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Review 『ひかり探して』 ~あなたの存在が私を再生させてくれる

Text by 井上康子
2022/1/13掲載



 原題は『私が死んだ日(내가 죽던 날)』で、フライヤー表紙左半分のほぼノーメークでのキム・ヘスの無機的な表情を見て、暗い映画だろうと思っていたが、邦題のイメージ通りに希望を求める女性たちを中心に据えた温かい余韻の残る作品だった。人気を博したドラマ『シグナル』以来の刑事役でトップ・スターのキム・ヘス、名バイプレイヤーで『パラサイト 半地下の家族』で一気に知名度がアップしたイ・ジョンウン、子役時代から演技力を評価されていた若手ノ・ジョンイと3女優が主演。1981年生まれのパク・チワン監督の長編デビュー作で女性監督による女性を主人公とした作品だ。

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 主人公ヒョンス(キム・ヘス)はエリート刑事だったが、捜査中に交通事故を起こしてしまい、懲戒処分を待つ身だ。離婚調停中の夫は自身が浮気をしている有責者なのに彼女が浮気をしているとデマを広げて、彼女を貶める。ヒョンスは、懲戒処分を免れるために、ある島で起きた少女の失跡事件について自殺の報告書を提出することを命じられる。少女セジン(ノ・ジョンイ)は父親が犯した事件の関係者として警察により島に隔離されていたが、遺書を残し崖から飛び降りたと見られる。しかし、死体が見つかっていないのだ。

 ヒョンスは島での捜査を開始する。セジンのいた家や室内の監視カメラの映像を見、関わりがあった人からセジンの様子を聞いていく。脚本も監督が執筆し、2021年百想芸術大賞映画部門の最優秀脚本賞を得ているが、セジンの過去は時系列によらず縦横無尽に展開し、単純な結論に収束せずサスペンスとしての興味を途切れさせない。

 そして、サスペンスの面白さ以上に強く引き込まれたのはヒョンスが再生していく過程であった。ヒョンスは、セジンが信頼していた継母も担当警官も皆が保身のために彼女を見捨てたことを知り、憤り、夫や職場から虐げられた自分とセジンは同じ境遇なのだと悟る。会ったことのない彼女と一体になり捜査に没頭することで、心が死んでいたヒョンスは生き直す。ヒョンスが友人に夢の話をする場面はたいへん印象的だ。夢の中で自分が自分の死体を見て「あれを片付けて」と思っている。でも「生きたい」のだと。

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 監督はヒョンス役にキム・ヘスを想定していたが、新人監督の作品に大スターのキャスティングは困難だろうと思っていた。しかし、シナリオを受け取ったキム・ヘスは「この作品への参加を運命のように感じた」とのこと。心が死んでいたヒョンスの疲弊振りには彼女がいかにこの役に打ち込んだかが伺える。

 最後にイ・ジョンウンについて触れておこう。彼女が演じているのは、名前がなく、順天出身の人の意で「順天宅(スンチョンタク)」と島民から呼ばれている女性で、セジンと関わりがあったため、ヒョンスの訪問を受ける。彼女はかつて農薬を飲んで自殺を図ったために唖で、筆談で応える。そんな彼女が意を決して、出せない声を振り絞って語る場面には涙が止まらなかった。


『ひかり探して』
 原題 내가 죽던 날 英題 The Day I Died: Unclosed Case 韓国公開 2020年
 監督 パク・チワン 出演 キム・ヘス、イ・ジョンウン、ノ・ジョンイ
 2022年1月15日(土)より、ユーロスペースほか全国順次公開
 公式サイト https://www.sumomo-inc.com/hikarisagashite


Writer's Note
 井上康子。1981年生まれの監督が27歳で国立の映画学校である韓国映画アカデミーの演出専攻に入学した時、女性は監督のみだったそうだ。本作は監督を始め、主演3人も女性。そして、スタッフも半数が女性。これからも、少しずつの変化でどんな作品が生まれるのか楽しみだ。


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