Review 『ザ・バッド・ガイズ』 ~マ・ドンソクの鉄拳で「ホントウの悪い奴ら」を全員成敗!
Text by Kachi
2021/4/3掲載
マ・ドンソクへの信頼は厚い。演技もさることながら、人格についてもそうだ。古い言い回しだが、「気は優しくて力持ち」をこうまで体現している俳優もいないだろう。そんな彼が、またしてもベストアクトを更新してみせてくれたのが、『ザ・バッド・ガイズ』だ。

凶悪な囚人たちを乗せた護送車が、ある日突然謎の武装集団に襲撃され、韓国屈指の暴力団組織の組長を含む犯罪者たちが脱走してしまった。最悪な事態を秘密裏に収束させるため、警察組織の上層部は「狂犬を放す」の一言を合図に、元警察官のオ・グタク(キム・サンジュン)に指令。重罪で刑務所に収監中の服役囚たちを集めた極秘プロジェクト「特殊犯罪捜査課」を始動させる。彼が集めたのは、ヤクザ者だが一本気の男パク・ウンチョル(マ・ドンソク)、世渡り上手の詐欺師クァク・ノスン(キム・アジュン)、元エリート刑事ながら熱い性分が災いし過失致死罪で収監されていたコ・ユソン(チャン・ギヨン)ら、超がつくほどのクセ者たち。彼ら3人は減刑と引き換えに、衝突しつつも互いの信頼を深めながら、徐々に悪の核心へと踏み込んでいく。しかし、裏には彼らも思いも寄らない巨悪が潜んでいるのだった…。
ウンチョルたちが立ち向かう悪の組織のメンバーが、何者かをスパイクのついたメリケンサックで痛めつける描写がある。一方のウンチョルは、武装することはほぼなくシンプルに拳ひとつでなぎ倒していくのが素晴らしい。暴力は誰に行使するか、どう振るうのかがきちんと切り分けられていて、作り手の鉄拳という表現への愛を感じる。本作はもちろんエンターテイメント・ムービーだが、本物の姑息さや凶悪さが見えづらくなっている混沌とした現代社会を反映しているようでもある。
全員が犯罪者でありながら世を正していく「スーパーヒーロー」であるという、フィクションならではのドラマを、各々の事情や思惑を盛り込んでギリギリの筋立てで小気味よく見せている。また、作品の世界観を作る上で、車両の追突シーンなどはCGを最小限に抑えるためセットや小道具を駆使するなど、リアリティも加味された。痛快な活劇でマ・ドンソクが立ち回るシーンは、実に愉快だった。彼の最新の雄姿を、ぜひスクリーンで堪能していただきたい。
『ザ・バッド・ガイズ』
原題 나쁜 녀석들: 더 무비 英題 THE BAD GUYS: REIGN OF CHAOS 韓国公開 2019年
監督 ソン・ヨンホ 出演 マ・ドンソク、キム・サンジュン、キム・アジュン、チャン・ギヨン
2021年4月9日(金)より、シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国ロードショー
公式サイト https://thebadguys.jp/
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