Report 福岡インディペンデント映画祭2020 ~釜山独立映画祭推薦の3作品を招待上映
Text by 井上康子
写真提供:福岡インディペンデント映画祭事務局
2020/12/31掲載
第12回を迎えた福岡インディペンデント映画祭2020(以下、FIDFF)が、11月19日(木)~11月23日(月・祝)に福岡市内で開催された。昨年は募集がなかったコンペが行われ、若手映像作家からの応募113作品、海外・国内招待5作品の計118作品が上映された。初回から交流が継続している釜山の映画祭の作品上映が昨年はなかったが、今年は釜山独立映画祭(以下、IFFB)推薦の3作品が招待上映された。今年は残念ながらコンペ作品を見られなかったが、この3作品は見ることができたので報告したい。
『アイス』イ・ソンウク監督
クィア映画を対象にしたソウル国際プライド映画祭2019閉幕作。タイトルのアイスは薬物を指す。薬物を探し求めて、クィアの男性二人が彷徨する。身体を重ねる二人だが互いの連絡先も明かさず、いつ警察に捕まるか、いつ身体を壊すかと怯えて過ごす。最後まで緊張を途切れさせることなく見せてくれた。

『アイス』
『木曜日』ユン・ジヘ監督
IFFB2019で審査員特別賞を受賞した作品。講師アシスタントの仕事を失った女性と葬儀に出るために自分の店を閉めた男性は、同じ空間を異なる時間に通り過ぎる。無機的な建物の上を静かに時間が流れる。整った構図と映像の美しさが秀逸だった。

『木曜日』
『Sibal、movie』クォン・へリン監督
監督自身が登場するドキュメンタリーで、IFFB2019で最優秀の作品に授与される大賞受賞作。タイトルの「Sibal」は韓国語の罵倒表現「クソッタレ!」と「始発」を意味している。映画作りのために借金を抱えてしまい、悪態をつきながら、なぜ映画を好きになったのかと出発地点を探しだそうとする。監督自身が家族も巻き込んでリアルな姿をさらけ出し、あまりのインパクトの強さに画面から目が離せなかった。

『Sibal、movie』
作品上映前には各監督のビデオメッセージが映された。例年、監督たちはゲスト来福しており、新型コロナのために来福が叶わなかった残念さを訴えつつ、作品のこと、今できることに励んでいる近況を報告してくれた。整頓された自室で、居住まいを正しての語りにFIDFFと福岡の観客への敬意が滲み出ていた。
第12回福岡インディペンデント映画祭2020
期間:2020年11月19日(木)~11月23日(月・祝)
会場:福岡市科学館 6F サイエンスホールほか
公式サイト http://www.fidff.com/
Writer's Note
井上康子。FIDFF2016でグランプリを獲得したヒョン・スルウ監督『アレルギー』の主演女優コン・ミンジョン(当時の名はキム・イジョン)さんが『82年生まれ、キム・ジヨン』でジヨンの姉を好演。同じく『アレルギー』主演ソ・ヒョヌさん共々、いろいろな映画で私の印象に強く残る演技を見せてくれている。
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