News ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2017 ラインナップ発表 ~『哭声/コクソン』『心に吹く風』特別招待、ナ・ホンジン監督来夕、韓国(関連)映画14作上映
Text & Photo by hebaragi
2017/1/24掲載
3月2日から開催される「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2017(以下、ゆうばりファンタ)」のラインナップ記者会見が札幌市内で行われた。今回のキャッチコピーは昨年に続き「世界で一番、楽しい映画祭」。長い間、多くの映画人・映画ファンに愛されてきた「ゆうばりファンタ」も27回目を迎える。期間中は、夕張市内2会場5スクリーンで86本の作品が上映されるほか、スペシャル企画も多数予定され、例年同様に充実した内容となった。

映画祭ポスター
今回の映画祭は5部門から構成されている。劇場公開前の話題作をいち早く紹介する「特別招待作品部門」、映画祭おすすめのファンタスティックな作品を上映する「ゆうばりチョイス部門」、レイティングがかけられた作品を集中して上映する「フォービデン・ゾーン」を含む「企画・協賛部門」に加え、コンペ部門として中長編を対象とした若手の登竜門的な存在となっている「オフシアター・コンペティション部門(以下、オフシアター部門)」と、今後が期待される若きクリエイターの短編を紹介する「インターナショナル・ショートフィルム・コンペティション部門(以下、ショートフィルム部門)」がある。オープニング作品は、『君の名は。』に続く大ヒットが期待され、高畑充希ら豪華声優陣でも話題のアニメーション『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』。また、クロージング作品として、韓国映画『哭声/コクソン』が上映され、ナ・ホンジン監督と出演の國村隼がゲスト参加する予定だ。
今回も大きな見どころは新たな才能の発掘を目的としたコンペ部門だ。オフシアター部門では海外からの136本を含む532本の応募があり、このうち7本が審査対象として選ばれた。また、ショートフィルム部門では海外からの104本を含む351本の応募作品から20本が審査対象となっている。
オフシアター部門の審査委員長には映画監督・内藤誠、審査員には、チェ・ヨンベ(富川国際ファンタスティック映画祭・実行委員長/プロデューサー)、ディミトリ・イアンニ(KINOTAYO現代日本映画祭実行委員)、光武蔵人(監督)、ほたる(女優)の各氏が名を連ねている。プログラミングディレクターの塩田時敏氏が「オフシアターの上映作品は、その後、劇場公開されるものも多く、若手の登竜門的存在となっている」と述べているように、今回も秀作揃いだ。また、ショートフィルム部門では、松永大司(監督)、八代健志(アニメーション監督)、武田梨奈(女優)の各氏が審査にあたることになっている。

記者会見の模様
期間中に上映される韓国(関連)映画を紹介したい。
特別招待作品部門では、『チェイサー』『哀しき獣』で知られるナ・ホンジン監督最新作『哭声/コクソン』がクロージング作品として上映される。本作は、2016年カンヌ国際映画祭で好評を博するとともに、韓国でも観客動員数700万人に迫る大ヒットを記録した。さらに、韓国の青龍映画賞で男優助演賞・人気スター賞の2冠受賞となった國村隼の怪演でも話題沸騰のスリラーだ。また、大ヒット・ドラマ「冬のソナタ」のユン・ソクホ監督作品『心に吹く風』も上映される。本作は、北海道・富良野と美瑛を舞台にした感動のラブストーリーとなっており、地元ロケ作品ということで観客の関心を集めることだろう。
オフシアター部門では2本の作品が上映される。『カーネルパニック』(チョウ・ジンスク監督、オーストラリア在住)は、未来と過去に生きる二人の男の運命が複雑に絡みあっていくストーリー。また『ベートーベン・メドレー』(イム・チョルミン監督)は、韓国の演歌「トロット」をテーマにしたユニークな設定の作品だ。
ショートフィルム部門では4本の作品が上映される。『牙』(シン・ジョンフン監督)は、餓死寸前の女の吸血鬼の苦闘を描く。『ホームレス 怒りの追跡者』(キム・ボウォン監督)は、連続誘拐を目撃したホームレスの女性が主人公だ。『Green Light』(キム・ソンミン監督)は、核戦争後に生き残った女性と一台のロボット兵士のアニメーション。『M.boy』(キム・ヒョジョン監督)は、ある秘密を持つ孤独な少年が主人公のストーリーとなっている。
さらに、ゆうばりチョイス部門でも4本の上映が予定されている。『演技の重圧』(チョン・グヌン監督)は、同じ舞台に10年間立ち続けてきた舞台俳優のもとに映画主演の話が舞い込むが、そこにライバルが現れる、というストーリー。また、「ショートフィルム・ショウケース」として、2010年のゆうばりファンタで『壁』がヤング・オフシアター・コンペティション部門の北海道知事賞を受賞したヒョン・スルウ監督作品が3本上映される。『彼女の別れ方』は、自撮りマニアの彼女に付き合うのに疲れてきた主人公を描いている。『それは牛のフンの臭いだった。』では、車中で発生した臭いをめぐって三人が疑いあう。『アレルギー』は、部屋の模様替えをしようとした主人公と、彼女が仕方なく呼んだ同級生の物語。
昨年からスタートした企画・協賛部門のうち「フォービデン・ゾーン」では2本が上映される。2015年の「ゆうばりファンタ」で『メイドロイド』が上映され好評を博したノ・ジンス監督の『愛されない女』は、離島に向かうフェリーで出会った男女と、男の父親をめぐる異様な三角関係を描いている。このほか、『アウトドア・ビギンズ(原題)』(イム・ジンスン監督)も上映される。
以上のように韓国(関連)映画は14本を数える。韓国映画ファンにとっては作品鑑賞も忙しくなりそうだ。
記者発表で挨拶に立った映画祭名誉大会長の鈴木直道・夕張市長は「映画祭は2008年に復活して10回目の開催を迎えることができた。また、映画祭最終日の3月6日は夕張が財政再建団体に認定された日で、今年は(映画祭)期間中に記念すべき日を迎える。今年から北海道では初の学生ボランティア(北海学園大学、札幌大学)の単位認定も始まり、ゆうばりの“リ・スタート”を象徴する年でもある。ぜひ今年も皆さんに足を運んでいただき“世界で一番、楽しい映画祭”を目指していきたい」と述べ、ゆうばりファンタへの期待を話していた。映画祭期間中、市内のあちこちで監督や俳優などゲストとの交流が可能な小さな街ならではの良さが、ゆうばりファンタの魅力だ。今回も素敵な作品や映画人との出会いに期待したい。
ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2017
期間:2017年3月2日(木)~3月6日(月)
会場:北海道夕張市内
公式サイト http://www.yubarifanta.com/
Writer's Note
hebaragi。ゆうばりファンタでは、常連参加のゲストとの再会も楽しみの一つだ。観客はもちろんのこと、ゲスト参加の映画人からも「一度参加すると、また行きたくなる」という言葉を聞くのは嬉しい限り。
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