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Interview 『でんげい』予告編制作担当・林原圭吾氏 ~訴えるべきキーワードは「多様性」と「共生」

Text by 岸野令子(キノ・キネマ)
2016/8/28掲載



 大阪アジアン映画祭で絶賛された感動のドキュメンタリー『いばらきの夏』を、『でんげい』と改題して、私の会社で配給することになった。その経緯は「Essay 『いばらきの夏』から『でんげい』へ ~人との出会いから日本配給へ」をお読みいただくとして、宣伝の要は、チラシ・ポスター、そしてなんと言っても予告編である。これらの出来次第で作品の印象が決まり、興行の趨勢が決まる。

 チョン・ソンホ監督から預かった大事な作品だ。なんとしても多くの日本の観客に届けたい。本作にはプロ・アマ含めて多くの方に尽力いただいているが、予告編の制作は、映像翻訳者で西ヶ原字幕社代表の林原圭吾さんにお願いした。

 なぜ彼に依頼したのか、どんな点を注意し、何を思って制作したのか、普段なかなかお目にかかることのない予告編制作秘話。インタビュー形式でお届けします。


『でんげい』日本版予告編


── 予告編、チョン監督もよくできてるって褒めてたよ。

恐縮です。映画の主役は建国の子たち。撮ったのは監督。僕はたかだか予告編を作っただけですので。

── どのくらい時間かかった? 本編は何度も見た?

本編を通しで見たのは2回だけです。1回目は観客目線、2回目はキューシートを書きながら。編集ソフトと向かいあっていたのは1日半くらい。タネあかしですが、本編に長めのイメージカットがあったんです。BGMがまるまる1曲かかっていて、ここをベースにすれば整音の手間が省けるなと。僕も映画の配給をやってみて、チケット収入で必要経費をまかなうのがどんなに大変か分かるので、手間をかけず、安価に予告編を作ることも援護だと思うわけです。

── もっとタネあかしして。

予告編でまっ先に伝えるべきは映画の題材とジャンル。ドキュメンタリーの華はインタビューなので、先ほどのイメージカットにポイントになるインタビューをかぶせるという全体像はすぐに出来あがりました。当初、あらすじを説明するのに1ブロック追加して2部構成のつもりでしたが、公式ポスターが川辺のシーンのイラストだったので、予告編にも入れておこうと考え、現在の3部構成になりました。


dengei2-1.jpg
『でんげい』チラシ表面

大まかな構成ができたら、次はストーリー作り。本編の内容を30文字くらいで要約し、訴えるべきキーワードを決めます。今回の映画なら「伝統芸能と聞いて地神パルキを思い浮かべる人が日本社会に存在する」、キーワードは「多様性」と「共生」です。僕の本職は映像翻訳。映像編集のテクニックではクリエイターの足下にも及びません。そんな僕に岸野さんが予告編を頼んだのは、この部分を買ってのことだろうと思い、自負を持ってやりました。

── 意識した点は?

近年、『60万回のトライ』や『ウルボ~泣き虫ボクシング部~』など、在日の高校生を韓国人の監督が撮ったドキュメンタリーが続いており、差異化のためにも、他でもなく「建国高校」の「伝統芸術部」を取り上げることの意義を考えました。具体的には、高校授業料無償化やヘイトスピーチといった異議申し立てという文脈よりも、共生という文脈を強調し、日本社会の多様性が裏テーマとして浮かび上がるよう意識しました。無論、ダイバーシティなんて聞こえのいい話ではなくて、帝国主義の結果としての多様性、ですが。

もう一点は、上記のようなテーマ設定をしたがゆえに、内向きな映画に見えないよう注意しました。主役は部員たち。それを指導者や先輩、先生や家族が眺める。その姿を監督やナレーターが眺めて映画にし、その映画を観客が眺めるという、外向きのベクトルはずっと念頭に置いていました。

── お気に入りのシーンは?

1分20秒頃の舞台袖のシーンは、当初エンディング候補だったキラーカットです。岸野さんからのリクエストで現在のエンディングになり、このカットを他で使えることになった時、今の位置に置いて前半のハイライトにしました。ジャンプした後ろ姿で静止画にするのは、アメリカのロックシンガー Bruce Springsteen の"Born to Run"(1975)のライブビデオが元ネタです。



Bruce Springsteen "Born to Run"ライブビデオ

結果的にうまくいったのは、パク・チョルミンのカット。体育館からナレーション・ブースへ画が移る際、時空が飛んでしまう感がありました。そこで、体育館の画に載せた「その輝きと共にありたい」というキャッチコピーを、ナレーション・ブースの画まで引っ張りました。それによって、共にありたいと願う主体が、一義的にはコピーを書いた僕ですが、パク・チョルミンのようにも見え、ひいてはあれを見た1人1人のようにも見えます。広がりとか普遍性とか当事者意識とか、そういうものにつながれば本望です。


dengei2-2.jpg
本作ではパク・チョルミンがナレーションを担当


『でんげい』
 原題 이바라키의 여름(いばらきの夏) 英題 The Summer in Ibaraki 韓国公開 2015年
 監督 チョン・ソンホ 出演 建国高等学校伝統芸術部の生徒たち、先生たち、パク・チョルミン(ナレーション)
 2016年11月5日(土)より、シネ・ヌーヴォにてロードショー
 公式フェイスブック 「でんげい」(いばらきの夏 改題)
 公式ツイッター @kishinoreiko222

Interviewee Profile
 林原圭吾。映像翻訳者、有限会社西ヶ原字幕社代表。数々の韓国映画・ドラマの字幕・吹き替え翻訳を担当する傍ら、韓国映画『鯨とり ナドヤカンダ』のDVD制作や、『南営洞1985 国家暴力:22日間の記録』『南部軍 愛と幻想のパルチザン』の配給も手がける。11月に公開予定の映画『弁護人』の字幕翻訳を担当。


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