトーク ~撮影現場で役の日々を生き、映画を作り上げた
Text by 井上康子
写真提供:Foggy
2023/1/2掲載
福岡ではチャン・リュル監督最新作『柳川』が12/16から先行公開されたが、本作を含めた<福岡三部作>として他に、福岡で撮影して作られた『福岡』(アジアフォーカス・福岡国際映画祭(以下、FIFF)2019で上映)、福岡に関連した人々が登場する『群山』(FIFF2019上映時タイトル『群山:鵞鳥を咏う』)も12/23から順次公開中だ。

12/27福岡での『福岡』上映時には、学生時代に同じ女性を愛したことから、約30年間、音信を断っていたが福岡で再会した先輩・後輩役、クォン・ヘヒョとユン・ジェムンを招いてのトークイベントが開催された。
司会:西谷郁(『福岡』プロデューサー)
通訳:文芝瑛(『福岡』コーディネーター)
K:クォン・ヘヒョ
Y:ユン・ジェムン
司会:監督作品に出演した経緯
K:釜山国際映画祭に参加中に監督から連絡をもらい初めて会い、出演を依頼されました。映画を作る中で監督と意気投合していきました。
Y:僕は監督の『群山:鵞鳥を咏う』に少し出演したことがありました。監督から、既にクォンさんのキャスティングが決まっていると聞き、無条件に引き受けました。
司会:役柄は大学生の時に演劇部の先輩・後輩という間柄、実際の間柄はどうか
Y:僕が若くてまだ無名だった頃に、先輩は既に有名であこがれの存在でした。演劇の舞台に一緒に立ってから親しくなり、『福岡』中で、ジェムンが酔うと夜中にヘヒョに電話をかけたように、夜中に電話しては迷惑をかけました(笑)。
K:電話で起こされると、ちょっとここで言えない位の悪態をついてました(笑)。
司会:パク・ソダム出演と聞いて思ったことは
K:50代の男二人と20代の女で何をするんだろうと思いました。
Y:僕は40代でした(笑)。
K:監督からストーリーを聞いてもどんな映画になるんだろうと心配もしました。パク・ソダムの役は生きている人なのか、幽霊なのかも気になりました。最初はお互いよく知らなくて距離感がありましたが、ある程度の距離感を監督は意図していたのかもしれません。映画を撮りながら、だんだん距離が縮まったことが映画の中にも溶け込んでいったと思います。
Y:普段は兄貴と呼んでます。僕も兄貴と同じように思いました(笑)。

観客:チャン監督との撮影で良いなあと思ったことや戸惑ったことは
K:良かったことを言うと、映画を撮る、新しく作り上げていくことは易しいことではなくストレスでピリピリしている現場が多いですが、監督は知らない場所に遠足に行ったように楽しそうに現場にいて、いろいろ観察したり、話をつなげたりしていました。監督が現場で全部ストーリーを変えることもありましたが、それを俳優がどう演じるかを楽しんでくれているような感じがしました。演出するというより、最初の観客のように臨んでくれたことが印象的で、一番良かったことです。
観客:ラストのシーンが不思議だが、監督はどう説明し、演じる側は何を感じたのか
K:私たちはそれについて答えを持っていません。映画を観るという行為は、観ている人が感じたことがすべてです。みなさんが感じたことが大事です。ラストの撮影時は監督がどのような考えかを知らないで演技をしました。俳優はその映画のストーリーや意図を認識した上で撮影に臨むべきとみなさんは思うかもしれませんが、私は俳優はそういうことを知らなくても構わないと思っています。みなさんは今日、この作品を観て、また、自分の時間、人生に戻るように、私たちは撮影現場でその役を生きていました。私たちが毎日頑張って生きてきたのが撮影現場で、それが『福岡』という作品になったのだと思います。
『柳川』
原題 漫长的告白 英題 Yanagawa
監督 チャン・リュル 出演 ニー・ニー、チャン・ルーイー、シン・バイチン、池松壮亮、中野良子、新音ほか
2022年12月30日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国順次公開(12月16日より、KBCシネマにて福岡先行公開)
公式サイト https://movie.foggycinema.com/yanagawa/
『福岡』
原題 후쿠오카 英題 Fukuoka 韓国公開 2020年
監督 チャン・リュル 出演 クォン・へヒョ、ユン・ジェムン、パク・ソダム、⼭本由貴ほか
2022年12月23日(金)より、順次公開
公式サイト https://movie.foggycinema.com/fukuoka/
『群山』
原題 군산: 거위를 노래하다 英題 Ode to the Goose 韓国公開 2018年
監督 チャン・リュル 出演 パク・ヘイル、ムン・ソリ、チョン・ジニョン、パク・ソダムほか
2022年12月23日(金)より、順次公開
公式サイト https://movie.foggycinema.com/gunsan/
Writer's Note
井上康子。最後に記載したラストシーンについての質問が出た時、二人が困ったと顔を見合わせたため、観客は質問を変えたのだが(最後から二つ目の質問)、クォン・へヒョはそれに答えた後に、引き続き、自らラストシーンの質問について語り始めた。その誠実な姿勢と意味深い返答に感銘を受けた。
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