Report 『かぞくのくに』 東京初日舞台挨拶
Reported by Kachi
2012/8/9掲載
ドキュメンタリー『Dear Pyongyang ─ ディア・ピョンヤン』でデビューし、最愛の姪をカメラでとらえた『愛しきソナ』など自身の家族を撮影し続ける在日コリアン2世の梁英姫(ヤン・ヨンヒ)監督が、初めて実体験をフィクションとして映画化した『かぞくのくに』が、8月4日(土)にテアトル新宿で封切られた。立ち見も出た初日、舞台挨拶には兄・ソンホ役の井浦新、妹・リエ役の安藤サクラ、そして梁英姫監督が登壇した。

初日を迎えて
安藤:とにかく現場の思い、監督の熱意にやられた映画作りでした。監督の思いは世界に向いています。是非みんなに見てもらいたいです。
井浦:今日は、この映画が一人で歩いて行く記念すべき日。観た皆さんの心に新しい何かが生まれていたら幸いです。そして是非周囲の人に広めていって欲しいと思います。
監督:(感極まって目をうるませながら)今日の日はベルリンよりも緊張して迎えました。この映画に出た大森立嗣さんに「地べたを這いずるように作った映画だね」と言われましたが本当にそうでした。家族に会えない代わりに映画を選んでしまったけれど、『かぞくのくに』では私の分身のサクラちゃんが、自分の代わりに兄といてくれているようでした。
映画の裏話
井浦:一番最初に撮ったシーン、覚えてる?
安藤:覚えてる! クランクインは8月1日で、車に一緒に乗ってるところ。
監督:とにかく酷暑で…。
安藤:兄弟のシーンはまとまらなくて、みんなで悩みました。
監督:そんな時、サクラちゃんに「私はずっとお兄ちゃんを見ていればいいんですね」と言われました。
安藤:もう食べていないとやっていられなかった(笑)。悩むし、暑いし、カメラは壊れるし…。体から湯気が出てるようでした。
監督:そう。代わりのカメラなんてないから、扇ぎながら撮影して。
井浦:兄弟間の距離、二人で距離感を試しあいながら作っていった。
安藤:思いをセッションしあいながら…(二人の間を電流が走るようなジェスチャーに一同爆笑)。
役作りで監督からアドバイス・要望は?
監督:私が兄と持っている思い出を二人に話し、それを吸い取った二人の演技なので、特に指導はしてないんです。
最後に
監督:『かぞくのくに』は、勉強になるようにと作ったものではありません。何かを感じ取ってほしい、と思います。見たことに対して、感動したとか、腹が立ったとか思ってくれれば良いです。で、後でGoogleで検索したりしてくれれば(笑)。
イベント終了間際、安藤さんが「この映画がヒットすれば、監督は家族を守れるかもしれない」と発言された。梁監督は『Dear Pyongyang ─ ディア・ピョンヤン』を発表したことで、北朝鮮から入国禁止を言い渡されてしまっている。それでも家族の映画をやめないのは「それが家族への敬意だから」と監督は言う。安藤さんの一言は、そんな監督の思いに応えて『かぞくのくに』に関わった人たちの気持ちを言い表したようだった。
『かぞくのくに』
日本/英題 Our Homeland/2012年
監督 梁英姫(ヤン・ヨンヒ) 主演 井浦新、安藤サクラ、ヤン・イクチュン
2012年8月4日(土)より、テアトル新宿、109シネマズ川崎ほか全国順次ロードショー
公式サイト http://kazokunokuni.com/
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Reporter's Profile
Kachi。1984年、東京生まれ。図書館勤務。イ・チャンドン監督の『オアシス』で韓国映画に目覚めました。
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