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Interview 『大芝居』ソク・ミヌ監督 ~オ・ダルスは予測を越えた演技を見せてくれる俳優

Text by 井上康子
2016/10/18掲載



 アジアフォーカス・福岡国際映画祭2016で、オ・ダルス初主演作『大芝居(原題 大俳優)』が日本初上映され、監督が来日した。ソク・ミヌ監督は『オールド・ボーイ』の演出部に参加したのを皮切りに、『親切なクムジャさん』『渇き Thirst』などのパク・チャヌク監督作品で助監督を務め、本作で長編デビュー。『オールド・ボーイ』の撮影中に初めて会ったオ・ダルスが独自の演技を見せるのに引き付けられた監督が『渇き Thirst』撮影時の酒席で「映画を作る時は出演してほしい」と依頼し、彼は快諾。時間は経過したが、彼はその約束を覚えていて本作へのキャスティングが叶った。オ・ダルスの魅力や、本作に込めた思いを監督が語ってくれた。

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ソク・ミヌ監督(写真提供 映画祭事務局)


── 監督が脚本も書いていますが、最初からオ・ダルスさんを主演にと決めていたのですか?

最初からではなく、脚本を書いていく中で、演劇を20年以上やっているのに成功していないという雰囲気を漂わせていて、外見もイメージにぴったりで出演依頼しました。5年前に脚本を書き、その後、映画化の準備をしたのですが、5年の間に彼は主演ではないけど韓国映画界で欠かせない大俳優になっていて、主演でも成功すると確信しました。

── 『オールド・ボーイ』撮影中、オ・ダルスさんのどういうところに魅力を感じてファンになったのですか?

まず頭が大きくて、誰にも真似ができない個性があります。そして、彼の演技は独自の演技でとてもおもしろくて、すぐファンになりました。『オールド・ボーイ』で彼はヤクザを演じていたのですが、典型的なヤクザのイメージで演技をするのかと思ったら、彼の演技は全然違っていて、こんなヤクザがいるの?という独特な表現だったので金槌で頭を殴られたような衝撃を受けました。撮影中なので他の人たちは我慢していたと思うのですが、パク・チャヌク監督と私はよく大笑いしていました。予測できないおもしろい表現をするのです。彼の次の台詞はどうだろうと期待しました。『大芝居』に出演したイ・ギョンヨンさんも「オ・ダルスは全世界で唯一無二の俳優。自分の世界を持っている」と高く評価していました。

── パク・チャヌク監督はアドリブを使わないのでは?

パク監督の現場ではアドリブはほとんどありません。既に分っている決められた台詞なのですが、彼が言うとおもしろいのです。彼の表現は予測を越えているのです。

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『大芝居(原題 大俳優)』の韓国版チラシ

── 本作で有名俳優ソル・ガンシク(韓国のトップ演技派、ソル・ギョング、ソン・ガンホ、チェ・ミンシクから命名された)を演じたユン・ジェムンさん、そして、パク・チャヌク監督をモデルにしたカンヌ・パク監督役のイ・ギョンヨンさんはどういう経緯でキャスティングしたのでしょうか? イ・ギョンヨンさんは少し太っているけど、パク・チャヌク監督に顔が似ていると思いました。似ていることが重視されたのでしょうか?

ユンさんは素晴らしい演技をする人で、でも、悪役が多いのが残念でした。私は黒澤明監督の作品が好きですが、ユンさんは韓国の三船敏郎といえる人だと思います。それで私が作品を作る時にはカッコいい役で出てもらおうと思っていました。イさんをキャスティングしたのは彼がパク監督作品に主演したこともあり、パク監督のことをよく知っていたからです。パク監督の話し方とか、知らない人に理解してもらうのは難しいので。パク監督は絶対に怒らない人なのです。パク監督を知っているイさんが演じなかったら、怒る監督になってしまったでしょう。実際のイさんはパク監督に似ていません。髪が短くて監督らしい権威が出ないのでかつらをかぶってもらったらそっくりになったので、別の設定にせず、パク・チャヌク監督をモデルにした監督という設定にしました。オさんを含めて、主演3人の俳優さんは現場で自分の意見を主張するのではなく、私の指示に従って、でも、自分で探してそれ以上の演技を見せてくれました。ベテラン俳優と仕事ができたことは光栄でした。

── パク・チャヌク監督の演出部からスタートされましたが、それはパク監督作品が好きだったからですか?

もちろん、パク監督作品は好きですが、それまでに5本の映画の演出部に応募して落ちて、知り合いの助監督が声をかけてくれて、『オールド・ボーイ』の演出部の一番下っ端に参加できることになったのです。『オールド・ボーイ』は準備段階でだめになったり、興行的に失敗することもないと思えたので安心して参加できました。

── パク・チャヌク監督から学んだことはありますか?

パク監督を見て、自分も死ぬまで守らなくてはと思っているのは「良い監督は良い人だ」ということです。現場はトラブルが多いですが、何が起こってもそれに屈せず、懸命に乗り越える。誰かのせいにせず、新しい方法を見つけて映画製作を続ける姿を学びました。

── 主人公の設定ですが、演技があまり上手くないのが実際のオ・ダルスさんと異なっていることもあって意外でした。

あれは実力がないということではなく、演劇と映画のメカニズムの違いによるものです。主人公のような演劇俳優はすごく情熱を持っていて、最初に実力を出し切ってしまうのです。でも、映画は何テイクか撮り、状況によって良い時と悪い時があるというものです。何テイクか撮って、OKをもらっても演劇出身の人は納得できないところがあり、肩を落として帰宅するのを見てきたので彼らの姿を表現したいと思っていました。

── エンドクレジットに本作に出演した脇役の俳優さんたちのインタビュー映像が挿入されていましたが、中でも「映画に主演したが、それから2年休んでまた俳優を再開した」という俳優さんの話が印象的でした。有名俳優にはなれないかもしれないけど、演じることが好きで続けるという意思が伝わってきました。この作品の主人公の生き方につながるところがありました。

彼は私と20年の付き合いがあり、彼が活躍したのも、辞めたのも、再開したのも見て来ました。こういう作品では主人公は失敗しながら最後は成功で終わるのがほとんどですが、私はそういう終わりにしたくありませんでした。夢に向かって頑張って、失敗かもしれないけど負けではないという生き方があると思います。



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取材後記


 「失敗かもしれないけど負けではない生き方」という監督の言葉が長く胸に留まっている。「社会的な意味での成功は収めることはできなくても、人として誠実に生きていけばよい」という意味ではないだろうか。アジアフォーカス・福岡国際映画祭2016の関連企画、福岡アジアフィルムフェスティバル2016で上映された韓国映画『オフィス 檻の中の群狼』の主人公は企業のインターンで、正社員になれるかどうかという緊張した日々を過ごして、追い詰められていく。現在の韓国では大企業に正社員として就職できる人はわずかで、多くの若者が非正規職などで不安定な仕事を続ける。「負けではない」という監督の思いは作品を通じて、さまざまな状況でつらい思いをしている人々を励ましたに違いない。


アジアフォーカス・福岡国際映画祭2016
 期間:2016年9月15日(木)~9月25日(日)
 会場:キャナルシティ博多ほか
 公式サイト http://www.focus-on-asia.com/

Writer's Note
 井上康子。オ・ダルスのファン。『オールド・ボーイ』から注目していたが、信頼厚い高校教諭・夫であり、異性装者を演じた『フェスティバル』で、彼の演技に完全に参ってしまった。フリフリのレース下着を身に着けて悩む彼の表情はソク・ミヌ監督の言うように予測を越えていた。


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