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Report 福岡インディペンデント映画祭(FIDFF)2018 ~釜山独立映画祭作品の物語性を味わい、ヒョン・スルウ監督新作に笑う

Text by 井上康子
写真提供:福岡インディペンデント映画祭事務局
2018/9/30掲載



 第10回を迎えた福岡インディペンデント映画祭2018(以下、FIDFF)が、9月6日~9月11日に福岡市内で開催された。昨年は募集がなかったコンペが再開、若手映像制作者からの応募157作品を中心に、交流がある釜山および台湾の映画祭作品、2016年に『アレルギー』で最優秀作品賞にあたるグランプリを獲得したヒョン・スルウ監督新作などの招待上映が行われた。

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授賞式の模様

今年の受賞作:AI登場の『センターライン』がグランプリ獲得


 グランプリを獲得した『センターライン』(下向拓生監督)は、近未来を舞台に交通事故を起こした自動運転AIを起訴しようと画策する検察官が、実は感情を持っていたAIと交流するようになるまでを刑事ドラマ仕立てで描いた老若男女楽しめる作品だった。60分部門グランプリ『戻る場所はもうない』(笹井歳春監督)は、若年性アルツハイマーを発症した妹と彼女のために追い込まれていく兄を縦糸に、彼らの農園で働いていた外国人技能実習生姉弟の悲劇を横糸に描き、深い余韻を残した。100分部門グランプリ『ハッピーアイランド』(渡邉裕也監督)は、がんばりの利かない若者が福島の原発被災農家の人々に支えられ、成長するまでを見せる青春映画で好感が持てた。技術賞『老ナルキソス』(東海林毅監督)は、ゲイでマゾの老人を一般的イメージと真逆の明るい花でデコレーションし、見とれる程の美しさに仕上げていた。アクション賞『デッドコップ』(中元雄監督)は、連続殺人事件を追う松田優作もどきの刑事がブルース・リーのアクションをかます。パロディの連続に場内は大爆笑だった。

 レインボー賞(LGBTを扱った作品が対象)『カランコエの花』(中川駿監督)は、女子高校生の仲良しグループ内で、相手への思いを募らせた生徒はその気持ちに正直でいたいがために、レスビアンであることを公表する。その真っすぐさが素敵だった。重厚な存在感を放っていたのが最優秀ドキュメンタリー『葛根廟事件の証言』(田上龍一監督)。既に、2017年に第20回ゆふいん文化・記録映画祭で第10回松川賞(優れた記録映像作品に贈られる)も受賞している。昭和20年の終戦直前に旧満州からの引き揚げ避難中だった日本人が旧ソ連軍の襲撃で1,000人以上が亡くなった事件を生存者たちの証言で構成する。生存者はその後も辛苦の逃避行を続け、人生を変えられ、生き残ったことへの負い目から逃れられない。声を出せない沈黙の時間は証言者の心が慟哭している時だ。文字の記録からでは伺えないものが映像によってこそ残されていた。


ヒョン・スルウ監督特集:笑って笑って、あり得ない展開を楽しむ


 2016年にグランプリを獲得した『アレルギー』と新作2本が上映された。『それは牛のフンの臭いだった。』は、あり得ない展開がお決まりである韓国ドラマのパロディ仕立てで、強い友情で結びついていた女性2人が、車内でのおならを互いに相手のものだと言い張って大喧嘩に発展、驚きの結末を迎える。『彼女の別れ方』では、ゴミを捨てるにもポーズをつけて自撮りする、自撮りマニアの彼女に辟易した男性が別れを切り出す。外側を見せることに終始し、中身が空っぽであることを笑い飛ばしていた。場内は監督作品のファンが集い、監督とのQ&Aの時間も上映時間同様に皆が大笑いで楽しんでいた。

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『それは牛のフンの臭いだった。』

釜山独立映画祭の優秀作品:物語性・アート性を堪能


 釜山の映画祭との交流は初回から継続されており、今年も昨年同様に釜山独立映画祭(以下、IFFB)の優秀4作品が招待上映され、監督たちがゲストとして登壇した。

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韓国から来福した監督たち

『十月の梅雨』(イ・ギナム監督)
 「梅雨によって落ち込んでいる気持ちを表現したいと思った」という監督の言葉通り、自立を模索する主人公の焦燥感が効果的に伝わってきた。雨音とセリフが干渉しあわない、釜山国際映画祭の会場となっている「映画の殿堂」で支援を受けたサウンドの良さについても「インディペンデントでここまでできるとは!」と高い評価を受けた。

『家の中の家の中の家』(ジョン・チャンヨン監督)
 「大学卒業作品で、その時の父や自分に対する嫌悪感を記録として残しておきたいと思った」という動機で作られ、監督家族の日常を見せた。父に嫌悪を抱きつつも、承認されたいと願う複雑な思いがヒリヒリと伝わってくる。

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『SEPTEMBER』

『SEPTEMBER』(シン・ナリ監督)
 母が癌に侵されていることを知った実在の写真作家が、母と自分の写真撮影を始める。本作はその作業過程をリアルにではなく、アートとして写し取ったドキュメンタリー。海に裸体を浸らせる母娘の手のしぐさや後ろ姿から互いへの思いが滲み出る。

『母と風景』(キム・ミングン監督)
 山里に住む母を兵役入隊前の息子が訪れるが、母は不在。しかし、母の周辺の人物や母の暮らす家から、息子は母の生き方に共感していく。「映画の殿堂」のワークショップで作った初監督作品で、脚本も監督が手掛けている。雪の釜山を背景に、母を登場させずに母の凛とした生き方を観客にイメージさせる物語が素晴らしかった。


台湾のフォルモサフェスティバル国際映画祭との交流が始動


 FIDFF2016で「台湾青春、未来映画祭」からの招待上映作品監督としてゲスト来福したMark Ang氏が発起した「フォルモサフェスティバル国際映画祭(福爾摩沙國際電影節 以下、FFIFA)」は、現在約60の国際映画祭組織と協力し、2017年には11ヶ国の作品上映を行うという国際交流の実績を持つ映画祭。今回はFFIFA作品が招待上映され、上映後の壇上ではFIDFFとMOUが締結された。12月に開催されるFFIFAではFIDFF作品が招待上映されるそうだ。

 FFIFAから招待上映されたアニメ5作品、『The house』は少女の魂の彷徨を、『ego』は人の意識をファンタジックに描き、『WALL』『Fundamental』『Crack』は政治・宗教・男女の分断をアニメでなくてはできない表現で見せた。実写4作品、『The play』は経済格差を超える少女の友情、『Way Back Home』は受験のために遠距離通学を強いられる小学生、『Tidal』は海で生きる男性同士の愛を見せ、『Story Unbridled』は夢の意味を考えさせた。いずれも、現代社会の問題に切り込もうとする勢いのある作品だった。


映画人としての個性を磨く


 犬童一心監督による受賞作品講評では作品の個性が語られ、今後の方向性を持つことを促された。なるほど、同じ刑事ドラマ仕立てであっても、『センターライン』はオーソドックスな展開に心地良さを感じ、『デッドコップ』はパロディとして楽しむ作品で全く異なる個性であった。FIDFFでさまざまな作品に触れて自らの個性を知り、己をいかに育むかの示唆を得られたことだろう。

 10月4日~7日はFIDFFおかわりが開催され、7日には斎藤工監督作品『blank13』が特別上映される。


福岡インディペンデント映画祭2018
 期間:2018年9月6日(木)~9月11日(火)、おかわり10月4日(木)~10月7日(日)
 会場:福岡アジア美術館
 公式サイト http://fidff.com/

Writer's Note
 井上康子。釜山独立映画祭作品『母と風景』では釜山の雪景色に魅了された。冬の韓国旅行は寒いが、寒風にさらされながら歩くと、これまでの韓国映画の名シーンが頭に浮かんでくる。主人公たちのように頑張らなくてはと身が引きしまる思いを味わえるのが好きだ。


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