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Review 『殺されたミンジュ』 ~キム・ギドクの新作は善悪の観念を揺さぶる人間不条理劇

Text by mame
2015/12/2掲載



 『アリラン ARIRANG』で復活後、コンスタントに作品製作を続けるキム・ギドク監督の新作『殺されたミンジュ』は、彼がその人生で得た哲学の集大成に思えた。生きる上での息苦しさや矛盾を突きつけ、観る者の観念をひどく揺さぶる。

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 物語はスピーディーに進む。夜の町で女子高生が何者かの集団に襲われ、あっという間に息絶える。彼女の名はオ・ミンジュ。容疑者を成敗するために、名もなきテロ集団が立ち上がる…と聞けば、痛快な復讐劇に進むかと思いきや、そこはキム・ギドクならでは。本来明らかなはずの悪人と善人との境界が曖昧になり、哀しい人間不条理劇に発展する。

 ミンジュ殺害に関った者をひとりずつ拷問にかけていくにつれ、テロ集団の素性も明らかになるが、社会不適合者の寄せ集めでしかない彼らの結束は、ふとしたきっかけでバラバラになりそうなほど、もろく危うい。彼らは拷問する相手にあわせて、嬉々として服装を変え、身分を詐称する。自分ではない何者かになった気分はさぞや爽快だろう。だが、結局はうまくいかない日常から目を背けているだけではないか…。そうした視点を、私たちは拷問にあった男(キム・ヨンミン)がテロ集団を観察する中で発見する。「社会悪を倒す」という目標を掲げて拷問にのめり込む者もいれば、しょせん何も変わらないと諦める者もいる。傍から観察する分には、その光景はひどく滑稽だ。

 集団の力は強い。ひとりだとできないような大きな事を成し遂げることができる。だが、そこにはあっという間に支配者と従属者ができ上がり、集団ならではの息苦しさも生じる。

 「俺は殴られて我慢しているやつが大嫌いだ!」とテロ集団のリーダー(マ・ドンソク)は叫ぶが、「我慢するのもそう悪い事ではない」と返され、彼の主張は虚しく宙に浮く。世の中に対する激しい怒りは、誰にも共感される事なく行き場を失う。

 飼い馴らされていないか? キム・ギドクは訴える。世の中でうまくやっていくには、ある程度の妥協も必要だ。だが、妥協する事で失ってしまったものを、取るに足らないもの、必要のないものと判断して諦めてしまう。本当にそれで良いのだろうか?

 答えのでない世の中への怒りが、キム・ギドクが映画を作る上での原動力となっているのは間違いないだろう。


『殺されたミンジュ』
 原題 일대일 英題 One on One 韓国公開 2014年
 監督 キム・ギドク 出演 マ・ドンソク、キム・ヨンミン、イ・イギョン、チョ・ドンイン
 2016年1月16日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
 公式サイト http://www.u-picc.com/one-on-one/

Writer's Note
 mame。キム・ギドク作品は設定が非現実的ながらも、どこか笑える要素が入っているのがたまらなくツボです。今回は比較的深刻なテーマでしたが、テロ集団の不毛な内輪揉めに思わず笑わされました。


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