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Review 『モガディシュ 脱出までの14日間』 ~韓国屈指のエンターテイナー、リュ・スンワン監督渾身の一本に映画のダイナミズムを見た

Text by 荒井南
2022/6/27掲載



 1990年、ソウルオリンピックで大成功を収めた韓国政府は、国連への加盟に向けたロビー活動をアフリカ諸国で展開し、ソマリアの首都モガディシュで韓国大使をしているハン(キム・ユンソク)は、政府上層部の支持を得ようと奔走していた。南に先駆けてアフリカ諸国と関係を築いてきた北朝鮮もまた、国連加盟を目指していた。一歩も譲らない両国間の妨害工作と情報戦はエスカレート。ハン大使とカン参事官(チョ・インソン)は、北のリム大使(ホ・ジュノ)とテ参事官(ク・ギョファン)とにらみ合いを続けていたが、かねてから内戦が激化していたソマリアの反乱軍が勢いを増し、ついに「国民を弾圧するバーレ政権を援助する外国政府は敵」という声明を出したことで、各国の大使館は政府軍と反乱軍の戦いに巻き込まれてゆく。武装した反乱軍の若者によって大使館を追われ退路を断たれた北朝鮮のリム大使たちは、韓国側に助けを求める。相容れない両国は、絶体絶命の窮地から協力して脱出を図ろうとする……。

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 殺人事件のでっち上げをめぐり男たちの思惑が絡み合う『生き残るための3つの取引』、北と南の情報院エージェントと諜報員の息もつかせぬ攻防戦を描く『ベルリンファイル』、大財閥の暴力御曹司と熱血刑事が壮絶なバトルを繰り広げる社会派な一本『ベテラン』など、リュ・スンワン監督の作品は、出し惜しみのないアクションとシンプルなストーリーラインで分かりやすく作られている。それは決して陳腐でも観客を見下しているということでもなく、余計なストーリーラインをそぎ落とすことによってのみ得られる力強さがあるからだ。本作でもそれは踏襲されていて、マニアを喜ばせること受け合いだ。反乱軍の襲撃から守るために施した防御によって出来上がった車体の印象といい、砂埃を巻き上げながらモガディシュの街なかを爆走していく展開といい、もはや実話版『マッドマックス 怒りのデス・ロード』ではないか。こんな映画を撮れるのは、忠武路ではリュ・スンワンだけなのではないだろうか。

 一方、『ベルリンファイル』にも描かれていたような、国や民族という括りを超えた人間同士の情も丁寧に描かれている。明確には、大使や参事官たちのブロマンス要素だが、それぞれの家族を守る妻たちの絆が忘れがたい。劇中、北と南の両国が初めて過ごす食卓で、くっついて剥がれないエゴマの葉の漬物を、キム・ミョンヒ(キム・ソジン)とペ・ヨンスク(パク・ミョンシン)の南北の妻同士が押さえて剥がすのを手助けするシーンがある。最近の韓国では、恋人同士を対象にして「エゴマの葉論争」の名で話題になる小話をリュ・スンワン監督が取り入れたかどうかは分からないが、寄り添い合う女性たちの連帯を感じて好もしい。そしてラストまで耳に残り、心を掴んで離さなかったのは、本作が遺作となった音楽監督パン・ジュンソクの旋律の数々だった。アフリカンテイストで盛り上げたかと思えば、エレクトリックな曲調でアクションの焦燥感をあおり、広がりを感じさせる感動的なサウンドでラストを締めくくるといった、まさに彼の縦横無尽さを見せつけてくれる仕事だった。

 この夏最大級のエンターテインメント大作。ぜひこのダイナミズムを、映画館で体感して頂きたい。


『モガディシュ 脱出までの14日間』
 原題 모가디슈 英題 Escape from Mogadishu 韓国公開 2021年
 監督 リュ・スンワン 出演 キム・ユンソク、チョ・インソン、ホ・ジュノ、ク・ギョファン、キム・ソジン、チョン・マンシク
 2022年7月1日(金)より、新宿ピカデリー、グランドシネマサンシャイン池袋ほか全国ロードショー
 公式サイト https://mogadishu-movie.com/


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