Report 第10回大阪アジアン映画祭 ~10周年はアジアンスターの競演でより華やかに
Text by mame
2015/4/8掲載
今年もこのレポートをお届けする時期がやってきました!
毎年待ち遠しくてたまらない、大阪アジアン映画祭(以下、OAFF)です。今年は記念すべき10周年を迎え、作品数も過去最大の45本となり、チケット発売初日から完売続出という嬉しい幕開けとなりました。昨年に引き続き躍進を続けるフィリピン映画、東南アジアのアクション映画に着目した特集「ニューアクション! サウスイースト」など魅力的なラインナップに、今年もスケジュール調整にギリギリまで悩まされました…。

『国際市場で逢いましょう』ユン・ジェギュン監督の舞台挨拶
今回鑑賞できた韓国監督作品は3本。昨年末、韓国で公開され大ヒットを記録したユン・ジェギュン監督の『国際市場で逢いましょう』、OAFFではもはやおなじみのキム・テシク監督による最新作『太陽に向かって撃て』、日本映画学校を卒業したイ・ユンソク監督による『雨時々晴れ』。その他関連作品として日韓合作の『BRAKEMODE』(ヤングポール監督)、CJエンターテインメントと共同制作のベトナム映画『ホイにオマカセ』(チャーリー・グエン監督)など、国際色豊かな作品が集います。
クロージングに選ばれた『国際市場で逢いましょう』は、時代の流れに翻弄されながらも、自分を犠牲にして家族のために生きる男を描いたホームドラマ。舞台挨拶に現れたユン・ジェギュン監督の「今の豊かさがあるのは両親世代の努力のおかげ」とのメッセージ通り、ファン・ジョンミン演じる人情味溢れる父親に思いを馳せると、胸が熱くなってきます。邦題で付け足された「逢いましょう」の意味が明らかになる終盤は、さらに感慨深いものがこみ上げてきます。
キム・テシク監督の『太陽に向かって撃て』はジャンルとしては西部劇風ロードムービーといったところですが、ドライブスルーでの結婚式、刺青から抜け出す青い鯉など、どこか監督ならではの独特の映像感覚が冴えています。寡黙なヒーロー、カン・ジファンの男前ぶりはいうまでもなく、まさにオリエンタルビューティーの色気を漂わせるユン・ジンソが、非現実的な空間にうまくはまっていました。
『雨時々晴れ』は韓国に留学経験もある広澤草が主演。映画館で恋が始まったり、浮気の言い訳が「映画観てた」のひと言で済んだり、映画好きな人々には妙に思い当たるエピソードが絶妙なラブストーリー。ロケ地も俳優陣も日本人なのですが、繰り返し流れるオリジナルBGMや、月を見上げるシーンなど、観ていてこっぱずかしくなるぐらい乙女チックな展開が続くせいか、どこか邦画と違う空気の漂う作品でした。
もちろん、韓国映画以外にも気になる作品はまだまだあります!
『ヴァイオレーター』(ドド・ダヤオ監督/フィリピン)は、どこか得体の知れない怖さが不気味なスリラー。悪魔に憑かれた少年が出てくるのはキリスト教徒が多いフィリピンならではですが、「え!今の何?」と思わせる、心霊現象にも似た映像が現れたり、まさに「フィリピンの黒沢清」を彷彿とさせる作風でした。

『マリキナ』ミロ・スグエコ監督のサイン会
『マリキナ』(ミロ・スグエコ監督/フィリピン)は、実在する「靴の街」マリキナを舞台に、そこに生きる家族の過去と現在を優しく見つめた作品。現在のマリキナは他の都市と同様、安価な輸入品に押されて全盛期の活気からはほど遠いそうですが、この映画が最盛期の活気を取り戻すきっかけになってくれれば、と望んでしまいます。監督の「革靴は安い靴と違い、手入れすれば何年でも履けるからね」との期待を込めたコメントが印象的でした。
その他、OAFFでは一昨年の『イスタンブールに来ちゃったの』に続いてのトルコを舞台にしたラブストーリー『カッパドキアの甘い恋』(バーナード・チョウリー監督/マレーシア・トルコ)や、お洒落なGTH社によるコメディ『アイ・ファイン、サンキュー、ラブ・ユー』(メート・タラートン監督/タイ)は、表情豊かなヒロインがとても魅力的な作品です。こちらも主演ふたりのキュートな魅力が満載の『運命というもの』(アントワネット・ジェダワン監督/フィリピン)を観賞後のバーナード監督からは「マレーシアにもあんなカッコ良い俳優がいたら良いんだけど…」との意外なコメントが。
それもそのはず、今年完売した作品の特徴として人気俳優の活躍が目立ちます。前述の『国際市場で逢いましょう』では東方神起のユンホ、『太陽に向かって撃て』はカン・ジファン、『逆転勝ち』(コン・ウェンイェン監督/台湾)では人気ロックバンド「五月天(メイデイ)」のモンスターの出演が話題となり、いずれもチケットは完売が相次ぎ、舞台挨拶についての問合せが殺到したとか。そして今年新設された「オーサカAsiaスター★アワード&トーク」では、『GF*BF』『失魂』での演技も記憶に新しいチャン・シャオチュアンが登場。もちろんこちらもチケットは秒殺でした。
映画好きとしては、つい監督に注目して作品を選びがちですが、お目当ての俳優の活躍にキラキラと目を輝かせる女性ファンを見ると、もはや映画はライブに次ぐファンとの交流の場として機能しているのだと感じさせられます。最近はミュージシャンのライブ映像の映画化が盛んですが、直接出会った時とも違う、スクリーンの中でしか見られない表情に、人々は惹きつけられるのでしょうか。

クロージング・セレモニー グランプリは『コードネームは孫中山』
レッドカーペットや中之島クルーズのほか、ゲストとの交流の機会が増えてますます華やかになったOAFF。今後も話題性と質を兼ね備えた作品で、映画ファンのみならず様々なファンを取り込んで大きく成長していく事を期待します!
第10回大阪アジアン映画祭
期間:2015年3月6日(金)~3月15日(日)
会場:梅田ブルク7、ABCホール、シネ・リーブル梅田、シネ・ヌーヴォほか
公式サイト http://www.oaff.jp/
Writer's Note
mame。話題の映画をいち早く楽しめるのも映画祭の魅力。昨年は『KANO』や、見逃した『So Young』『GF*BF』が一般公開され、自信を持って周りにオススメしたり、観賞後は改めて映画祭の余韻に浸ったりして楽しんでいました。
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