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Review 『きらめく拍手の音』 ~健聴の娘が描いた、ろう両親の完璧な世界

Text by 井上康子
2017/5/28掲載



 健聴者は両手をパチパチたたく聴覚的な拍手をするが、ろう者は両手を上げて手首を回しながら振る。この視覚的な拍手は、あたかも星が輝いているようで美しい。本作はイ=キル・ボラ監督によるドキュメンタリーで、冒頭のこの拍手によって、監督は「ろう者とは視覚による文化を持った人々なのだ」と軽やかに宣言し、ろう両親の手話によるにぎやかな会話が飛び交う日常と家族のこれまでを追っていく。

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 ろう者の伝統的な手話では、手の動きの他にさまざまな表情の変化が文法的に意味を持っている。表情の変化が少ない健聴者の会話と比較すると、圧倒的にインパクトがあり、引き付けられる。結婚までの経緯の中で、父は若き日にサッカー選手として活躍していたが、ろう者の国際試合から帰国した空港に出迎えを約束した母が来ていなかったのでガーンとショックを受けたことを、そして、母は美貌でラブレターが山のように届いていたので読まずに捨てたことを語ったが、表情の豊かさと簡潔な手指の動きのおかげで、まるで再現フィルムを見せられたように情景が浮かんでくる。

 二人のこれまでは、聴こえないための苦労、IMF危機時の父の失業など困難が多かった。監督が生まれた時は夜中に赤ん坊の泣き声に気づけるように補聴器を装用すればかすかに音が聞こえる父が補聴器を耳に固定するようにしたものの、両親はすっかり寝不足になった。監督と弟が歩き始めると母は家事をしながらも片時も目を離さなかった。失業した父が、たい焼き屋台を始め、他の誰も店を出さなかった大雨の日にも店を出したことを振り返り、母は「父さんは害虫よりもしぶとい」とあっけらかんと言い放ち、二人は笑い合う。強固に結びついた、たくましい二人が、表情豊かに手話で会話をする世界は何とも幸福感に満ちていて、監督の言葉通り「完璧な世界」だ。聴こえないという障害はあっても二人の世界に欠落はない。

 両親は明るく、世の中を割り切って生きてきたが、彼らの溢れんばかりの愛情を受けて育った監督と弟はコーダ(CODA, Children of Deaf Adults:ろうの親を持つ健聴の子)としての葛藤を抱えていく。監督は親の通訳者として、9歳の頃には銀行に借金の額を聞き、引越し前は大家に家賃と保証金を尋ねる役目を負わざるを得なかった。「障害者の子だから問題を起こした」と言われないように二人は小中学校では常に模範的に振る舞う。だが、高校入学になると、親の障害から逃れようと二人共が全寮制の学校を選択し、早くに親元を離れてしまう。

 希望校に進学したが監督は「さらに広い世界を見たい」と高校中途で東南アジアへの旅に出る。そして、広い世界を見たことで、ろう者は弱者ではなく、誇り高き存在なのだと気づく。みずみずしい映像を通して、自らの気づきを知らしめんという意思がひしひしと伝わってくる。あるコーダの成長譚でもあることがこの作品の大いなる魅力だ。


『きらめく拍手の音』
 原題 반짝이는 박수 소리 英題 Glittering Hands 韓国公開 2015年
 監督 イ=キル・ボラ 出演 イ・サングク、キル・ギョンヒ、イ=キル・ボラ、イ・グァンヒ
 2017年6月10日(土)より、ポレポレ東中野ほか全国順次公開
 公式サイト http://kirameku-hakusyu.com/

Writer's Note
 井上康子。福岡在住。2009年にアジアフォーカス・福岡国際映画祭で上映された、マレーシアのヤスミン・アフマド監督長編遺作『タレンタイム』が8年を経て劇場公開中。異民族の世界に加え、ろう者の世界も肯定する作品の暖かみを8年前以上に私たちは求めているのではないだろうか。


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