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Report 福岡インディペンデント映画祭2019 特別招待企画「ヤン・イクチュン監督 映画を語る」 ~日本と交流を続けるヤン・イクチュン、成熟の軌跡

Text by 井上康子
写真提供:福岡インディペンデント映画祭事務局
2019/10/7掲載



 福岡インディペンデント映画祭2019(以下、FIDFF)が、8月30日~9月1日に福岡市内で開催された。コンペは隔年実施となり、第11回を迎えた今回はコンペはなく、新作:FIDFF10周年記念作品『夢告を視たり。-butoh is everything-』(なすありさ監督)や昨年の受賞作など28作品が上映された。また、特別招待企画「ヤン・イクチュン監督 映画を語る」として、『息もできない』を監督・主演したヤン・イクチュンを招き、主演作『けつわり』(安藤大佑監督)と監督作『しば田とながお』の短編2本を上映、安藤監督とのトークも行われた。

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『けつわり』

 『けつわり』は戦時中に筑豊の炭鉱から逃亡した、ヤン監督演じる朝鮮人坑夫とかくまった少年の交流を描いた作品で、2006年に福岡で撮影されている。筆者はシネマコリア2006で見た、懐かしい作品だ。当時、彼は無名だったが、『息もできない』で見せた激しい演技は既に健在で、強者が弱者をいたぶる場面では怒りを爆発させている。

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『しば田とながお』

 そして、『しば田とながお』は2012年に開催された「シネマ☆インパクト」のワークショップでの監督作で、指導者として主演俳優二人に様々な感情表現をさせたことが見て取れる。

 ヤン監督は『かぞくのくに』『中学生円山』や昨年公開の『あゝ、荒野』などの日本映画に出演しており、時に日本語で話した。以下、トークの概要を報告する。


『けつわり』 ~日韓の若者が熱きエネルギーを融合させた


安藤:大学では朝鮮語を専攻し、韓国に留学した。映画を撮りたい、そういう仕事がしたいと思っていて、留学中も映画祭を見て回っていた。日本で最初にヤン・イクチュンを知ったのは僕だと自負しているが、2004年~2005年に映画祭で彼が出演しているインディペンデント作品をいろいろ見て、心をつかまれ、ファンになった。2005年に『まぶしい一日』(シネマコリア2006で上映)のスタッフとなり、現場で出演者のヤンさんに会い、握手を交わし、仲良くなった。同年に彼の初監督短編作品『Always Behind You』を手伝い、帰国した。

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ヤン・イクチュン(左)と安藤監督(右)

ヤン:安藤さんがスタッフとして関わってくれて仲良くなった。あの頃は若さとエネルギーがあった。お互いに外国人同士ということに好奇心も持った。私の作品を手伝ってくれたので、彼が作品を撮る時は手伝いたいと思っていた。

安藤:『けつわり』は祖父から「逃亡した朝鮮人坑夫をかくまったことがある」と聞かされていたのと、ヤンさんに出演してもらうということから考えた。「けつわり」は過酷な炭鉱労働からの逃亡を意味する。2006年に数ヶ月準備をし、6月に5日間くらい撮影した。ノーギャラで飛行機代だけ出して来てもらった。

ヤン:久しぶりで見た。私にも若い頃があったんだ(笑)。13年経過したが不思議な気がする。何も持っていない人間だったが、彼も仕事で作品を作っていて、私も時々、出演したり、監督したりで作品を作っている。

安藤:撮影時はうちの実家にホームステイしてもらった。静かな街並みが彼は気に入り、合間に散歩したり、シナリオを書いたりしていたが、そのシナリオが『息もできない』だった!

ヤン:福岡が好きです(日本語)。ソウルは大都市で息苦しい。創作するうえでは静寂が必要。福岡はちょうど良いサイズの都市だと身体で感じた。韓国人はよく活発とか元気と言われるが、私は苦手。

安藤:激しい演技をする人とは思えない素顔(笑)。

ヤン:センシティブです(日本語:笑)。


『しば田とながお』 ~日韓の感情表現の違いを楽しむ


ヤン:山本政志監督が主宰する、スタッフや俳優を目指す人のワークショップ「シネマ☆インパクト」で講師をし、撮った作品。特別なストーリーがある作品ではなく、言葉より感情を表現する作品で、20分弱の短い作品であったが(日本人俳優と作るということは)特に大変なことはなかった。アシアナ国際短編映画祭2012で最優秀国内作品賞を受賞し、500万ウォンの賞金をもらった時は日本に飛んで来て、スタッフや俳優と賞金で飲んだ。ワークショップの時は10日間滞在し、7日間演技指導をして、残り3日間で撮影した。演技指導では短い課題を与えて感情を引き出すことをしていた。感情を探すことも大切だけど表現しなくてはいけない。女性がやって来て、突然ビンタされるという状況設定でやった時、一人も怒らなかったことにショックを受けた。もちろん、みんなに怒ってほしかった訳ではない。韓国と日本では生活のリズムや緊張感が違うと感じる。韓国では同じ設定では怒鳴ったり、やり返すような反応が多いが、この時は何も感じていないような反応が多かった。こういう違いのある人が一緒にやるとおもしろいものが作れると思った。

安藤:主演の二人はどう選んだのか?

ヤン:しば田役の女優は、ワークショップで感情を出してみろと言った時に、椅子に座ってうつ向き、寂しそうで印象に残った。ながお役の男優は私の父に似て、表面的には強そうだが、内面は弱いと思った。私は、オーディションは重視せず、一緒に日常の行動をしたり、お酒を飲んだりすると内面や感情が見えてきてキャスティングする。二人とも演技を続けてくれているとよい。また、安藤さんと一緒に作品を作れたらと思う。機会を作りたい。


 会場には『息もできない』でファンになった方たちが詰めかけ、大変盛況だった。観客とのQ&Aの時間に「現在の大変な日韓関係にコメントを」と映画に無関係の質問が出た時は場内が一瞬緊張に包まれたが、ヤン監督は全く動じず「オレが代表じゃないけど(日本語)、歴史の中で権力者同士がぶつかってきた悪影響を市民はずっと受けてきた。市民が活発に交流するのが大事。政治家が好き勝手にすることに振り回されてはいけない。会えば、私たちは笑って話したりできる。個々人の感情や交流を大切にしたい。難しいことではあるが…」と語った。映画人として、まさにそのように振る舞ってきたヤン監督の言葉に会場から大きな拍手が沸き起こった。


第11回福岡インディペンデント映画祭2019
 期間:2019年8月30日(金)~9月1日(日)
 会場:福岡市科学館 6F サイエンスホール
 公式サイト http://www.fidff.com/

Writer's Note
 井上康子。『あゝ、荒野』ではヤン・イクチュンは気の弱い、吃音の青年・建二を演じた。一見、『息もできない』で演じた主人公サンフンの暴力的な姿とは真逆なのだが、暴力的な父に支配され続け、孤独に打ち震える姿は全く同じだった。あの人と繋がりたいと切望しての建二の選択に涙した。


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