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Report アジアフォーカス・福岡国際映画祭2016 ~四半世紀継続の力を見せる

Text by 井上康子
2016/10/18掲載



 「アジアフォーカス・福岡国際映画祭2016(以下、アジアフォーカス)」が、9月15日から11日間、福岡市内会場で開催された。26回目となる今年は24ヶ国・地域の85作品が上映された。<アジアの新作・話題作>として、韓国映画はオ・ダルス主演『大芝居(原題 大俳優)』、バフマン・ゴバディ監督最新作『国のない国旗』などが、<特別上映作品>ではマジド・マジディ監督の超大作『預言者ムハンマド』、行定勲監督『うつくしいひと』などが上映された。また、近年、急速に変化を遂げたベトナム映画の特集があり、作品上映の他にシンポジウムも開催された。大勢の映画スタッフや俳優が来福し、観客が詰めかけ、上映後のQ&Aは活発で、サイン会も賑わった。中でも、福岡で活躍する若い映画人の作品を上映した<福岡パノラマ>は若者の熱気でたいへんな盛り上がりだった。


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震災前の熊本ロケ作品『うつくしいひと』で登壇した行定勲監督(写真提供 映画祭事務局)

マジディ監督新作、観客賞受賞作は、信仰・民族の真の姿と誇りを伝える


 マジディ監督の8年ぶりの新作となる『預言者ムハンマド』(イラン)がアジア初上映された。イスラム教の祖ムハンマドの誕生から青年に至るまでを描いたスペクタクル映画。大迫力のアクションも見物だが、主軸は特別な能力を持つ者として命を狙われる主人公を守ろうとする家族の情愛と、自分を殺そうとした他民族をも助ける主人公の意志にあり、監督のこれまでの作品同様に清冽な余韻を残す。監督が本作の目標にしたという、テロや暴力のイメージに染まったイスラムではない、本当のイスラムの教えを見せたいという思いがひしひしと伝わる。

 「福岡観客賞」(観客投票1位の作品)受賞作『ハラル・ラブ』(独・レバノン)はベイルートに住む3組のカップルが恋愛・結婚生活の中で、イスラムの教えを守るべく奮闘する姿をコミカルに描いた作品。毎晩セックスを求める夫に辟易して第二夫人をあてがっておきながら、第二夫人に嫉妬するようになる妻とか、男女間の感情は万国共通なのだとイスラム教の国に親しみを感じた観客が多かったことが受賞につながったのだろう。

 「熊本市賞」(観客投票2位の作品)受賞作『セブンレターズ』(シンガポール・マレーシア)はシンガポールを代表する7名の監督により、シンガポール建国50周年を記念して作られた、7本の短編からなるオムニバス映画で各々の監督が故郷に抱く思いを描いており、強い郷愁に誘われた。エリック・ク―監督が『Cinema』で民族の壁を越えて映画を作ってきたことに対する映画人の誇りを見せたのを始めとして、多民族国家らしく、他民族との交流を見せる作品が多かった。


不安定な時代をしなやかに生きるマイノリティ、溢れるノスタルジー


 <アジアの新作・話題作>では、第二次世界大戦中にナチスの迫害を受ける主人公を詩と絵画を交えて高い作家性を持って描いた『風は記憶』(トルコ・仏・独・ジョージア)をはじめとして、過去・現在の不安定さを見せる作品が多かったが、そのような状況にあってもしなやかに生きるマイノリティを描いた作品に特に感銘を受けた。『国のない国旗』(イラク)は『酔っぱらった馬の時間』『サイの季節』などの著名な作品があり、アジアフォーカスにも馴染み深い、クルド人バフマン・ゴバディ監督の最新作。クルド人の置かれた深刻な現実の中で、子供たちに夢を抱かせようと活動を続ける実在のクルド人二人を描いたドキュメンタリーでありながら、ユーモアを湛えたファンタジックなドラマでもあり、作品世界に魅了された。監督がプロデューサーを務め、クルド難民キャンプの子供たちが脚本・監督・撮影をこなした『国境に生きる ~難民キャンプの小さな監督たち~』も本作に併せて特別上映された。『ラジオ・ドリーム』(米・イラン)は米国に亡命したイラン人を中心に、自由さを失わない、風変わりな人々が登場し、楽しめた。『プラハからの手紙』(インドネシア・チェコ)は1960年代にインドネシアのスカルノ政権が失脚し、新政権を否定したためにプラハから帰国できなくなり、そのまま老いた人々と彼らの信念を味わい豊かに見せた。『ぼくは詩の王様と暮らした』(フィリピン)はフィリピンの少数言語パンパンガ語を操る詩人に言葉で思いを伝えることの大切さを改めて教えられた。

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『国のない国旗』バフマン・ゴバディ監督(写真提供 映画祭事務局)

 恋愛映画2作品は、オープニングを飾った『再会の時~ビューティフル・デイズ2~』(インドネシア)が古都を、『この街に心揺れて』(台湾)は歴史ある街を舞台に、カップルの過去と現在を交錯させ、韓国で大ヒットした『建築学概論』のように強いノスタルジーを感じさせた。

 『凱里ブルース』(中国)は初老の男の魂の彷徨と回帰をエキゾチックな映像で表現した正統派の芸術映画。『くるみの木』(カザフスタン)は釜山国際映画祭2015でNew Currents賞(新人監督賞にあたる)を受賞した作品で、伝統的な結婚式・出産・育児を通じ、独自の寓話のような趣を持って、人の一生を語る。両作品は若い才能の到来を実感させた。


韓国映画好きにはたまらない作品:オ・ダルス初主演映画『大芝居』


 名脇役オ・ダルスの初主演映画。20年間、演劇俳優を続けているが、児童劇団で「フランダースの犬」の台詞のない犬役でしかない主人公が、話題の映画に出演して有名俳優になろうと大芝居に打って出る。パク・チャヌク監督作品の助監督を長く務めたソク・ミヌ監督のデビュー作で、パク監督の『オールド・ボーイ』『渇き Thirst』をはじめ、『ペパーミント・キャンディー』などの名作のシーンがオマージュとして使われ、パク監督をモデルにした監督が登場し、オ・ダルスと監督に縁があるユ・ジテやキム・ミョンミンがカメオ出演する。映画、スタッフ、俳優への敬意を映画にしたような作品で韓国映画ファンであれば誰もが楽しめる。主人公の息子を演じた子役の良さもあって、家族愛にもほろりとさせられた。


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『大芝居』

アジアフォーカスの足跡と未来


 アジアフォーカスはマジディ監督の監督第2作『父』を1996年に上映して以来、『天使のようなこどもたち(劇場公開題 運動靴と赤い金魚)』『カラー・オブ・パラダイス(劇場公開題 太陽は、ぼくの瞳)』を日本初紹介した。他にも、ゴバディ監督や、リリ・リザ監督(今回上映の監督作『再会の時~ビューティフル・デイズ2~』)の作品を紹介し、監督たちの成熟の軌跡を見せてきたことはアジアフォーカスの足跡のひとつだ。

 そして、2013年に作品が上映され、来福したタイのアピチャッポン・ウィーラセタクン監督との交流も続き、<福岡パノラマ>では天神アピチャッポンプロジェクト(TAP)ワークショップに集った若い映像作家が共同製作した『光の記憶“Memory of Lights”』が上映された。若者の成長も支えており、二度目の四半世紀もアジアフォーカスは成長を続けることだろう。


アジアフォーカス・福岡国際映画祭2016
 期間:2016年9月15日(木)~9月25日(日)
 会場:キャナルシティ博多ほか
 公式サイト http://www.focus-on-asia.com/

Writer's Note
 井上康子。アジアフォーカス・福岡国際映画祭2016では熊本出身の行定勲監督が熊本地震前に熊本各地をロケして製作した『うつくしいひと』が上映された。監督は「続編も作り、熊本の人を元気づける」と熱を込めて語った。映画の力を信じる思いの強さに圧倒された。


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