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Report マンスリー・ソウル 2019年9月 ~珠玉のようなユン・ガウン監督の新作と、知られざる歴史ドキュメンタリーにふれる

Text by hebaragi
2019/10/7掲載



 韓国の国民的行事である秋夕(チュソク)の休暇も終わった9月下旬のソウルは時折冷たい雨も降り、朝夕は寒いほどの陽気。今回は5本の韓国映画を見た。その中から印象に残った2本を紹介する。


『私の家』


 『わたしたち』(2016年)の感動も記憶に新しいユン・ガウン監督の新作ということで期待しつつ劇場へ。

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『私の家』

 両親がいつも喧嘩ばかりしている小学生の女の子ハナ(キム・ナヨン)の家庭。兄との関係もギクシャクしている。友達のユミ(キム・シア)・ユジン(チュ・イェリム)姉妹の家は引っ越しばかりしていて落ち着かない。そんな3人はいつしか行動をともにするようになり、かけがえのない友情を育んでゆく。ハナは昔行った家族旅行の写真を大切に持っており、また家族旅行に行こうと母親にせがむが、いつもはぐらかされ、よい返事がもらえない。そんなハナは料理が得意で、さまざまなメニューに挑戦し、ユミたちにふるまったりしている。

 ある日、家族旅行を諦めきれないハナは、ユミ姉妹と連れだって「プチ家出」ともいえる冒険の旅に出かける。バスを乗り継いでたどり着いた海辺の街で夕方になり、3人は不安から言い争いになるが、空き家になったテントを見つけて仲良く一夜を過ごす。帰宅したハナを迎えた家族は家出をとがめるが、心の底では怒っていない様子。ハナが作った食事を前に「一緒にご飯食べよう。そして、家族旅行の計画たてよう」と笑顔で話すラストシーンを迎える。

 全編を通して、辛い状況でも明るさを失わない、ハナの穏やかで素直な表情が印象的な作品だ。ユミ姉妹を含め、すれたりませたりすることのない子どもらしいピュアなたたずまいは爽やかで、見る者の心を温かくさせてくれる。そんなハナの生き方が大人たちを変えていく希望が感じられるラストシーンだ。

 様々なシーンで監督の温かいまなざしが感じられる。子どもたちの生き生きとした表情を引き出すユン・ガウン マジックに大いに心を揺さぶられる92分だ。そして、見た後、誰かに感想を語りたくなる。『わたしたち』と同様に珠玉のような作品の誕生といえるだろう。たくさんの子どもたちに見てほしいという思いに駆られる。日本公開に期待したい。


『浮島丸』


 1945年8月24日に発生した、多数の朝鮮人を乗せて青森県大湊から釜山に向かっていた日本軍の輸送船の、舞鶴沖での沈没事件、いわゆる浮島丸事件がテーマのドキュメンタリー。この事件をめぐっては、1995年に日本で『エイジアン・ブルー 浮島丸サコン』として映画化されており、本作は2度目の映画化となる。作品冒頭で、日本のA級戦犯と昭和天皇の写真が紹介されるとともに、真珠湾攻撃や広島と長崎の原爆投下、ポツダム宣言の映像が流れるなど、時代背景の説明がひとしきり続く。さらに、事件の背景として、青森県内各地の鉄道や空港建設のために、多数の朝鮮人労働者が存在していたことを示す映像も紹介される。

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『浮島丸』

 作品は、1997年以降に取材した事件の生存者や遺族、日本人の目撃者、研究者などのインタビューをメインに謎に迫っていく。また、当時の日本軍の資料や戦後の日本外務省の資料も丹念に追跡し、事実に即して真相に迫る内容となっている。事件の原因は米軍が敷設した機雷というのが日米政府の公式見解だが、爆発前に乗組員がいち早く脱出したという証言もあり、何者かが故意に発生させた爆発の可能性も指摘されるなど、真相は謎に包まれている。また、事件後9年間、海底に沈んだ遺体の収容が行われなかったことから、犠牲者の数も諸説あり、少ない説で549人、日本の公式発表では3,800人、多い説では8,000人、乗船者は少ない説で3,725人、日本の公式発表では8,000人、多い説では10,000人とされている。

 この事件については、日本はもとより韓国での認知度も高くないようだ。実際に韓国で実施された街頭インタビューでも、事件を知っていると答えた市民はわずか6.2パーセントに過ぎない。ちなみに、同時に調査した南京虐殺の認知度は8割を超えている。本作の上映も繁華街からやや外れたシネコンでの小規模公開で、1日1回上映。公開4日目にもかかわらず観客もひと桁で、決して多くの関心を集めているとは言い難い状況だ。

 私も不勉強にして、本作で初めてこの事件を知り、衝撃を受けた。犠牲者の数には諸説あっても、事件があったこと自体は否定できない歴史上の事実であり、今後の真相究明が待たれるといえよう。

 本作のポスターは沈没した船と海を背景としているが、作品タイトルの上に「私たちは忘れてはいけない。我々民族8,000余名を水葬虐殺した」「日本は殺人者だ」という文字が並び、日本人としてはショッキングなものになっている。真相がはっきりしない中で、やや一方的な主張という指摘が予想されるコピーだ。

 気がつけば、毎月のように「抗日映画」を見ている。作品によっては、事実の誇張やナショナリズム過剰と思われるシーンに出会うことも少なくないが、知られざる歴史上の出来事を知るという意味では、こうした作品との出会いは意義のあることと考えている。本作を見た感想も同様だった。将来的に、日韓が協力して真相に迫る機会が訪れることを願いたいものだ。


Writer's Note
 hebaragi。「マンスリー・ソウル」をスタートしてから半年が経った。週末の2、3日でまとめて映画を見る時間は充実しており、毎回、新たな発見がある。一方、良い作品との出会いは嬉しいが、文字通りの一期一会であり、ほとんどの作品は日本公開にまで至らない現状は残念に思えてならない。


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