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Review 『ネバーエンディングストーリー』

Text by 井上康子
写真提供:福岡アジア映画祭
2012/8/30掲載



 偶然、同じ病院で同じ時に余命数ヶ月であると宣告された男女が恋におちていく。真面目で何事も計画的に処理しなくては気がすまない銀行員の女性ソンギョン(チョン・リョウォン)と弟夫婦の家に寄宿して気楽にその日暮らしをしている男性ドンジュ(オム・テウン)という対照的な生き方をしてきた、本来であれば決してどちらからも好きになることはなかったはずの男女が、余命数ヶ月という特異な状況を共有したことから、互いに恋愛感情を抱くようになる。ティーチインでチョン・ヨンジュ監督は「病気を劇的な瞬間として設定しました」と話していたが、韓国映画やドラマでよく見受けられる「難病もの」の湿っぽさはなく、病気という劇的な状況に置かれたことにより、予想だにしなかった恋におち、思いもよらなかった行動を取るという、心の変化を肯定的に描いている。設定は作為的であるが、その後の二人の心の変化はたいへん自然で納得できる描き方になっており、この作品が長編デビュー作である監督の力量が伺え、グランプリ受賞も妥当と思われた。

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 ソンギョンは余命わずかと知らされると、ドンジュを運転手にして、納骨堂を探し、死装束を求め、棺桶を選ぶ。専門店で死装束を試着したソンギョンがニッコリとポーズをとってドンジュに見せるシーンはウエディング・ドレスを試着しに来たカップルの姿そのもので、違和感による笑いを誘うと同時にソンギョンの健気さやかわいさを見せて、監督のセンスの良さを感じる名シーンである。ドンジュは本来の計画性のなさもあり、最初は死の準備をするソンギョンに否定的だったが、彼女の健気さにひかれるようになり、ソンギョンも自分の計画に付き合ってくれるドンジュの暖かさに安らぎを見出し彼にひかれるようになる。一攫千金を夢見るドンジュは毎週ロトを買い、当選番号が発表されるテレビ番組を見ることを欠かさず、生真面目なソンギョンは最初はあきれていたが、ドンジュを愛し始めると運転手をさせていても彼が番組を見逃がさないようにと気にかけるようになる。ソンギョンの機転でテレビのある食堂に入った二人はうれしそうに並んでロトの番組に見入る。自分の行為をドンジュが喜んでくれたという満足感にあふれてテレビに見入るソンギョンは人を好きになった時のキラキラした高揚感に包まれていて本当に可愛らしい。「恋が人に与える奇跡を表現したかった」と監督は語り、ここがその奇跡を表現したシーンだと思えたが、嫌悪していたロトの番組でさえ、満足を得る対象になるというのはまさに「恋が人に与えた奇跡」だろう。ドンジュもソンギョンを好きになったことで自分のことだけを考えていた気楽なその日暮らしの生活から抜け出し、自分の余命以上にソンギョンの健康を気遣うようになる。

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チョン・ヨンジュ監督

 ソンギョンを演じたチョン・リョウォンのキャスティングについては、「もともと歌手をしていたときのクールな印象や、おでこが出ているところにしっかりした女性のイメージを感じて彼女が合うと思いました」、また、ドンジュ演じるオム・テウンについては、「純粋で優しい眼をしていてこのキャラクターにぴったり」とのコメントが監督からあったが、特にチョン・リョウォンは内心は不安で一杯なのに死に向けての準備をきちんとすることで死へ向かう哀しみに耐えようとする地に足のついたしっかりさをうまく表現している。

 二人は病気を抱えたままだが、気持ちの上では病気に負けず、明るいエンディングを迎える。劇的なトラブルに見舞われても人生に肯定的に向き合うというメッセージが最後まで伝わってくる。


『ネバーエンディングストーリー』
 原題 ネバーエンディングストーリー/英題 Never Ending Story/韓国公開 2012年
 監督 チョン・ヨンジュ 主演 オム・テウン、チョン・リョウォン
 第26回福岡アジア映画祭2012「コンペ作品」部門上映、「福岡グランプリ2012」受賞作品
 映画祭公式サイト http://www2.gol.com/users/faff/faff.html


特集 第26回福岡アジア映画祭2012
 福岡アジア映画祭とは?
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