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Review 『不気味な恋愛』

Text by 井上康子
写真提供:福岡アジア映画祭
2012/8/30掲載



 タイトル通りホラーと恋愛を融合させたラブコメ。ホラーとコメディを組み合わせた『時失里(シシルリ)2km』の脚本を書いたファン・イノの監督デビュー作で、脚本も彼が手がけている。

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 ストリートのマジシャンをしているチョグ(イ・ミンギ)は、蒼白く緊張した面持ちで自分のパフォーマンスを気にも留めずに立ち去る女性を見かけ、彼女の不思議な雰囲気にとらわれて後を追いかける。そして、その女性ヨリ(ソン・イェジン)をアシスタントにして始めた新しいイリュージョン・マジックは大成功を収めるのだが、ヨリはチョグたちと打ち解けようとせず、仕事が終われば一目散に帰宅してしまう。彼女は亡霊が見え、彼女のところには様々な亡霊がやって来るのだが、彼女と関わろうとする人は亡霊に気づき、怯えて、彼女から離れてしまうため、あらかじめ誰とも親しくならないようにしているのだった…。

 ホラーの要素としては、パロディというほどあからさまではなく、名作ホラー3作品が再現されている。ヨリの自宅の食卓は『4人の食卓』そのままであり、彼女が亡霊を避けるシェルターとして室内に張っているテントは『シックス・センス』の少年のテントと同じである。そして、全身無残な傷をもつ亡霊(『4人の食卓』)が登場したかと思えば、チョグにとりついたのは生きている肉親のためにメッセージを届けに来た亡霊(『シックス・センス』)である。そして、ヨリの親友の亡霊は長い黒髪をたらして、ヨリに近づく男たちを攻撃するが、その容貌は『リング』の貞子そのものである。既視感があり、テイストが異なるこれら亡霊たちの登場は、お化け屋敷を覗いているような猥雑でゆるい楽しさがある。また、チョグの職業がマジシャンであり、非日常的なイリュージョンに亡霊の要素を組み込ませているのは独自の楽しさとなっている。

 コメディの楽しさを見せてくれるのは何といってもソン・イェジンであり、普段は緊張して相手の目をろくに見ることもできないくせに、極度に酒癖が悪く、酔うと相手を睨みつけ、気楽に日々を過ごしているチョグを「うすっぺらな豚皮野郎」と本音を出してののしるヨリ役を余裕たっぷりに演じ、コメディエンヌとして十分な力量があることを見せている。

 チョグはマジシャンなので、何か特別な力で亡霊を退治するのかと思っていたが、そんなことは全くなく、小心者で、ヨリのところにやって来る亡霊たちに対して極めて無力である。結局、二人は嵐が通り過ぎるのを待つように、亡霊をやり過ごすだけで、亡霊が存在するという状況は変わることはない。チョグが輝きを放つのは、自分のことだけを考えていた「うすっぺらな豚皮野郎」から成長し、自分はそのややこしい状況から逃げ出せるにもかかわらず、ヨリの身を案じ彼女のそばに留まるという決意を見せるからである。

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ファン・イノ監督

 会場からは「彼女に取り憑いた亡霊を退治するのでなく、取り憑いたままにしたのはなぜか」という質問が出たが、監督は「この映画は単純に霊に取り憑かれた女の子の話ではありません。取り憑かれるというのは一つの障害の例であり、貧しさや身体の障害や社会的な偏見が障害になることもあります。そういった障害を乗り越えて恋が実るところを見せたかったのです。障害をなくすのではなく克服するのがこの作品のテーマです」と答えていた。はからずも『ネバーエンディングストーリー』の、病気は治らないが克服していくというテーマと同様であったことは興味深い。


『不気味な恋愛』
 原題 不気味な恋愛/英題 Spellbound/韓国公開 2011年
 監督 ファン・イノ 主演 ソン・イェジン、イ・ミンギ
 第26回福岡アジア映画祭2012「コンペ作品」部門上映作品
 映画祭公式サイト http://www2.gol.com/users/faff/faff.html
 『恋は命がけ』という邦題で「韓国映画セレクション 2013春」にて2013年3月2日(土)よりシネマート六本木ほかロードショー
 「韓国映画セレクション 2013春」公式サイト http://k-selection2013.com/

特集 第26回福岡アジア映画祭2012
 福岡アジア映画祭とは?
 Review 『折れた矢』
 Review 『ネバーエンディングストーリー』
 Review 『不気味な恋愛』
 Review 『ペースメーカー』
 Report アン・ソンギ ナイト


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