Report 韓国に行って『泥棒たち』を観よう! ~現地で感じたソウルの今~
Reported by mame
2012/9/11掲載
お盆休みを利用して5年ぶりに韓国に行ってきました! 目的は、アーティスト・イン・レジデンスでソウル・アートスペース・グムチョンに滞在している日本の友人や、留学時代の友達を訪ねること、そして現地で韓国映画を観ることです。
今回観た映画は『泥棒たち』。私が行った8月中旬は週末の興行ランキングでトップを独走、公開後1ヶ月以上経った今や動員数1,200万人を突破し、韓国映画の歴代観客動員数トップに並ぶかもと言われている超話題作です。ストーリーとしては、10人の泥棒たちが1個のダイヤを盗むためにチームを組むのですが、それぞれの思惑が交錯し、果たしてダイヤは誰の手に…?というシンプルな作りになっているので、まだ字幕なしでは厳しい私でも雰囲気は充分伝わってきました。驚かされるのがその豪華キャスト! キム・ユンソク、キム・ヘス、イ・ジョンジェなど、韓国映画・ドラマでおなじみの主役級俳優がこれでもかと出てきて、画面を観るだけでもお得な気分に浸れます。キャストに加え、ロケーションも豪華! 韓国・香港・マカオを舞台に、チョン・ジヒョンが繰り広げる華麗なワイヤーアクションも見ものです。

『泥棒たち』のチラシ
今回は友人のレジデンス近くのシネコン primus禿山で鑑賞しました。早朝割引を目当てに朝一番の回を観に行ったのですが、なぜかエレベーターが誰も居ない階に到着。シネコン内で迷子になり、エスカレーターを逆走して汗だくになりながらチケット売り場に辿り着くと、5分遅刻でしたがなんとか入場することができました。300人規模の大劇場の真ん中で家族連れに囲まれて観ると、まるでプラネタリウムに居るようなアットホームな気分に。上映中、泥棒たちの数多くの裏切りに、隣の男の子が「また裏切った!」と嬉しそうにお母さんに報告する姿が微笑ましかったです。韓国映画の場合、その生々しい描写が特徴の一つですが、『泥棒たち』は親子で見ても安心な娯楽大作に仕上がっています。また、個性豊かなキャラクター設定のため、「1度目はストーリーを、2度目は個々のキャラクターに注目する」といった楽しみ方をするリピーターが数多く発生している事も、人気の秘密かと思われます。個人的には、ちょっと間抜けなビッチを演じるチョン・ジヒョンがハマリ役で、彼女の新たな魅力が発揮されている作品なので、ファン層が広がり、さらに彼女の人気が高まりそうな予感がしています。
料金が安いこともあり(通常大人8千ウォン~9千ウォン。早朝割引で5千ウォン)、韓国では映画が身近な娯楽として存在しています。ただし、エンドロールになると私以外は全員席を立ち、最後は大劇場にぽつんと残されてしまいましたが…。そういえば私が留学時代に観に行った映画はチョ・スンウ主演の『マラソン』。その時は韓国人の友達が隣で見ながら私に分かるように状況を逐一説明してくれて、とてもありがたかった思い出があります。周りの人の迷惑を考えると、日本の映画館では有り得ないかも知れませんが、仲良く映画を観る事が日常的な韓国では、意外とアリだったのかもなあ、と思っています。
さて、話題の『泥棒たち』。9/10現在、韓国映画の歴代興行成績ナンバー1の『グエムル -漢江の怪物-』まであと20万人弱と迫っています。9月下旬の連休に韓国に行かれる方は、現地で『泥棒たち』をご覧になって、記録更新に貢献してみてはいかがでしょうかっ!

映画以外の話題も少々。5年ぶりのソウルは、当たり前ですが、すっかり様変わりしていました。私が到着した日はちょうど李明博大統領が竹島に上陸した日…。不安な気持ちもあったのですが、久々に会う友達は変わらず暖かく迎えてくれて、楽しい思い出ばかり残りました。
韓国のアート事情についてですが、アーティスト・イン・レジデンスとは、地域に根付いたアート活動をしてもらう事を条件に、作品制作用のスタジオと滞在施設を提供するプログラムのことです。ソウルには市が主催するプログラムの他、企業や財団が主催するものもあわせると、かなりの数のレジデンス・プログラムがあります。今回訪れたソウル・アートスペース・グムチョンの場合、スタジオと寝室がひとつずつ与えられ、発表用の大きなギャラリーも併設されており、とても恵まれた環境に思われました。受け入れるアーティストは海外・国内で条件・滞在期間が異なるのですが、まだまだ作品だけで生活していくには難しい若手作家にとって、こうしたプログラムは大変ありがたく、貴重な発表の場となるため志願者も大変多いのだとか。若い才能の中から、優れた映像作品が出てくるかも?と思うと、韓国の現代美術にも興味が湧いてきませんか?

真夜中のソウル・アートスペース・グムチョン
昨今、領土問題で揺れる日韓関係ですが、現地で私が感じた印象は、相変わらずめまぐるしいスピードで変わっていくソウルの街並と、自分のやりたい事に突き進む、頼もしい友人達の姿でした。やはりパワー溢れる国「韓国」は、いつまでも私にとって気になる国として存在し続けてくれそうです。
Reporter's Note
mame。2004年、韓国・弘益大学美術学部に交換留学。専攻は木版画。秋の韓国は釜山国際映画祭、光州ビエンナーレと芸術の祭典が盛りだくさん! 先日のベネチア国際映画祭ではキム・ギドク監督の『ピエタ』が金獅子賞を獲得した事で、韓国映画への注目度はますます高まっています。
おまけ 仁川国際空港騒動記

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