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Review 『キングメーカー 大統領を作った男』 ~二人の男の感情と宿命が濃く匂い立つポリティカルドラマ

Text by 荒井南
2022/8/16掲載



 『名もなき野良犬の輪舞(ロンド)』の劇場公開で来日したビョン・ソンヒョン監督にインタビューしたのは、今から5年前だった。その時、次回作について「政治をテーマにしていて、次回作も関係性のドラマになる予定だ」と語っていた。その通り、『キングメーカー 大統領を作った男』は信念をめぐる男と男の感情がドラマティックに展開される。そうだ、私はこれを待っていたのだ……!

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 独裁政権が国民を抑圧していた1960年代。北出身の薬剤師ソ・チャンデ(イ・ソンギュン)は、野党の地方議員キム・ウンボム(ソル・ギョング)に肩入れし、彼の選挙事務所に押しかけて参謀として働くことになる。不正選挙も辞さない与党に勝つため、チャンデは“自分たちの10票を増やすより相手の10票を減らす”をポリシーに、対立候補が民衆に配布した賄賂を横取りするなどダーティーなやり口を使い、ウンボムを当選させ続ける。為政者としての理想を持つウンボムも、彼のその大胆な手腕を買い、ともに国政を目指す同志として手を取り合っていった。しかし、目的への手段が異なる彼らの道は、次第にすれ違ってゆく。

 本作は、波乱の人生を送った韓国随一の傑物にして第15代大統領・金大中氏と、彼の側近であった厳昌録の実話をモチーフにしたポリティカルドラマだ。政治がテーマのフィクションであるだけに、熾烈を極める選挙戦の再現はサスペンスフルで見応え十分だ。金大中をモデルにしたキム・ウンボムに扮したソル・ギョングによる演説の表現にも惹きつけられるし、野心を抱きながらもウンボムの躍進を望むチャンデの葛藤を演じきったイ・ソンギュンの複雑な演技にも瞠目させられる。前作の精鋭たちが再び集結したスタッフワークも巧みだ。名匠キム・サンボムによる編集が冴え渡るタイトルバックまでのシークエンスが一気に映画の世界へ引き込み、時代をそのままに再現したような撮影や美術で作り上げられたカットの一つ一つが最後まで心を掴んで離さない。

 何よりも、濃密な感情のドラマがスクリーンに満ち満ちている。本作のオープニングは、チャンデがウンボムへ手紙を書くシーンであり、受け取ったウンボムは同封の植物に気を留める。それは使いようによって毒にも薬にもなる薬草で、ウンボムを当選させるためにはなりふり構わないチャンデ自身を喩えているのだが、ほのめかし方が実に繊細でロマンティックだ。ビョン・ソンヒョン監督が『名もなき野良犬の輪舞(ロンド)』でも私たちを虜にした、ブロマンスの一歩先へ踏み込む物語が、序盤ですでに始まっているのである。ウンボムの秘書として勤勉であり続けるパク秘書(キム・ソンオ)がチャンデに抱く嫉妬心に似たもどかしさに、こちらも苦しくさせられる。そして何よりも、互いが大事な存在であることを心底理解していながら、信念の決定的な相違に突き当たってしまうウンボムとチャンデが痛ましくてたまらない。ビョン・ソンヒョン監督は「無骨ではない、洗練された政治ドラマを作りたかった」そうで、なるほどルックはスタイリッシュだ。一方、映画の中で描き出された感情は複雑で淀んでいて、しかし真に迫っている。

 選挙参謀としての手腕とは裏腹に、表には出せない存在であるソ・チャンデは“影”というあだ名で呼ばれている。時に彼を閉じ込めるように、また時には彼の存在そのものを塗りつぶすかのように、チャンデを象徴する様々な影がつきまとっている。地方議員から国政の中心へと歩みを進めていくウンボムが光り輝けば輝くほど、その後ろに出来た影はひたすら濃く、チャンデはその中に飲み込まれていった。しかし、光と影は互いに分かちがたく結びついている。チャンデは“影”と呼ばれることを嫌っていたが、ウンボムとの出逢いも、また彼が“影”と呼ばれて生きていくことも、すべて定められたものだったのではないだろうか。二人の悲壮な宿命に見終えてなお胸をかき乱されている。


『キングメーカー 大統領を作った男』
 原題 킹메이커 英題 Kingmaker 韓国公開 2022年
 監督 ビョン・ソンヒョン 出演 ソル・ギョング、イ・ソンギュン、ユ・ジェミョン、チョ・ウジン
 2022年8月12日(金)より、シネマート新宿ほか全国順次ロードショー
 公式サイト https://kingmaker-movie.com/


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