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Review PFF『ひと夏のファンタジア』 ~新しい映画作りに踏み込んだチャン・ゴンジェ監督の“醒めないひと夏の夢”

Text by Kachi
2015/10/5掲載



 これは夢の終わりなのか。いや、始まりなのかもしれない。耳の底に残響を感じつつ『ひと夏のファンタジア』を観終えると、そんな不思議な余韻に包まれた。

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『ひと夏のファンタジア』

 9月19日(土)、東京・京橋の東京国立近代美術館フィルムセンターで開催中の第37回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)において、チャン・ゴンジェ監督『ひと夏のファンタジア』(2014)がサプライズ上映された。この作品は、世界から新進気鋭の監督を招き、奈良で映画を撮るという「NARAtiveプロジェクト」によって製作され、2014年のなら国際映画祭でプレミア上映された。今年6月に公開された韓国では、インディーズ映画としては異例の3万人の観客を動員するヒットとなった。

 『ひと夏のファンタジア』は、映画のシナリオ作りのために奈良県五條市を訪れた監督テフンと助監督ミジョンが市内を案内されて土地の人に聞き取りをするChapter1、そして、韓国から来た女性ヘジョンと、ある日本人男性との出逢いを描くChapter2から構成されている。

 モノクロームで撮影されたドキュメンタリー・タッチのChapter1と、カラーで撮られたフィクションのChapter2。二つの章は、虚実がない交ぜのようだ。Chapter2は、Chapter1で構想を練られた、五條市を舞台にした新作のラブ・ロマンス映画のようにも、Chapter1に登場した誰かが夢想した、甘いひと夜のようにも見える。

 チャン監督は、映画制作の名門「韓国映画アカデミー」の撮影科出身だ。そのためか特殊な映像効果に頼らず、撮影の手法によって独特の空間が作り出され、五條の街並みはどこか現実離れした世界としてスクリーンに映し出される。そんな空間が演出する男女の恋の予感。Chapter1から2へ移る際、モノクロームの夜が突如色づく瞬間は感動的ですらあった。

 ティーチインでチャン・ゴンジェ監督は「自分自身について映画にすることができたら他人についても映画にできるというのが、韓国映画アカデミーで教わった映画の作り方」と話した。

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チャン・ゴンジェ監督

 女の子ばかり追いかけていた自分を投影した長編デビュー作『Eighteen -旋風-(原題 つむじ風)』(2009)は、製作費1億ウォン(当時およそ700万円)という低予算の自主映画であったが、バンクーバー国際映画祭龍虎賞、ソウル独立映画祭独立スター賞を受賞した。結婚したばかりで子どもを持つことに悩んでいた自身を題材にし、第25回東京国際映画祭で上映された第二作『眠れぬ夜』(2012)は、柔らかい浮遊するようなトーンで映し出された夜の情景が印象的で、新婚夫婦のささやかな悩みと幸福が描かれていた佳品であった。

 そんな中、自分自身の話を反映させつつも、誰かの人生と恋を描いた『ひと夏のファンタジア』は、やや趣が異なる。劇中に登場する映画監督は、前もって準備していたものを捨てて、偶然知り得たことを映画にする意義を強く語る。それは、チャン監督が新しい映画作りの段階へ踏み込んだという、チャン監督自身の言葉のようにも感じられた。


第37回ぴあフィルムフェスティバル
 期間:2015年9月12日(土)~9月24日(木)
 会場:東京国立近代美術館フィルムセンター
 公式サイト http://pff.jp/37th/

『ひと夏のファンタジア』
 原題 한여름의 판타지아 英題 A Midsummer's Fantasia 韓国公開 2015年
 監督 チャン・ゴンジェ 出演 キム・セビョク、岩瀬亮、イム・ヒョングク、康すおん
 2015年冬、劇場公開予定
 公式サイト http://hitonatsunofantasia.com/

Writer's Note
 Kachi。「第二のホン・サンス」とも評されるチャン・ゴンジェ監督。でも個人的には、『ひと夏のファンタジア』はチャン・リュル監督『慶州』に似た雰囲気の映画だと思いました。


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