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Review 『ソウル・ステーション パンデミック』 ~新・悪意の映画作家、ヨン・サンホの真骨頂

Text by Kachi
2017/10/5掲載



 『新感染 ファイナル・エクスプレス』日本公開時のインタビューで、ヨン・サンホは父親ソグの人物設定について、「参考にしたのが是枝裕和監督の『そして父になる』だ」と語っていた。『そして父になる』のクライマックスでは、出生児の取り違えで息子が別人の子どもであることを知った仕事人間の父親が、上下に平行に走る川沿いの道を歩きながら、自身の思いを心のままに血縁のない息子へ吐露する。やがて二人の歩みが重なり、父子は和解へと至っていく。『新感染』にも父としての思いがあふれる瞬間があるが、刹那にゾンビになり果てるという点が、実にヨン・サンホらしい絶望の表現だと感じた。

seoul_station.jpg

 『新感染』の前日譚として制作されたアニメーション映画『ソウル・ステーション パンデミック』は、まもなく夕暮れを迎えるソウル駅から始まる。社会福祉の重要性を口熱くさく議論する若者二人が、すぐそばにいる瀕死のホームレスに「汚い浮浪者め」と吐き捨てている。家出少女ヘソン(声:シム・ウンギョン)は、ヒモのキウン(声:イ・ジュン)から売春を強要されて逃げ場がない。件のホームレスは、処置を受けられないまま息絶えるが、遺体が忽然と消えてしまう…。

 夜の闇。暗い地下道。本作は舞台からして陰惨さが漂い、同じ作者によるゾンビ映画でも『新感染』とは趣きが異なっている。こちらの感情移入を全く誘わない、不安にさせるようなタッチのアニメーションも含めて、ヨン・サンホとは、人間の悪意を煮詰めて、最も醜い形で表出する天才だったのである。観客は、冒頭から終幕まで容赦なきヨン・サンホ節を突きつけられる。

 この作品で気づいたのは、劇中人物が逃げたり、殴られたりするシーンで、まるで実写映画がそうなるようにブレたりボケたりする効果が使われていることだ。『新感染』を観た時、人物のバストショットが多く、まるでコマ割りされた画面に配置されているかのように感じたので、アニメーションのように実写を撮っているのだと思い込んでいたが、むしろ実写的な手法を取り入れたアニメーション作家なのかもしれない。『新感染』が実写第1作でこれほどの成功を収めたのも、うなずけるというものである。

 2013年の「花開くコリア・アニメーション」で、監督の出世作『豚の王』を観終わった時、心が底の方から冷たくなってくる思いがした。『ソウル・ステーション パンデミック』は、その時の記憶がよみがえってくる出来映えだった。この映画は、ヨン・サンホの真骨頂なのである。


『ソウル・ステーション パンデミック』
 原題 서울역 英題 Seoul Station 韓国公開 2016年
 監督 ヨン・サンホ 声優 リュ・スンリョン、シム・ウンギョン、イ・ジュン
 2017年9月30日(土)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
 公式サイト https://pandemic-movie.com/


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