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Review TOKYO FILMeX『コインロッカーの女』 ~新鋭監督が放つ、女たちの「新しき世界」

Text by Kachi
2015/12/24掲載



 「韓国ノワール」というジャンルが、いつからか確立して久しい。11月21日から開催された第16回東京フィルメックスにて上映された、新人ハン・ジュニ監督の『コインロッカーの女』は、暗黒街を舞台に女性をエネルギッシュに描いた、まさに女たちのノワール映画である。

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『コインロッカーの女』

 生まれてまもなくコインロッカーに捨てられたイリョン(キム・ゴウン)は、仁川・チャイナタウンを縄張りに、金になるならどんなことでもする“オンマ/お母さん”(キム・ヘス)に売られる。笑わず泣かず、ふてぶてしいイリョンはやがて借金取立人として“オンマ”の右腕にまでのし上がっていく。

 マフィア、やくざといった集団は、父権で支えられた共同体だ。そして、フランシス・フォード・コッポラの『ゴッドファーザー』を例に引くまでもなく、国や時代を問わず多くの映画でもそう描かれてきた。だが、例えば日本において高田宏治による『極道の妻たち』シリーズにみられる、鉄火肌の女性が生き生きとスクリーンに躍り出る魅力的な作品群に比べて、そもそも儒教的父権主義が根強い韓国では『花嫁はギャングスター』シリーズのような一部の例外を除き、韓国ノワール映画は長らく男性たちばかりが主役であった。『新しき世界』のソン・ジヒョ扮する潜入捜査官は、そんな中にあって一人気を吐いていたと言えるが、結局か弱い存在として男たちのドラマから退場させられてしまう。

 そうした作品が多いなか、本作は圧倒的に男性性が機能しない、女性たちの骨太な世界である。ゴッドマザー“オンマ”のもとには、ホンジュ(チョ・ヒョンチョル)とウゴン(オム・テグ)という若い男性が身を寄せているが、ホンジュには知的障がいがあり、イリョンはまるで子供に接するように彼の面倒をみている。ウゴンはひそかにイリョンに惹かれているが、そんなことはおくびにも出さず、ひたむきに彼女を支えている。オンマと袂を分かったチド(コ・ギョンピョ)は威勢が良いだけのごろつきであり、公権力につく男性たちも、オンマに凄まれて太刀打ちができない。何よりこれだけ荒くれ男が揃っているにもかかわらず、男性側から性が一切匂ってこない。

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ハン・ジュニ監督

 オンマはかつて、自らの手で己の母なる存在を殺した。イリョンもまた、債務者の息子でありながら穏やかで屈託なく生きるソッキョン(パク・ポゴム)との出会いで、オンマとの関係が大きく歪んでいく。『コインロッカーの女』には、自分を産み落とした存在を越えていこうとする彼女たちのひりひりするような成長の痛みと、これまでの韓国ノワールにはなかった女たちの尊厳が、生々しく息づいている。


第16回東京フィルメックス
 期間:2015年11月21日(土)~11月29日(日)
 会場:有楽町朝日ホールほか
 公式サイト http://filmex.net/

『コインロッカーの女』
 原題 차이나타운 英題 Coin Locker Girl 韓国公開 2015年
 監督 ハン・ジュニ 出演 キム・ヘス、キム・ゴウン、オム・テグ、パク・ポゴム
 2016年2月16日(火)よりヒューマントラストシネマ渋谷、2月27日(土)よりシネ・リーブル梅田にて「未体験ゾーンの映画たち2016」の1本として公開
 公式サイト http://aoyama-theater.jp/feature/mitaiken2016

Writer's Note
 Kachi。『コインロッカーの女』は、久しぶりにジットリ血の匂いがする韓国映画でした。ナ・ホンジン監督を彷彿とさせる…と思ったら、本作のイ・チャンジェ撮影監督は、『チェイサー』『哀しき獣』でBカメラを担当していたカメラマンだと聞き、大いに納得したのでした。


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