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Report 福岡インディペンデント映画祭(FIDFF)2015 ~韓国、台湾と広がり続ける海外との交流

Text by 井上康子
2015/10/13掲載



 若手映像作家の交流と育成を目的に、福岡インディペンデント映画祭2015(以下、FIDFF)が、8月27日~9月1日、9月3日~6日に福岡市内で開催された。コンペ部門応募作品を中心に、国内・海外からの招待作品、併せて145作品が上映された。今年は記念事業として実行委員会が初プロデュースした福岡が題材の短編2作品が上映され、海外招待作品には台湾からの作品が初登場した。また、恒例の韓国からの作品には昨年MOUを交わした東西大学作品が加わり、映画祭の発展ぶりが伺えた。


今年の受賞作:他者と関係を築くことの難しさを表現した作品が印象的


 最優秀作品賞『きらわないでよ』(加藤大志監督)では、吃音のためにイジメにあっているクラスメートに好意を抱きながらも、主人公は保身のために彼を傷つけてしまう。監督は『シザーハンズ』から、異形の男性を差し置いて幸福になった女性の残酷さに注目したそうで、そこがリアルな重みになって観る者に迫る。90分部門グランプリ『彦とベガ』(谷口未央監督)は、認知症女性と彼女とのコミュニケーションを切望する周囲の人々の心の内を果敢に描き、人の尊厳とは何かを考えさせた。5分部門グランプリ『NEKKO WORK』(坂本直也監督)はCGアニメで根っこを他者との関係性の象徴としてファンタスティックに表現。今年新設されたレインボー賞(LGBTを描いた作品を対象に授与)に輝いた『私は渦の底から』(野本梢監督)は同性の友人を愛する女性が、自己を肯定するまでの葛藤と、本当の自分となって友人に向き合おうとする勇気を見せた。

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授賞式(写真提供 FIDFF事務局)

 奇抜な発想の作品に出合えるのもFIDFFでの楽しみだ。40分部門グランプリ『異し日にて』(松田彰監督)は予想だにしなかった結末に驚かされた。時間の都合で見られなかったが、性器から歯が出る女性を主人公にした『歯まん』(岡部哲也監督)はその筆頭と言えるだろう。


継続する韓国との交流:東西大学ともMOUを交わす


 FIDFFは、第1回(2009年)より、釜山の映画祭作品を中心に韓国の作品を上映し、FIDFFの作品も釜山の映画祭で上映するという形で交流を継続している。今回はメイド・イン釜山独立映画祭(以下、MIB)2014で上映された作品と、昨年MOUを交わした釜山にある東西大学作品の計3作品が招待上映され、ゲストを迎えてのカフェトークも行われた。釜山での上映についていうと、FIDFF2014グランプリ作品が11月に開催されたMIB2014で招待上映されており、FIDFF2015優秀作品も同様に釜山独立映画祭(MIBから今年名称変更)2015で招待上映される予定だ。

 上映された3本は全く異なるジャンルの作品だったが、作り手の思いが伝わってくる秀作揃いだった。

『スイカ』(イ・ジュギョン監督)
 不器用ながら暖かみのある義父によって、スイカのようなお腹の妊産婦が婚家の一員になっていく。家族の良さを肯定した温かみのあるドラマ。

『夜行』(イ・サンヒョン監督)
 不法就労の朝鮮族の青年が、思いを寄せる女性を守ろうとするが、彼女からはストーカーと誤解されてしまう。凍てつく夜を背景に青年の孤独が浮かび上がる。

『親子』(ユン・ジス監督)
 監督自身の、祖父と父の交流を描いたドキュメンタリー。アルツハイマー病で一人での農作業が困難になった祖父を父は毎週帰省して手伝う。田園風景に互いを想う父子が溶け込み、静かな余韻を残す。

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左:イ・サンヒョン監督、右:ユン・ジス監督(写真提供 FIDFF事務局)

 カフェトークでは、イ・サンヒョン監督(東西大学卒業、釜山国際映画祭アジア・フィルム・アカデミースタッフ)は「釜山国際映画祭を身近で体験できるし、大学での設備が整っていて、製作の支援も受け易い」、ユン監督(東義大学学生)は「ドキュメンタリー作品を撮り続けているキム・ジゴン監督(FIDFF2012『Grandma』上映、ゲスト来福)やキム・ヨンジョ監督(FIDFF2011ゲスト来福、FIDFF2013『Hunt』上映)の話を学生は聞き、それに刺激されて、ドキュメンタリーを撮るということが繰り返されている」と釜山ならではの良さや伝統を述べた。


台湾との交流も始動


 海外との交流はさらに拡がり、今年は「台湾青春、未来映画祭(未来電影日:以下、FFDT)」との相互上映が行われた。8月のFFDT2015で、FIDFF2014グランプリ作品が招待上映され、FFDTの3作品が今回招待上映された。『忘年人』(廖華伶監督)は認知症がテーマで、笑わせ、驚かせ、最後は家族の情愛を見せて泣かせる作品。『荒城之光』(林克敏監督)は戦いに暮れる近未来を舞台に一縷の希望としての人への信頼を描き、『黒夜来臨』(張凱智監督)は高校野球選手が選手として生き残ろうと手段を選ばずもがく姿を見せた。FFDT作品は大道具、小道具、衣装などに商業上映作品レベルのこだわりを持ち、力強い映像を見せてくれた。


FIDFFの夢


 釜山との交流を7年間続けてきたFIDFFの夢は、福岡と釜山での合作を作ることだそうだ。「実現に向けて来福したゲストとの交流を続けている」とFIDFF実行委員会会長、西谷郁氏は語った。イ・サンヒョン監督は「すばらしいとされている合作でも気持ちの交流が伺えない作品がある。今年公開された日韓合作『ひと夏のファンタジア』では気持ちの交流が感じられた」と感情の交流の重要性を強調した。釜山の映画人と密度の高い交流を続けてきたFIDFFの合作が楽しみだ。


福岡インディペンデント映画祭2015
 期間:2015年8月27日(木)~9月1日(火)、9月3日(木)~9月6日(日)
 会場:福岡アジア美術館
 公式サイト http://fidff.com/

Writer's Note
 井上康子。福岡インディペンデント映画祭2015で上映された『親子』では、大木の下で農作業の合間に憩う人々の場面に強い懐かしさを覚え、農婦だった祖母のことが思い出された。祖母が作った甘いスイカを食べることができなくなって何年になるのだろう。


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