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Review 『朴烈(パク・ヨル)』 ~日本人女性を同志にした独立運動家の熱い闘い

Text by 井上康子
2017/8/16掲載



 『空と風と星の詩人~尹東柱の生涯~』に続き、イ・ジュニク監督が日本の植民地下に実在した人物を描いている。前作が詩人、尹東柱(ユン・ドンジュ)を主人公にした静謐なイメージの白黒作品であったのに対して、本作は独立運動家にしてアナーキストの朴烈(パク・ヨル)を主人公に据えた、熱く、原色が目に焼き付く作品だ。

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 登場する人物や出来事は事実に基づいていると監督は強調している。独立運動家の愛人としてはたいへん意外であったが、ヨルの愛人にして同志が日本人だったというのも事実だ。金子文子というアナーキストで、二人の出逢いは運命的で印象深い。ヨルは東京で車引きをして生計を立てているが、朝鮮人と分かるや、日本人客は正当な車代を払わないばかりか彼を足蹴にする。自身の境遇を書いた「犬ころ」という詩が同人誌に掲載されるが、それを読んだ女給の文子は彼こそが生涯の伴侶だと確信し、同棲を申し出る。文子は親に捨てられ、朝鮮の親戚に売られ、虐待の中を生き延び、権力を不当に行使する者に対する怒りを煮えたぎらせていた。まさに二人は同志だった。

 主なストーリーはこういうものだ。関東大震災後、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」等のデマが広まり、6千人余りの朝鮮人が虐殺された。日本政府は虐殺を隠蔽するために、ヨルが皇太子を暗殺しようとしたという事件をでっちあげ、そちらに関心を集めようとする。ヨルと文子は状況を逆手に取り、冤罪であるのに罪を認め、裁判を権力者の不当性と蛮行を訴えるための公的な場として利用し、さらには独立運動の英雄になろうとする。

 パク・ヨルは韓国でもそれ程著名な人物ではないようだ。監督は約20年前に『アナーキスト』(2000年)を製作中に彼を知り、その人生と思想に魅了され、考証を重ねて作品にした。これまで表舞台に登場しなかった彼の真実の姿を見せようという気迫を感じることができる。ヨルと文子が拘束され、裁判にかけられる過程は、日本の法廷で占領下の朝鮮人がこのように堂々と大胆な行動を取ることができたのだと誰もが驚く痛快なものだが、不自然さを感じさせることはない。また、監督の過去作品『王の男』(2005年)、『ソウォン/願い』(2013年)のように、力を持たない者たちの底意地を丁寧に描いて見せて、真骨頂を発揮している。

 主演のイ・ジェフンは足蹴にされ、殴られる程に爆発的に熱を放つヨルを文字通り熱演した。ヨルと対等のエネルギーを放っていた文子役のチェ・ヒソは日本在住歴があり、自然な日本語を披露。彼女は『空と風と星の詩人~尹東柱の生涯~』でも主人公を支える日本人女学生役で出演している。

 ヨルと文子を翻弄した運命は日韓の不幸な歴史そのものだ。見終わって、それを思うと何とも居たたまれない気持ちがしたが、ヨルと文子が見せた、国同士が不幸な関係の時であってもそれを易々と越えてしまう、人と人の絆の強さに救いを見出せた思いがした。


『朴烈(パク・ヨル)』
 原題 박열 英題 Anarchist from Colony 韓国公開 2017年
 監督 イ・ジュニク 出演 イ・ジェフン、チェ・ヒソ、キム・イヌ
 日本未公開作

Writer's Note
 井上康子。抵抗の対象は日本ではなく、日本の権力者と捉えている『朴烈(パク・ヨル)』の登場人物たちを見て、約30年前にソウルのタプコル公園で声をかけてくれた老人を思い出した。彼は叔父が日本留学中に憲兵に殺害されたことも終始穏やかに語り、自販機のコーヒーを御馳走してくれた。


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