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Report マンスリー・ソウル 2019年8月 ~日本関連映画大盛況!! 『カメ止め』に大観衆

Text by hebaragi
2019/9/16掲載



 夏休みも終わり間近の8月末のソウルは爽やかな陽気で早くも秋の気配。今回は公開中の作品が多く、多彩なジャンルの韓国映画9本と日本映画1本を見ることができた。今回予想外だったのは、鑑賞した日本関連映画4本(『鳳梧洞(ポンオドン)戦闘』『金福童(キム・ボクトン)』『伊丹潤の海』『カメラを止めるな!』)がたくさんの観客で賑わっていたことだ。日韓関係は悪化しているが、日本への関心は変わっていないことに気づいたソウル滞在だった。以下、今回印象に残った作品6本を紹介する。


『鳳梧洞(ポンオドン)戦闘』


 日本統治時代の1920年。日本軍との戦闘で最初の勝利を成し遂げた独立活動家が率いた抗日ゲリラ団の活躍を描いた戦争ストーリー。いわゆる「抗日映画」のジャンルに入る。

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『鳳梧洞(ポンオドン)戦闘』

 「日本人の俳優が日本の軍人を演技すれば、映画に息づかいと価値が加わると思った」とウォン・シニョン監督が語るとおり、本作には日本人俳優3人が出演している。追撃隊長ヤスカワジロウ役で北村一輝、将校クサナギ役で池内博之、日本軍の行動に疑問を持つ少年兵士ユキオ役で現在日本公開中の新海誠監督アニメ『天気の子』にも出演している醍醐虎汰朗の3人だ。彼らの演技も本作の見どころのひとつといえよう。本作への出演にあたっては日本国内の一部メディアから批判もあったが、3人とも「多様な映画に出演して経験を積んだだけで、良い思い出だ」とコメントしている。とりわけ北村一輝の徹底した悪役ぶりは印象的だ。一方、植民地支配に対する抵抗という実態は理解できるが、戦闘シーンは激烈を極め、敵味方関係なく残酷な印象を残す。また、戦死した同志の遺骨を包んでいた太極旗を広げるラストシーンは、独立運動100周年の年とはいえ、ややナショナリズム過剰と感じた。いつの日かこのテーマの作品を日韓共同で制作する日が来ることを願いたいものだ。


『金福童(キム・ボクトン)』


 今年1月に逝去した元・慰安婦のおばあさん、キム・ボクトンさんが日本の謝罪を求めた27年間の闘いを描いたドキュメンタリー。先月紹介した『主戦場』同様に、日本の政治家の被害者への配慮を欠いた発言や、見るに耐えないヘイトスピーチ、日本のネトウヨから被害者支援団体に送られた脅迫状のシーンが登場し、目を背けたくなる。また、2015年のいわゆる日韓慰安婦合意が当事者の意思とは関係なく結ばれたものであるとの認識から、彼女が落胆していた映像が印象に残る。また、被害者としての立場にとどまらず、人権活動家として日本大使館前での「水曜集会」などの運動を続け、東日本大震災被災者への寄付をしたことでも知られる彼女が生涯をかけて訴えてきたものが胸に迫る作品だ。

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『金福童(キム・ボクトン)』


『伊丹潤の海』


 在日2世の韓国人建築家・伊丹潤(本名:ユ・ドンヨン)をテーマにしたドキュメンタリー。彼は東京に生まれ、静岡県清水市で青春時代を過ごし、清水の海と富士山を眺めて育ったという。日本を拠点に生活しながら常に韓国人としてのアイデンティティーを持ち、韓国籍を通したため、在日2世として様々な苦労があった模様。その後、建築家として実績を重ね、2010年に外国人として初めて日本の最高建築賞である村野藤吾賞を受賞。日本各地や韓国・済州島で数々のプロジェクトを手がけている世界的に著名な建築家である。

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『伊丹潤の海』

 本作では、彼の関わった様々な作品紹介とともに、彼の功績を知る建築家ら日韓の関係者たちのインタビューを交えており、彼自身の人となりにも触れることができる。彼の設計した建築物は、美術館、ビル、教会、ホテル、店舗、一般住宅など多岐にわたる。いずれの建物も木や石を積極的に活用し、色彩もモノトーンを基調としていて周囲の街並みや風景と調和しており、非常に美しい。また、本作を彩るBGMはピアノを中心としたセンスあふれるものであり、鑑賞後の余韻もさわやかだ。彼の実娘が故人となった父について語るシーンも印象的だ。「人生には苦しいことや悲しいこともあるが、それでも人生は素晴らしい」という彼の言葉は数々の建築にも反映しているようだ。機会があれば、彼の作品を実際に見てみたいという思いにかられる。


『カメラを止めるな!』


 2018年に大ヒットした日本映画。ゾンビドラマの撮影クルーがテーマということで、若い観客でほぼ満席の会場。ゾンビ映画というよりコメディの印象が強く、上映中は日本公開時と同様に笑いをとるシーンも多い。笑いのツボは日韓共通らしく、楽しい鑑賞になった。冒頭からラストまで、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭の上映会場を思わせる盛り上がりだった。なお、上映終了後、来場者特典として日本版のピンバッジのプレゼントがあったのは嬉しい企画だった。

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『カメラを止めるな!』


『EXIT』


 大学の山岳部でエースだったヨンナム(チョ・ジョンソク)は、就職もできず無職の日々。ある日、宴会場で母の古希の祝賀パーティーが開かれ、そこでスタッフとして働く山岳部の後輩のウィジュ(少女時代:ユナ)と再会する。パーティーの途中、謎の煙が発生して逃げる間もなく、都市全体が毒ガスで覆われてしまう。そんな中、ヨンナムとウィジュは山岳部で身につけたアクロバティックな技を駆使し、ビルの壁をよじ登るなどして宴会参加者を屋上に避難させる。その後、救助ヘリコプターがかけつけ、大半の参加者は救助されるが、ゴンドラの重量制限のため、ヨンナムとウィジュは屋上に取り残される。その後も毒ガスは広がり、ふたりはビルからビルに逃げ惑うことに。いよいよ絶体絶命になったふたりの運命は果たして?

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『EXIT』

 本作のタイトルは出口(EXIT)を求めて逃げ惑う人々をイメージしている模様。全編を通してハラハラドキドキの手に汗を握るシーンの連続。2012年公開のパニック大作『ザ・タワー 超高層ビル大火災』を彷彿とさせるパニック・アクション大作といえよう。なお、本作は公開1ヶ月となる8月第4週で観客動員800万人を突破したと報じられており、2019年夏公開作品の中でトップクラスの観客動員を達成している。夏の暑さを吹き飛ばすようなワクワクする楽しい作品内容が人気を集めていると言えそうだ。


『私だけいない。猫』


 それぞれの事情をかかえた登場人物たちを傍らで見守る猫たちのエピソードで綴る、4話オムニバスのファンタジードラマ。彼氏と別れたOL、サラリーマン、バレエ教室に通う小学生の女の子、妻と死に別れた中年男性。それぞれが猫との出会いで癒され、再生していく様子が丁寧に描かれている。登場する猫たちの表情が愛らしく、猫好きにはたまらない。心から癒やされる作品だ。

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『私だけいない。猫』


Writer's Note
 hebaragi。日韓を結ぶ定期便の減便・運休のあおりを受け、9月以降の「マンスリー・ソウル」の日程設定が困難になっている。フライトスケジュールと休暇との兼ね合いを考えて調整に奮闘しているが、非常に苦慮している状況。せっかく始めたことなので、なんとか続けていきたいと思うとともに、一日も早く関係者の叡知を集めて関係改善が図られることを願うばかりである。


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