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Review 『トゥルーノース』 ~凄まじく過酷な中でも穏やかに命を見つめる映画

Text by Kachi
2021/5/23掲載



 1950年代~1984年にかけて行われた、集団での永住帰国・移住、いわゆる「帰還事業」によって、多くの在日朝鮮人が朝鮮半島の北へ渡っていった。首都・平壌で両親と暮らす幼い兄妹ヨハンとミヒは、ある日突然、父が政治犯として逮捕される。ほどなくして、ヨハンらも母とともに強制収容所に連行されてしまう。極寒で食料もなく、生き残るために互いの監視と密告も辞さない過酷な状況の中、成長したヨハンも家族の食料を確保するため次第に変わっていき、収容所内の看守と近しい監視グループに入っていく。そんな中、家族の運命を左右する大きな出来事に直面する。

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 あどけなかったヨハンが監視役になる姿は、第二次世界大戦中のアウシュビッツにいた、ナチスの取り計らいによってガス室を免れる代わりに死体処理などの仕事に従事することになった「ゾンダーコマンド」という特殊労務部隊を想起させる。悲劇の歴史、悪の様相はいつの時代も、どこの世界でも繰り返されて再現される。

 監督曰く『トゥルーノース』というタイトルは「ニュースで報道されない北朝鮮の真実」を表しているが、英語の慣用句「絶対的な羅針盤」という意味も含む。荒む時期もあるヨハンだが、その後ミヒとともに多くの収容者の看取り役になることで、自身の心の平穏も取り戻していく。人の死が訪れる地獄のような強制収容所で、むしろその命が消える瞬間を穏やかにみつめることは実に逆説的な描写で、これまで作られた北朝鮮の真実を描く作品とは異なる要素だ。

 在日コリアン4世の清水ハン栄治監督は、語られねばならない真実として本作を作り上げた。特に造形はデフォルメし過ぎてしまうと「別世界で起こっている話」と受け止められる一方、リアルに作り過ぎるとホラー映画のようになって観客が感情的について行けなくなると考え、そのバランスに苦心したそうだ。やや折り紙のような素材感を残した造形は人間味があるせいか、実写で生々しく表現したよりも、収容所で生きる彼らの魂がにじみでているようである。


『トゥルーノース』
 日本・インドネシア合作 英題 True North 2020年製作
 監督 清水ハン栄治 声の出演 ジョエル・サットン、マイケル・ササキ、ブランディン・ステニス、エミリー・ヘレス
 2021年6月4日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
 公式サイト https://www.true-north.jp/


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