HOME団体概要support シネマコリア!メルマガ登録サイトマッププライバシー・ポリシーお問合せ



サイト内検索 >> powered by Google

■日本で観る
-上映&放映情報
-日本公開作リスト
-DVDリリース予定
-日本発売DVDリスト
■韓国で観る
-上映情報
-週末興行成績
-韓国で映画鑑賞
■その他
-リンク集
-レビュー&リポート
■データベース
-映画の紹介
-監督などの紹介
-俳優の紹介
-興行成績
-大鐘賞
-青龍賞
-その他の映画賞


Report 第23回釜山国際映画祭(2) ~巨匠イム・グォンテクに遭遇…『102番目の雲』

Text by Kachi
2018/12/9掲載



 イム・グォンテク監督の102作目である『火葬/化粧』の撮影舞台裏を捉えたドキュメンタリー映画『102番目の雲/Cloud, Encore』で、一瞬取材を忘れるサプライズがあった。上映後、本ドキュメンタリーを手がけたチョン・ソンイル監督のQ&Aの直前で誰かが紹介された。後方の座席にいた私は、観客席の中央付近でゆっくりと立ち上がり、脱帽して挨拶した人物が、イム・グォンテク監督その人だとすぐに反応できなかった。韓国映画界のレジェンドの登場に会場が色めき立つ。釜山に行って最初に出くわした映画スターがイム・グォンテクとは! さすがに体力は年相応の様子だったが、映画を観た限りでは、細部への目配せはますます冴え渡っている。ちなみに私は見逃してしまったが、今映画祭では本作の前編であり、異なるアプローチで制作された『緑茶の重力/Gravity of the Tea』も上映されている。

biff2018b.jpg
『102番目の雲』

 『火葬/化粧』は、2015年に韓国で公開された。癌で余命いくばくもない妻と、自身の課に新しく配属されてきた若い女性部下との間で揺れ動く、化粧品会社重役の中年男性の心情を綴っている。

 重役として個室にいる部長役のアン・ソンギが、観葉植物の隙間から部下をこっそりとのぞき見する。何度かカットがかかり、視線の高さについて微妙な調節が要求される。下品さや卑わいさは不思議と感じない。舞台裏を知って感じたのは、3年前に『火葬/化粧』を観たときに感じた官能美が、視線の語りに支えられていることである。

 『火葬/化粧』で特に印象深かったのは、死期が近づき一人で排泄も困難になった妻を、夫が入浴させるシーンだった。妻の汚れた陰部を夫が洗おうとするのを、羞恥心から力ない手で拒む妻の慟哭が胸に響く。どんな姿を晒そうとも、愛する伴侶として夫から認めていてもらいたいという欲求。迫真という一言では言い表せない演技には、鑑賞当時も畏敬の念を抱いたのだった。『102番目の雲』は、妻を演じたキム・ホジョンの、女優として最も過酷な本シーンの撮影前の強ばった表情をとらえている。イム・グォンテクは彼女に、懇切に重要さを伝える。撮影していて気分のいいシーンではないことは確かだ。でもこれは、彼女にとっての“化粧”なんだと。化粧とはただ美しく飾るばかりではない。性は人間の生そのものと分かち難いという事実に、真剣に向き合うがための描写なのだ。

 『火葬/化粧』そのものを観ていないとなかなか理解の難しいドキュメンタリーではあるが、むしろ今こそ、『火葬/化粧』『緑茶の重力』とともに上映されるべきではないだろうか。『風の丘を越えて~西便制』の劇中歌の「夢、夢、全て夢」という一節が、撮影の合間にうたた寝をするイム・グォンテクの姿に重ねられるシーンの茶目っ気も良かった。


特集記事
 Report 第23回釜山国際映画祭(1) ~ふたたび自由を勝ち得て、豊穣な映画の大海へ
 Report 第23回釜山国際映画祭(2) ~巨匠イム・グォンテクに遭遇…『102番目の雲』
 Report 第23回釜山国際映画祭(3) ~哀れさと傷に寄り添うこと…『ヨンジュ』『呼吸』
 Report 第23回釜山国際映画祭(4) ~歴史修正主義と闘い、ジェンダーロールの呪いを解く…『キム・グン』『記憶の戦争』『軍隊』『ボヒとノギャン』
 Report 第23回釜山国際映画祭(5) ~諦めきれない私たちの焦燥…『辺山』『バーニング』
 Report 第23回釜山国際映画祭(6) ~BIFF2018最高の1本…『ハチドリ』

第23回釜山国際映画祭
 期間:2018年10月4日(木)~10月13日(土)
 会場:釜山市内各所
 公式サイト http://www.biff.kr/


>>>>> 記事全リスト


関連記事
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント


Copyright © 1998- Cinema Korea, All rights reserved.
Powered by FC2 Blog