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Review 『暗殺』 ~1,270万人が熱狂した、暗殺者たちの信念

Text by Kachi
2016/7/11掲載



 華麗なドレスを身に纏ったチョン・ジヒョンが、次々と銃弾を浴びせていく。ガーターに取り付けたホルスターから漂う悲壮な色香に、喝采を送りたくなる。悪役とはいえ、イ・ジョンジェが醸し出す、神経症の美男子ぶりに惑わされる。『暗殺』は実に興奮させてくれる映画だ。

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 1933年、中華民国の杭州に拠点を置く韓国臨時政府。独立運動家で党首のキム・グ(キム・ホンパ)の指揮のもと、日本の政府要人の暗殺計画を遂行すべく、速射砲の異名を取るサンオク(チョ・ジヌン)、爆弾職人ドクサム(チェ・ドンムン)、そして凄腕のスナイパー、アン・オギュン(チョン・ジヒョン)ら、独立軍の強者たちが呼び寄せられていた。彼らを束ねるのは、キム・グの右腕にして警務隊長のヨム・ソクチン(イ・ジョンジェ)だったが、彼は密かに日本軍と通じていた。さらに、正体不明の殺し屋ハワイ・ピストル(ハ・ジョンウ)が、オギュンたちを狙っていた。卑劣な思惑を知らないまま、暗殺団は日本統治下の京城に乗り込み、ついに運命の日を迎える…。

 例えば『暗殺』同様、1930年代の京城を舞台にした『モダンボーイ』(2008)は、時代の先端をいく軽薄なお洒落男子に扮したパク・ヘイルと、彼を手玉にとる妖艶な恋人を演じたキム・ヘスのコンビネーションは楽しいものだったのだが、キム・ヘスが祖国独立を目指すテロリストの一人だったことが発覚すると、物語のトーンは一変。最後、パク・ヘイルは、恋人の遺志を継ぐように、テロ活動へ身を投じていく。日帝統治という時代背景は、登場人物たちに悲劇性を与えるのは必然で、その陰影が良作たらしめていたことは確かだが、一方で作品そのものも暗く沈んだ印象に仕上がるのは否めなかった。『暗殺』のハワイ・ピストルにも、日本による統治が影を差しているが、「若旦那」と彼を呼び慕う、従者にしてお目付け役の爺や(オ・ダルス)との掛け合いが、暗さを感じさせない。香港ギャング映画を髣髴とさせる二丁拳銃の横撃ちスタイル、クラシックカーに箱乗りしながらの銃撃戦など、心が躍る。ソクチンの義指も大げさで、欠損を際立たせるようだが、そうした細部のデフォルメが、映画を愉快にしてる。

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 娯楽性を追求する中、演出にも神経が行き届いている。金のためだけに生きる、無政府主義者のハワイ・ピストルだったが、彼がある非道を目にした瞬間、指先のかすかな震えに、押し殺した憤怒が表現される。また日本語が飛び交う本作にあって、ハ・ジョンウの話す日本語が際立って自然なため、日本人役で登場しているはずの役者陣の拙さが耳についてしまう憾みがある中、親日派の実業家カン・イングクを演じたイ・ギョンヨンは、その拙さが逆に演出として成功していた。すなわち、日本人と日本語で会話するシーンは極めて慇懃だが、母国語に戻ると、そのなめらかな口ぶりによって、老獪で残忍な素顔が垣間見える、というふうにである。

 アン・オギュンたちやハワイ・ピストルの信念とは、反日思想や政治イデオロギー以前に、己に恥じない生き方をすることだった。悪賢く上手く立ち回っているように見えたヨム・ソクチンだが、ハワイピストルやアン・オギュンのように、孤高でいられない。ソクチンの心にあったのは恐怖と諦めだけで、信念などなかったからだった。無残な最期を遂げていく者の誇り高さと、絶望に身を任せた者の末路の愚かさ。そして希望は、掴もうした者の手にしか届かない。


『暗殺』
 原題 암살 英題 Assassination 韓国公開 2015年
 監督 チェ・ドンフン 出演 チョン・ジヒョン、イ・ジョンジェ、ハ・ジョンウ、チョ・スンウ、キム・ヘスク
 2016年7月16日(土)より、シネマート新宿ほか全国順次公開
 公式サイト http://www.ansatsu.info/

Writer's Note
 Kachi。『暗殺』は、とにかく大勢で大歓声をあげながら観たい映画です。「千万妖精」ことオ・ダルス様の「待ってました!!」なオイシイ登場シーン、ぜひご期待ください。


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