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Review 『チャンシルさんには福が多いね』 ~映画愛のいとおしさとほろ苦さに満ちた作品

Text by Kachi
2021/1/4掲載



 実にチャーミングな映画だ。オープニングで葬送行進曲を伴奏にするようなブラックな入りにもかかわらず、それこそが人生にまつわる悲喜こもごもを端的かつ巧みに表現している。キム・チョヒ監督は、長くホン・サンス映画のプロデューサーをしていたということで、随所に見えるホン・サンス印にも茶目っ気がある。

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 映画プロデューサーのチャンシル(カン・マルグム)は崖っぷちにいる。長年にわたりサポートしてきた映画監督が、クランクイン直前に心臓発作で急逝したのだ。制作部は解散。彼女は無職となって、とある老婆ポクシル(ユン・ヨジョン)が大家をしている貸家へ転がり込む。今まで、しゃにむに映画とかかわって生きてきたため、チャンシルには恋人もおらず結婚も程遠い。そんな矢先、友人で女優のソフィー(ユン・スンア)を通じて知り合ったフランス語講師ヨン(ペ・ユラム)との恋の予感が訪れる。

 チャンシルの心には“映画俳優”(どんなビジュアルなのかは見てのお楽しみ)が、守護霊のように寄り添っている。映画への夢が断たれ、「本当に何が好きか見誤っている」と神様はチャンシルに説く。「チャンシルには福が多いね 職なし男なし…」と歌い上げるテーマソングは身も蓋もなくて苦笑してしまうが、歌詞も映画の内容にも、改めて人間の幸福とは何かを再考させられる。

 自分だけが泥沼にはまっていると感じる時期は、人生に何度も訪れる。しかし劇中では、ソフィーも頑張っている割に出演シーンを大幅にカットされていたり、ポクシルは一人娘を早くに亡くして一人ぼっちだ。「どうして私だけこんなにも」と思う瞬間は実は「木を見て森を見ず」ならぬ「森を見て木を見ず」と同じなのかもしれない。幸不幸は他人と比べることではなく、物差しや計量カップで可視化できるわけではない。目の前を曇らせる“不幸”を取り去れば、誰もがありあまるくらいに“福”を持っているのである。

 作品のタイトルは、キム・チョヒ監督の口から不意を突いて出た「チャンシルは本当に福が多いわね…」という独り言から来ている。肩肘張らずに見ることができて、鑑賞後はやりたいことに向かってそっと背中を押してくれる。なにより映画愛のいとおしさとほろ苦さに満ちて、深みのある作品だった。


『チャンシルさんには福が多いね』
 原題 찬실이는 복도 많지 英題 Lucky Chan-sil 韓国公開 2020年
 監督 キム・チョヒ 出演 カン・マルグム、ユン・ヨジョン、キム・ヨンミン、ユン・スンア、ペ・ユラム
 2021年1月8日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー
 公式サイト https://www.reallylikefilms.com/chansil


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